PMstyleはこちら
第68回(2004.10.18) 
プロジェクトマネージャーはどうして雑用が多いのか

◆会社のことはすべて社長マター
何の番組だったか忘れたが、ライブドアの堀江社長がインタビューの中で、前の晩、システムがダウンして徹夜をして大変だったともらしたら、インタビューアが「それも社長の仕事なんですか」と突っ込んだ。これに対して、堀江社長は「会社のことはすべて社長マターでしょう」と答えた。このやりとりは結構印象的だった。へえ、そういう人だったんだと思ったからだ。例の新球団騒動以来、彼の言動に興味を持ち、彼が書いた本を何冊か読んだが、そんな印象は受けなかったので、意外だった。

ライブドアがそうだとは言わないが、社長が忙しく、社内外を走り回っているのに儲かっていない企業がというのは、結構見かける。これを称して、「生産性が低い」という。

◆どうして生産性が低いのか
どうして生産性が低いのか。やらなくてよいことをやっているからだ。例えば、僕の知り合いの中小企業の社長で社内のマネジメントが忙しくて、営業ができないとぼやいている社長がいる(片手の指の数くらいはいるな、、、)。彼らの共通の言い分はこうだ。「仕事を取ってきても、きちんとできないと、そのお客様から見放される」。確かに社長の仕事というのは難しいものだ。明確なビジョンや戦略のない企業の社長の仕事を「優先的にすべきこと」と「やらなくてよいこと」に分けようとすると、ほとんど、優先的にすべきことになると思う。これはよく分かる。これは社長だけの話ではなく、すべてのレベルの社員について言えることだ。ゆえに、生産性を上げるには、ビジョンや戦略が重要というのはいまや常識になっている。

◆あなたのプロジェクトは生産性が高いか
さて、プロジェクトマネジメントに目を移してみよう。ここでもやはり、同じことが起こっている。何かがあいまいなために、プロジェクトマネージャーがやらなくてもよい仕事をやっている。これをプロジェクトマネージャーの人たちは雑用だと呼んでいるケースが極めて多いのだ。そのために、本来の業務ができていない。このために、多くの組織はPMOなるものを作っているが、明らかに本末転倒だ。

例えば、調整業務。プロジェクトマネージャーの本分は調整業務にあるといっている人もいる。調整業務が本務のひとつであるのは間違いないだろう。ここで問題にすべきは、その個々の調整を見たときに、本当に必要な調整なのかどうか?

◆すべきこと、しなくてよいことは自分で決めるしかない
ここで考えなくてはならないことは、プロジェクトマネージャーがすべきこと、する必要がないことはプロジェクトマネージャーが決定すべきことだということだ。あれをやれ、これをやれと誰かが教えてくれるわけではない。ましては、この問題を解決してくれるプロジェクトマネジメントの手法(PMBOK(R)でいうところのツール)があるわけでもない。調整が必要かどうかも、自分で考える必要がある。

しかし、プロジェクトマネージャーは個人事業主ではない。組織の一員としてその役割を担っているのだ。したがって、自分の考えだけで勝手に意思決定・行動することはできない。

もうお分かりいただけたと思う。この構図は母体組織の経営者や(下位の)マネージャーにもそもまま当てはまる。母体組織の下位のマネージャーの場合、このパズルを解く鍵は、ビジョンであり、戦略なのだ。では、プロジェクトマネージャーの場合なんだろうか?

母体組織の承認されたプロジェクトの目的である。プロジェクトの目的により、プロジェクトマネージャーは意思決定し、行動しなくてはならない。雑用が多い、つまり、生産性が低いのは、プロジェクトの目的が明確ではなく、目的に照らし合わせて、すべきこと、しなくてよいことを決めることができないことに起因している。

◆関連するセミナーを開催します
━【開催概要】━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
  ◆コンセプチュアルなプロジェクトマネジメントのポイント   ◆7PDU's 
   日時・場所:【Zoom】2024年 11月 05日(火)9:30-17:30(9:20入室可)
       【Zoomハーフ】2024年 12月 18日(水)13:00-17:00+3時間
      【Zoomナイト】2025年 01月 22日(水)24日(金) 19:00-21:00+3時間
        ※Zoomによるオンライン開催です
        ※ナイトセミナーは、2日間です
        ※ハーフセミナー、ナイトセミナーは、事前学習が3時間あります。
  講師:鈴木道代(プロジェクトマネジメントオフィス,PMP,PMS)
  詳細・お申込 https://pmstyle.biz/smn/conceptual_pm.htm
  主催 プロジェクトマネジメントオフィス、PMAJ共催
 ※Youtube関連動画「コンセプチュアルスキルとは」「コンセプチュアルスキルで行動が変わる
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
  【カリキュラム】                     
   1.VUCA時代に必要なコンセプチュアルなプロジェクトマネジメント
   2.プロジェクトへの要求の本質を反映したコンセプトを創る
   3.コンセプトを実現する目的と目標の決定
   4.本質的な目標を優先する計画
   5.プロジェクトマネジメント計画を活用した柔軟なプロジェクト運営
   6.トラブルの本質を見極め、対応する
   7.経験を活かしてプロジェクトを成功させる
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
前の記事 | 次の記事 | 記事一覧
著者紹介
好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
20年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「コンセプチュアル・マネジメント(無料)」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。

メルマガ紹介
本連載は、「PM養成マガジン」にて、連載しております。メルマガの登録は、こちらからできます。
スポンサードリンク
読者からのコメント
はやく続きが読みたい!!!

お世話になっております、初投稿します。
「すべきこと、しなくてよいこと」を自分で十分に判断できているとは思えません。他の社員は「自分の行動/報告すべき最低限」を心得ているのか、私がいわゆる雑用に追われる始末。やって無駄になることはありませんが「なぜ私が..」という思いを抱えたまま残業続き。

母体組織にビジョンや戦略がない場合、また、母体組織にプロジェクトの明確な目的がない場合、PMは一体どうしたら良いのでしょうか。ビジョンを打ち出すよう説得するのに時間がかかりすぎ、最近どうでも良くなってきています。「差しさわりのない報告書を書いておけばいいや。どうせボツ案件になりそうだし」みたいな。。。
ZOO(27歳・プロダクトマネージャー兼プロジェクトマネージャー)