第13回(2006.08.04)
リスク識別はブレーンストーミングで
プロジェクトマネジメントオフィス 鈴木道代 
 
前回は、WBS辞書を取り上げましたが、今回はリスク知識エリアの「リスク識別」プロセスのツールと技法であるブレーンストーミングを取り上げます。

◆ブレーンストーミング(BS)
「リスク識別」プロセスは、どのリスクがプロジェクトに影響するか見定めて、その特性を文書化するプロセスで、必要に応じて、プロジェクト・マネジャー、チームメンバー、プロジェクト・チーム外の専門家の人々、顧客、エンドユーザなどが参加します。

「リスク識別」では、まず、プロジェクトにおいてどのようなリスクが考えられるかを洗い出すことから始めます。その情報収集技法として、一般的にブレーンストーミングが使用されることが多いようです。

ブレーンストーミングは、問題解決技法の中の発散技法に分類され、発散思考を用いて事実やアイデアを出すための代表的な思考法であり、世界で最もよく使われている技法です。

ブレーンストーミングは、米国のBBDOという広告会社の副社長であったアレックス・オズボーンが発案しましたが、当時は製造業のGMやGEなどでよく用いられていたそうです。

ブレーンストーミングは、集団技法であり、5〜8名程度の話し合いが最適といわれています。

そして、次の4つの基本ルールでアイデアを出す話し合いを進めていきます。

・批判厳禁:発散思考の特徴であり、あるテーマについて、
      思いつくまま次々にアイデアを出していきます
・自由奔放:リラックスして、どんなことを言っても許される
      雰囲気にします
・質より量:量が質を生むと考えます
・結合改善:人の言ったアイデアに便乗してよりよいアイデアにしていく

5〜8名程度の参加者が集まり、全員が見渡せるテーブルを囲み、具体的なテーマでアイデアを出していき、大きな紙に記入していきます。

その際には自由に発言し、すべてのアイデアを書いていきます。時間は1時間程度が適度で、リーダーは予め、考えるべき観点を多角的に洗い出しておき、様々な角度からアイデアを出せるように、話し合いをリードしていきます。

そして、出たアイデアの評価は1日程度おいておいて、批判厳禁で、同じメンバーで独自性と実現可能性から評価していきます。

◆カードBS法
ブレーンストーミングの一種でカードを用いて行います。個人思考を活かすために発言の少ない人からも同数のアイデアを引き出すためにと改良された技法です。決められたテーマについて、全員がカードを持ってアイデアを書き出し、次にそれを発表し、また書き出すということを繰り返していきます。他人の発表を聞き、そして考えるという方法です。

◆ブレーンライティング法(カードBW法)
ブレーンストーミングの一種で、カードBS法よりもより沈黙して行う技法です。ブレーンライティング法はドイツで開発された技法で、ドイツでの普及度はブレーンストーミングについで第2位だそうです。当初、「6・3・5」法と呼ばれていたそうで、6人の参加者が、3つずつのアイデアを、5分ごとに出すということを繰り返します。

全員が用紙を持ち、テーマに沿って、まずアイデアを1つ用紙の左上に記入します。時間(例えば5分)がきたら、その用紙を隣の人に回します。回ってきた用紙に今度は前の人が記入したアイデアを膨らませたアイデアを右横に記入します。新しいアイデアの場合、前の人が記入したアイデアの下に記入します。このようにして、1周すると参加者分のアイデアが記入され、1ラウンド終了です。何ラウンドか続けることによって、全員でアイデアを出しつくしていくという集団で行う沈黙発想法です。

このブレーンストーミング法がリスク識別には大変適しています。いろいろな角度からの多くのリスクを、満遍なく全員で洗い出すことができるからです。

リスク区分(例えば、スケジュールやコスト、品質、要員などリスクの分類)を、まず、全員で決めておくと、特に有効です。

次回は、発散思考で洗い出されたアイデアを収束思考でまとめていくための技法として、KJ法を取り上げます。

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