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第69回(2004.11.15) 
プロジェクトマネージャーはどうして雑用が多いのか(2)

◆調整業務はなぜ発生するのか

前回、少しだけ触れたが、調整業務がマネジメントの作業だと思っている人は驚くくらい多い。そして、それが、プロジェクトマネジメントという作業自体、あるいは、プロジェクトマネージャーという職業そのもののイメージになっている。

では、調整業務がなぜ、発生するのだろうか?この答えをはっきりしていて、誰に聞いてもステークホルダの存在という答えが返ってくる。たしかに、利害関係者がいれば調整は必要になってくる。これは間違いないだろう。

しかし、一方で、ここに落とし穴があることも事実だ。

それは、すべての主要ステークホルダと利害関係の調整ができなければ、プロジェクトは成功しないという思い込みがあまりにも大きいことである。これはそもそもステークホルダとは何か、利害とは何かという問題でもあるが、利害関係には直接的にプロジェクトの目的に影響を与える利害関係と、間接的にしか影響を与えない利害関係がある。主要ステークホルダの中にも間接的な影響を与えない存在もある。

◆調整業務は理屈の上では避けられる

こういう例を考えてみてほしい。多くのプロジェクトを悩ませるステークホルダにプロジェクトマネージャーやメンバーの組織マネージャーの存在がある。プロジェクトに関係する人たちの人事権を握っている存在である。たとえば、あるメンバーが前のプロジェクトの残作業に手をとられ、次のプロジェクトにどのようにコミットするかを決めることができる存在である。ここで交渉が発生する。おそらく、前のプロジェクトの残作業と、今からやる作業のスケジュール調整をすることになるのだろう。

問題はこの交渉がプロジェクトの目的に照らし合わせたときに意味があるかどうかである。その判断はこのメンバーがロック人材になっているかどうかで行うことができる。ロック人材であれば、プロジェクトの遂行上、不可欠なリソースであるので交渉はしなくてはならない。もし、そうでなければ、別の方法も視野にいれて問題解決を行い、交渉をするという解決策と他の解決策を評価した上で、もっともよい方策(行動)を取るべきである。


◆現実には避けれていない

ここまで述べてきたことに、そんなに異論や違和感のある人はいないだろう。しかし、実際にはこのように行動できていないことが多い。なぜだろうか?プロジェクトの目標があいまいなのだ。たとえば、顧客が要求しているシステムを開発するプロジェクトがあったとしよう。最初の目的は少なくてもシステムの開発にあった。

ところがプロジェクトが進んでいくにつれて、目的がだんだんあいまいになってくる。次の受注に結びつかなくてはならないとか、あるいは、担当でもない役員のAさんが成果を気にしているとかで説明を求められるとか、原因はいろいろ考えられる。また、メンバーにおいても、たとえば、目的の遂行を無視した技術選定に走るといったケースもよくある。このようなことが、プロジェクトの運用上、目的のごとく扱われることがよくある。

たとえば、上の人材の例だと、その人がロック人材ではなくても、役員のAさんのご指名の人材なのではずせない、というので、全体のスケジュールを犠牲にしてでも、参加ありきで考え、そのために必要な交渉をしていく。


◆目的のマネジメントをする

ここで、なぜ、このように目標があいまいになっていくのかを明確にしておく必要がある。それは、責任の所在のあいまいさである。プロジェクトマネージャーの任命をめぐっては、よく責任は押し付けられるが、権限はないという言い方がされるが、前半の部分は必ずしも正しくない。単に現場の責任者であるので、最後まで拾うことを求められてるだけであり、本当の意味での責任を求められているわけではない。本当の意味での責任というのは目的の達成であり、目的の達成の見込みのなくなったプロジェクトの完遂は重要なことではあるが、敗戦処理であり、責任という言葉とはなじまない。つまり、誰も本気で責任を取る体制にはなく、したがって、目的を明確にしておく必要がないのだ。

ここを変えなくてはならない。目的自体が変わることはかまわない。しかし、目的のマネジメントというのをきちんとやることによって、常に目的を明確にしておく。そして、勇気を持って、「目的遂行に必要のないものは捨てる」。これがプロジェクトマネージャーの雑用をなくす唯一の方法である。

何よりも、重要なことは、これは目的に対して、全面的に責任をとるということであ
る。
 
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著者紹介
好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
20年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「コンセプチュアル・マネジメント(無料)」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。

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