第3回(2006.02.24) 「プロジェクト パフォーマンス マネジメント」 その3
プロジェクト パフォーマンス マネジメント ストラクチャー
城戸 俊二
 kido@dem.co.jp
(有)デム研究所 http://www.dem.co.jp


【プロジェクト管理要素統合のストラクチャー】
この図は何を著わしているか、しばし推敲してください。



上図はプロジェクト管理の要素技術を若干でもご承知の方には容易にお判り頂ける筈の、要素技術の関連図である。先月はプロジェクトのパフォーマンスマネジメントのキーとなる管理要素技術と、プロジェクトのライフサイクルに亙るそれらの展開をPPMP(Project Performance Management Process)として紹介したが、上図はPPMPに示す手順で組み上がったプロジェクトマネジメントベースライン(PCBL)の多次元相関図である。要は管理要素が何処で互いに絡み合っているかを示した絵である。
注:PPMPの図を未入手の方は本シリーズの「PPMその2」(1月27日号)或いは本稿冒頭のURLをご参照ください。また同URLで上図のパワーポイントのアニメもダウンロードできます。
お詫び:本シリーズの「PPMその2」(1月27日号)でタイトルを「プロジェクトパフォーマンスプロセスの全貌」と記しましたが正しくは「プロジェクトパフォーマンスマネジメントプロセスの全貌」です。お詫びして訂正させていただきます。

【プロジェクトマネジャーの思考ロジック】
PPMPは表面的に見ればパフォーマンスマネジメントのキー要素と、それらの内容を時系列的に並べたものである。これだけでは何の変哲もないPM用語の整理表に等しい。しかしプロジェクトマネジャーの思考ロジックはチェックリストを消し込んでいくような単純なものではない。彼は頭の中で、管理単位、タイム、資源、組織、リスク、品質などの計画と実績、更には人的遂行能力などの情報が多次元に絡み合った神経系を操って判断を下す。プロジェクトのパフォーマンスマネジメントシステム(PPMS)は諸々の管理要素が輻輳して出来ており、プロジェクトマネジャーがこれを使って最適解を出しながら職務を進めるものとも言える。PMはKKD(感と経験と度胸)であると言われるが、このPPMSの複雑さと活用スキルを要することがその所以か!
そこで今回はPPMPの構成を見方を変えて紹介する。管理要素統合の描き方は諸処の文献にあるが、筆者は自前の上記の絵が最も気に入っている(自惚れご容赦)。管理要素がどのように関わりあっているかは、PPMPの表の赤帯の部分と上図を照らし合わせて観察されたい。PPMPの細部及び本稿冒頭の図の詳細については後々の稿で解説することにして、本稿ではひとまず冒頭の図の読み方を下記に紹介するに止める。

【PMで最も大事な情報】
プロジェクトマネジメント(PM)では色々な管理手法を組み合わせて使うが、この中でもWBS、スケジュール、組織、成果測定の4つがプロジェクトのパフォーマンスを管理するためのコアで、これらがワークパッケージ(WP)の中味を定義する上で中核となる。資源もプロジェクト遂行で欠かせない要素であるがこれは作業期間を設定する際の重要因子としてスケジュールに包含される。PMOBKRで示す9つの知識エリアは、業種を問わずどのような仕事に於いても、それをチームで進めるときに必須の要件とされているが、これをコア要件とすると、ここで述べることはそのまたコア即ち(PMコア)2である。
ここでWBS、スケジュール、組織、成果測定がPM手法のコアのコアである理由を述べる。
誰でもモノゴトに臨む時は何らかの計画をするが、その手始めが作業整理である。モノゴトが大きい或いは複雑なときは整理した作業を更に束ねて体系化する。これがWBSの手始めである。このとき作業量が多ければ複数人で分担する。即ちチームワークである。作業に当たる人が多くなれば必然的に組織が出来る。ここには「作業(≒WBS)」と「組織(≒管理責任担当)」の関係がある。
 片や我々が住む地球は自転し時間が進む。モノゴトもこの自然の節理の上で為されるので、その手順を決め、資源手配などの段取をして掛からなければ、時間だけが無為に進み予定通りに目的を達成することはできない。ここには「作業」と「時間」の関係(≒作業スケジュール)がある。作業を束ねたものがWPであるから必然的に「WP」と「作業スケジュール」の関係もできる。
またモノゴトを達成すればその喜びを味わうことが出来るが、作業量が多く、達成するまでに時間がかかる場合は途中の状態を知り、途上の達成感を味わいたくなる。企業性や公共性が重視される場合はこの達成度合いがより客観的に判ることを求められる。達成度合いは現状が上昇過程なのか下降気味なのかの将来予測も合わせて知りたい。モノゴトを行うには何らかの物や道具や人を使うのでこの情報を用いれば作業の状態を定量的に知ることができるし、時間を追って履歴を取れば将来予測も可能である。ここには「作業スケジュール」と「成果測定」の関係がある。
以上の4要素の相互関係が満たされれば成果情報が得られるが、これらのどれ一つが抜けても求める情報は得られない。PMにはリスクマネジメントやコミュニケーションも重要であるが、これらはどちらかと言うと(PMコア)2を踏まえた副次的な要素と言える。

前稿と本稿でプロジェクトパフォーマンスマネジメントプロセス(PPMP)のシステム全貌を概略紹介した。次回以降はこのシステムの作り方を紹介した後、パフォーマンスマネージメントの視点で、逐次細部の紐解きを進める。


プロジェクト パフォーマンス マネジメント バックナンバー
第1回 プロジェクト パフォーマンス マネジメントとは何か
第2回 プロジェクト パフォーマンス マネジメントプロセスの全貌
第3回 プロジェクト パフォーマンス マネジメント ストラクチャー

第4回 PPMシステムの組み立て方と使い方
第5回 PPMの要はWBS/WP
第6回 パフォーマンス トレードオフの要 WE/WP
第7回 マネジメントフレーム間のパフォーマンス情報フロー

一覧に戻る
スポンサードリンク
読者からのコメント

■本稿に対するご意見,ご感想をお聞かせください.■

は必須入力です
コメント
自由にご記入ください

■氏名またはハンドル名
■会社名または職業
■年齢

  
このコンテンツは「プロジェクトマネージャー養成マガジン」としてメルマガで配信されています.メルマガの登録はこちらからできます.