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第90回(2006.02.15) 
プロジェクトを手の内に入れる(3)

◆プロジェクトマネジャーの責任

今回はもう少し、プロジェクトを手の内に入れることについて本質的な話をしてみたい。それは、そもそも、プロジェクトをコントロールするとはどういうことなのか、プロジェクトをコントロールするためには何が必要なのかという点だ。

著者は「プロジェクトを成功させるリーダーのスキルとマインドを知る」という定番セミナーの中でプロジェクトマネジャーの責任を

1.計画への落とし込みと共有をする責任
2.計画実行を動機付ける責任
3.計画実行状況を管理する責任
4.状況を説明する責任
5.予想外の状況で判断をする責任

の5つだと定義しているが、この中でより本質的な責任は3.と4.だと考えている。
他のものは、この2つの責任を全うするためにあるといってよい。


◆プロジェクトをコントロールする目的

プロジェクトをコントロールする目的というのはいろいろな見方があるかもしれないが、突き詰めれば

 常にプロジェクトの状況を説明でき、状況に応じた適切な判断をし、プロジェクト の目標を達成すること

である。プロジェクトマネジメントを導入した企業は後半のプロジェクトの目標を達成することには関心が高くなるが、成果責任を果たすというのは実はそちらではない。前半の部分である。なぜか?

プロジェクトにはステークホルダがいるからだ。例えば、無人島で自分の住む家を建てるのであれば、話は別だ。とにかく家が建てば文句はない。しかし、ビジネスの多くのプロジェクトではそのプロジェクトに関連するビジネス要素はたくさんある。例えば、商品開発であれば、できた商品の広告や売込みをしなくてはならないし、流通の整備もしなくてはならない。ITのプロジェクトであれば、作ったシステムを業務に使うユーザがいる。

このような中で、とにかく、商品やシステムを開発できたというだけでは不十分である。それでも約束した納期内であればともかく、納期を遅れてしまえば全くもって不十分である。

納期に遅れること自体が問題なわけではない(もちろん、遅れないに越したことはないのだが)。プロジェクトをコントロールしているとは、常にプロジェクトに対する見通し、つまり、今どういう状況にあり、ゴール達成が予定通りできそうかどうか、できないとすれば、いつ達成できるのかといったことである。これが計画をベースにして行われなくてはならない。


◆根拠と仮説が重要

そして、常に計画通りに行うためにはどうすればよいかという判断ができ、資源を投入したり、そのほかもろもろのマネジメントが「根拠」を以ってできなくてはならない。これがコントロールである。

この際に注意しなくてはならないことは、この根拠はプロジェクトの不確実性の中で決定されるので、正しいかどうか分からない。論理的であることは求められるが、正しいことは求められない。その根拠に基づいてやってみないと分からない部分が多々あるからだ。いわゆる仮説である。

多くのプロジェクトマネジャーが陥っている問題は、「やってみないと分からない」という部分だけが一人歩きをしていることである。繰り返しになるが、それではステークホルダとのコミュニケーションができない。

例えば、IT系のプロジェクトによくあるが、リソース能力にばらつきがあるので、正確な議論ができないという指摘がある。この問題は難しい部分がある。本当にばらつきが大きい場合には、スケジューリングの基礎をなす手法であるPERT/CPMが統計的な手法なので、そもそも手法の適用ができないという問題が生じる。ただ、統計的に取り扱いが可能な範囲のばらつきであれば、仮説を作ってきちんとコントロールしながら進めていくべきである。


◆別の視点

以上は、計画をベースにコントロールをするという議論であるが、実はコントロールの方法にはこれ以外のものもある。一つは遅れである。遅れの部分にだけ注目してコントロールをしていくような手法がある。これがCCPM(クリティカルチェーンプロジェクトマネジメント)である。もう一つは、「モノ(成果物)」に注目してコントロールをしていく方法がある。これがAPM(アジャイルプロジェクトマネジメント)などの手法である。2月27日に行うセミナーはこのような議論になると思う。

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著者紹介
好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
20年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「コンセプチュアル・マネジメント(無料)」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。

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