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第28回(2007.01.22)
戦略的PMOのPM改善への取り組み(6)〜PMを成熟させることのできるPMO |
◆「計画精度を上げる」という課題の解決
例えば、「計画精度を上げる」というプロジェクトマネジメントの課題がある。この課題解決の方法として、特にIT系のプロジェクトマネジメントでは見積もりの妥当性を真っ先に思い浮かべるだろう。標準工数の設定が難しい、リソース能力に差がある、成果物の可視化・計測が難しいなどさまざまな難しさがあるので、どうしてもそこに意識が行く。
ところが、リソース能力によって違いがある、人的要素への依存が大きいことを認めているにも関わらず、「計画通りにやる」という発想にならないことが多い。
例えば、10日間かかる仕事を5日と計画したとすればこれは見積もり精度の問題だろう。しかし、8日だと見積もりをすれば確かに精度の問題もあるかもしれないが、マネジメントの問題かもしれない。何とか8日でやり遂げることによって「計画精度を上げる」という課題を解決するという発想が必要なのだ。つまり、見積もりが大きく外れていたら話にならない。が、見積もりだけでは計画精度は上がらない。計画通りに作業が行えるようなファシリテーションが必要なのだ。
◆プロジェクトマネジメントをうまくやるという課題の解決
さて、同じように、プロジェクトマネジメントをうまく行えるようにする、成熟度を上げるにはどうすればよいか。すぐにいくつか思いつく。
ひとつ目はプロセスを作りこみ、改善していくこと。二つ目は、プロジェクトマネジャーを育てること。三つ目は、全社とは言わないまでも、全組織を上げてプロジェクトマネジメントに協力をすること。プロジェクトの初期の段階での成功の見通しを管理し、成功の見通しの低いプロジェクトに対しては重点的な支援を行うこと。四つ目はそれでもトラブルに陥ったプロジェクトに対しては、組織がすばやく、適切な救援を行うこと。
ほかにもあるだろう。こんなことは分かっている人が多い。でも、なかなか、うまく行かない。その理由は、これらの施策が統合されていないからだ。上の計画精度の話と同じ。
◆整合した施策が必要
人材育成を標準プロセスを対象にして行うことは少ない。人材育成の議論は、「唯一最善」のプロジェクトマネジメントの手法があることを前提にして行われる。そんなものはないので、実践的なプロジェクトマネジャーは育たない。あるいは、プロジェクトマネジャーとしては優秀に育ったが、自組織のプロセスに関心をはらわない人材になってしまう。
組織の支援は標準プロセスを前提として行われる。よく成功するプロジェクトと失敗するプロジェクトはプロジェクトの開始前に決まっているという。成功予測だ。しかし、この議論で多くの人が忘れているのは、マネジメント標準が決まっていればという議論だ。標準が決まっていないところで、いくら成功、失敗の議論をしても、机上の空論に過ぎない。その中では、組織によるプロジェクトマネジメントの支援などできっこない。
自社のプロセスに関心を示さない優秀なプロジェクトマネジャーは実は、「問題社員」になる可能性がある。人材育成の失敗である(おまけに、プロジェクトマネジメントを導入する前の組織ではこのような人材はスターであるので、その取り扱いに困るという問題も出てくる)。
さらに、そのような人材が行うプロジェクトは万が一失敗したときには始末に負えなくなる。何をどうやっているのか実は分からない部分が相当あるからだ。つまり、組織による救援ができない。
施策をばらばらに整合性なくやっていると、このようにせっかくの施策が逆効果になることも十分にありうる話である。PMIはこの問題に対して、PMBOKを中心にした非常に合理的なソリューションを提供している。ただし、この統合マネジメントができるのは、センターオブエクセレンスのように、プロジェクトマネジメントに関する全てのオーナーシップを持つPMOがある場合に限られる。人事の問題、財務の問題、業務管理の問題など、さまざまな問題がある中で、それをプロジェクトマネジメントという視点から串刺しにできるようなPMOがないとこのようなプロジェクトマネジメントはできない。
これが、プロジェクトマネジメントを成熟させることのできるPMOとできないPMOの違いでもある。
プロジェクトマネジメントを成熟させられるPMOを目指したい。
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