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第77回(2005.02.16)
PMstye流プロジェクト思考(8)〜付加価値を高める(5) |
付加価値を高める(5) 〜 パフォーマンスを上げるチームと個人の関係
前回はチームと個人のパフォーマンスを同時に挙げることが生産性向上の唯一の方法だと述べた。今回は少し脱線するが、チームとは何かということ、そして、生産性とは何かということを考えてみたい。
よく(ワーキング)グループと(リアル)チームは違うというがこれはどういうことだろうか?「これだけ知っていれば困らない」の
チームマネジメント
で、ワーキンググループでは1+1=2となるが、チームでは1+1=3となるといった説明をしたが、実際にこれはどのようなことなのだろうか?プロジェクトというとなんとなくではあるが、専門を持った人が集まってきて、自分の「担当」を明確にし、その担当に対して責任を持って実行するというイメージがある。特に、プロジェクトマネジメントの手法では、RAM(Responsibility
Assignment Matrix)のように責任分担を明確に決めると、そのイメージが強くなる。
しかし、このような考え方は本来、ワーキンググループの考え方である(RAMは本質的には責任者を決めているだけで、いわゆる担当者を決めているわけではないので、違うが)。しかし、プロジェクチームの本質は、他のメンバーの専門領域に介入して、コラボレーションをしていくことにある。これができない限り、「目的」達成のためにあらゆる手段を尽くしているとはいえない。
例えば、納期の問題を考えてみよう。あるメンバーの担当アクティビティが遅れているとする。このときに、これはその担当者の問題であり、自分たちの作業は影響を受けるが、自分の責任ではないと考えたとすれば、プロジェクトチームにならない。チームにしようとすれば、
プロジェクトの目的に対して自分が何ができるのか
が問題ではなく、
如何にチームの目的を達成するか
が問題だからだ。例えば、遅れている担当者のやり方に、自分の経験に基づく意見を述べる。それが、たとえは、「設計」と「営業」というように異なる経験だったとしても自分の経験をぶつけ合うのだ。そのぶつかり合いの中から、チームとして今直面している納期の問題を解決する新しい知見を生み出していく。これがコラボレーションである。
このような発想の背景には連帯責任がある。第2回の好川塾のテキストに使った
プロフェッショナル・シンキング―松井秀喜・イチローに学ぶ
に面白いことが書いてある。松井やイチローは常に、「まずはチームが優勝することが重要であり、自分の成績はどうでもよい。そして次にチームの優勝に対して自分がどのような貢献をしているかが重要だ」という。これがプロフェッショナリズムである。
ところが、日本のプロ野球の選手には、チームの成績は個々の選手が頑張った結果であると考えている選手が多い。例えば、弱いチームで、優勝を考えずにシーズン始めから個人成績の目標を立てるタイプの選手だ。つまり、チームとしての一致した目的がなく、みんながひたすら「自分の責任」を果たすことに全力を尽くす。ただし、その責任とは、単に「3割、30本」といった一般的に頑張ったとされる目標をクリアすることであったり、「前年度の成績を上回る」といった目標をクリアすることだったりする。その責任を果たしたからといって、チームが優勝するという保証はないし、チームが優勝するために必要なものではない。
これがチームとワーキンググループの違いなのだ。ワーキンググループ的球団が優勝することは、ドラフト制導入前ならともかく、現代の野球ではまずないだろう。ワーキンググループがチームに勝つには相当な実力差が必要だからだ。プロジェクトでいえば、ワーキンググループであれば、誰がプロジェクトマネージャーをやっても成功するようなメンバーを揃えなくては成功しないだろう。
これから考えても分かるように、ワーキンググループというのはメンバーの持っているパフォーマンスに対して、チームのパフォーマンスが悪い。つまり、個人の生産性を上げることによって、チームの生産性を上げるには、メンバー全員が目的思考になり、目的のためには相互の領分に入りこみ、コラボレーションを行うようなリアルチームでなくてはならないのだ。
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著者紹介
好川哲人、MBA、技術士 株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
20年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「コンセプチュアル・マネジメント(無料)」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。
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