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第66回(2004.09.06)
問題解決と学習(3) |
◆学習の重要性
プロジェクトには何らかの新規性がある。新規性の高いものから、あまり新規性の高くないものまでレベルはさまざまであるが、必ず、新規性があるのがプロジェクトである。では、その中で発生する問題に対してどのような対処ができるのだろうか?
ここで考えるべきことは問題の解決によって「知識を生み出す」ということである。さらにいえば、生み出した「知識を共有する」ことだ。これがチームビルディングであるし、また、共有している知識の量がプロジェクトチームのチーム力だといえる。
システムシンキングの提唱者であるセンゲ教授が「The Dance of Change」の中で「多くのエクセレントカンパニーは、統制ではなく、学習によって、すなわち、新しい知識を生み出し、共有することによって競争力を身につけている」と指摘している。この考え方は、多くのナレッジマネジメントの推進者たちに共通のものである。プロジェクトという組織においても例外ではないだろう。
◆チーム力が上がっていくプロジェクトマネジメント
プロジェクト、あるいは、クロスファンクショナル組織の中では、組織編成の際にもつチーム力で、課題に取り組んでいくと捉えられることが多い。プロジェクトは上に述べた新規性以外に、有期性という特徴もあるので、どうしてもそうならざるを得ない部分がある。
しかし、現実を見ていると意外とそうでもないことに気づく。たとえば、1ヶ月のプロジェクトというとイメージとしてメンバーのもつ力を如何に発揮させるかが勝負のようなイメージを受ける。しかし、チームとしてみて、明らかにいくつかの経験を経てチームとしての問題解決力が上がっているケースはよく見かける。目の前の課題に関してどうすればよいかということがメンバー全員の共通認識として生まれてくる。
この状況を文章で説明するのは難しいものがあるが、最近、一つ経験したものを紹介しよう。
【事例3】
トップダウンでPMOの立ち上げをするプロジェクトがあった。PMOができた暁にはPMOのマネージャーとなるAさんがプロジェクトマネージャー、Aさんの下に3名のプロジェクトマネージャー経験者が専従で担当することになった。期限は2ヶ月限り。最初は何をやってよいかわからないとことから始まった。とりあえず、主要なプロジェクトマネジメント担当者にヒヤリングをして、どのような機能が必要かを考えることになった。そして、その内容を分析し、たたき台を作り、ヒヤリング者を中心にワークショップを開催。ワークショップの結果を分析して、PMOの設計を2ヶ月で纏め上げた。
◆プロジェクトの中で学習を明確に位置づける
この事例で注目すべきところは、Aさんが明らかに学習を重視している点である。Aさん自身、PMは10年以上のキャリアであるし、他の3名のメンバーもいずれもPMの経験者である。このプロジェクトを立ち上げた人(Aさんの上司の役員)の意図もそうだったと思われるが、このような状況ではプロジェクト参加者の経験のみによってまとめようとすることが多い。しかし、自分のことは分かっても人のことは分からない。当事者同士でこのような議論をすると、意見を客観化できないため、知識をうまく生み出せないケースが多い。
Aさんはこのことをよく分かっており、最初から学習するという道を選んだ。つまり、学習によりプロジェクトを成功させようとしたのだ。学習によってプロジェクトを成功させようとする場合、プロジェクト作業、あるいはプロジェクトマネジメント作業と学習機会の関係を明確にしておくことが必要だ。事例3では、ヒヤリングとヒヤリング結果に基づく議論を学習機会と位置づけている。
このようにプロジェクトが最初の段階でもつ能力(チーム力)を、学習で強化することにより、プロジェクトを成功に導く方法は、特に新規性の高いプロジェクトでは有効である。というよりも、唯一の方法かもしれない。
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著者紹介
好川哲人、MBA、技術士 株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
20年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「コンセプチュアル・マネジメント(無料)」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。
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