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第2回(2006.01.27) 「プロジェクト パフォーマンス マネジメント」 その2
プロジェクト パフォーマンス マネジメントプロセスの全貌
城戸 俊二 kido@dem.co.jp
(有)デム研究所 http://www.dem.co.jp |
【PMの油断】
プロジェクトの状態は時々刻々変化する。先のくねくね線を見て、パフォーマンスが良いから暫くは安心!として少し気を抜くと、大体そのような気持ちの隙を狙ったようにして問題が起こる。プロジェクトは日々問題が百出する。日毎に湧き出す諸問題は全てがパフォーマンス悪化の火種である。気が緩んだときは火種に対する注意力(感)が緩み、問題拡大の危機にあることすら気が付かずにいることもある。それまでの好結果はたまたまのことで、プロジェクトメンバーの全員が気を張り詰め、互いの連携を密にしていたお蔭かもしれない。メンバーの連携がすばらしい時はプロジェクトの情報システムに少々不備があっても仕事は齟齬なく旨く進むのが常である。しかし一旦気が緩むと人的連携が途切れ、それまで表面化しなかった不平不満が一気に噴出しパフォーマンスが急降下する。このような間抜けなマネジメントに陥らないようにするためには、くねくね線のような包括的な指標だけを当てにするのではなく、自動的に的確なアラームを発するシステムが必要である。
【CPI/SPI遷移線の読み方】
まずくねくね線の読み方を考えよう。この線からマネジメント情報を得るには2つの視点がある。まず一つ目はくねくね線の最終端の位置(絶対値)である。CPI、SPI共に1.0以上であれば、まずはそのプロジェクトの成果はOK。しかしこれだけで安心していては大変なことに陥るかも知れない。二つ目の見方は線の最終端と原点の距離の変化である。プロジェクトの月々の成果が完全に計画通りであればくねくね線は全く動かない。原点に止まったままである。或るとき最先端の位置がプラス側かマイナス側に移動したとする。このときプロジェクトにどのような変化が起きただろうか? 状態を改良した結果はプラス側に、悪事が起こったならマイナス側に伸びる。変化の度合はプロジェクト内で起きた事象の大きさに対応する。このようにくねくね線はその絶対値を見るのではなく、線の動き、変化のスピードを見てプロジェクトに何かが起こったことを察知するためのものである。
【プロジェクトフォーマンスのアラームシステム】
先号でプロジェクトマネジメント(以下本稿ではPMと記す)の諸活動の成果はくねくね曲がったパフォーマンスの線に集約される。ここにはPMのための貴重なメッセージが沢山埋もれていると述べた。その貴重なメッセージは何処にあるか? それはパフォーマンスの値を生成するための基データ、即ち更新されたプロジェクトコントロールベースライン(以下本稿ではPCBLと記す)の中である。そこに価値ある情報を蓄え、プロジェクト遂行に活用するには、PCBLの作り方と使い方がキーとなる。そこで今回から数回に分けて、パフォーマンスマネジメントに注目したPCBLの作り方と使い方を解説する。このシステムは皆さんが作るPCBLと外見上は同じであるが、“パフォーマンスマネジメントに注力したシステム”と言うことで、筆者は敢えてこのシステムを“プロジェクトのパフォーマンスを維持メインテするためのアラームシステム”と呼ぶ。
【Project Performance Management Process】
図はProject Performance Management Processと称して筆者が一昨年のJPMF主催プロジェクトマネジメントシンポジウムで発表し、昨年のシンポ二日目セミナーで改版したもので、筆者が考えるアラームシステムの一部である。内容は見ての通りであるが、これの要点は縦軸は段階を追ってPCBL作り、運用するプロセスで、横軸はそのベースラインの骨組みとして埋め込まれるマネジメント要素である。横に広がったピンクの網掛け部分はPMBOKRで言う統合マネジメントとの関わりが強いところである。図の拡大図がご入用の方は本稿冒頭のURLからダウンロードして下さい。
本シリーズのイントロはこの位にして、次稿以降数回にわたって上記の図に示すプロジェクトパフォーマンスマネジメントの仕組みについて解説する。合わせてここで筆者が考えるプロジェクトパフォーマンスマネジメントにつき仮説を設定し、以降の解説を通してその内容を紐解く。
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【プロジェクトパフォーマンスマネジメントとは】(仮説)
「プロジェクトパフォーマンスマネジメントとは「プロジェクトマネジメント担当者が当該プロジェクトのパフォーマンスを最高にするために、実行計画段階で統合マネジメント情報システムを使っていろいろな発想を巡らし、問題対処に有効な知恵とケースを蓄え、プロジェクト遂行段階で問題対処に際してその知恵とケース情報を効果的に発揮すること」
ここで言う統合マネジメント情報システムはコンピュータシステムではなく、プロジェクトの実行計画段階及び遂行段階でマネジメント担当者が必要な情報を、必要な時期に、必要な精度で入手することを可能にする業務システムである。 |
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プロジェクト パフォーマンス マネジメント バックナンバー |
第1回 プロジェクト パフォーマンス マネジメントとは何か
第2回 プロジェクト パフォーマンス マネジメントプロセスの全貌
第3回 プロジェクト パフォーマンス マネジメント ストラクチャー
第4回 PPMシステムの組み立て方と使い方
第5回 PPMの要はWBS/WP
第6回 パフォーマンス トレードオフの要 WE/WP
第7回 マネジメントフレーム間のパフォーマンス情報フロー
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