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第63回(2004.08.02) 
リスクとの付き合い方(5)

◆計画に対するコミットメントが生み出すもの
 前回、計画に対するコミットメントの重要性と、実現の方向性を述べた。

 プロジェクトマネジメントでは計画へのコミットメントができるということは、QCDだけではなく、すべての領域での計画が有効に機能するということを意味する。中でも重要なのが、コミュニケーション計画である。
 コミュニケーション計画へのコミットメントが実現されると、それは、単に進捗だけではなく、リスクコミュニケーションが計画に基づいて行われることを意味する。つまり、

 計画へのコミットメント
  → 計画との差異が生じた場合の速やかなコミュニケーションの実行
    (コミュニケーション計画の実行)

という図式が成り立つのだ。ここが重要な点である。

 逆にいえば、計画へのコミットメントがないということは、コミュニケーション計画も実行されないということである。

◆コミュニケーション計画からプロアクティブリスクマネジメント
 プロアクティブリスクマネジメントという考え方は徐々に浸透してきたが、2つの側面があることを理解しておかなくてはならない。一つは、第一義的な側面で、プロジェクトのできるだけ早い時期にリスクを洗い出し、その手立てをすることによってリスクを回避、あるいは緩和するという側面である。たとえば、プロジェクトの立ち上げの段階でのリスク識別はプロジェクトを行なわないという判断を可能にするし、また、行う場合にも計画の中でリスク事象の発生を避けるような計画策定を可能にする。

 もうひとつは、リスクの監視におけるプロアクティブの実現である。避けることのできないリスクとして計画の中では残存リスクとして残る。たとえば、SIプロジェクトにおいて、顧客の協力が不十分でスケジュールが遅れてしまうリスク事象を考えてみよう。スケジュール遅れが予想される作業に余裕を見ておくという緩和はできても、本質的な解決は考えにくい。この際に重要なことは、このリスク事象の残存リスクの発生を早い段階で発見し、スケジュール変更などの計画変更を含めてプロジェクト全体の影響を小さく抑えることである。
 ところが、この対処には、目に見える(計画上の)スケジュール遅延が生じたときに問題にするのと、顧客の様子を報告し、リスク事象の状態の変化として対処するのでは大きく結果が異なる。つまり、ハザードが生じたときに何らかの手を打てればダメージは小さくなる。ハザードの発生を見つけることもプロアクティブの実現である。
 このためにも、計画にコミットし、計画に対して異変があれば何らかの行動に移る「リスクマインド」を醸成していくことが必要なのだ。

◆リスクマインドを持つ
 結局のところ、リスクに対する対処としては、プロジェクトマネージャー、メンバーを問わず、リスクマインドを持つことに尽きる。このためには、個々のプロジェクトに、計画重視と、異変に対してピンとした雰囲気を作り、さらに、それをすべてのプロジェクトに展開し、母体組織にリスクマインドが生まれてくるようにならなくてはならないだろう。このためにひとつ重要なことは、ゲインになる差異(たとえば、スケジュールの前倒し)についても厳しい感覚で対処することである。
 
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著者紹介
好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
20年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「コンセプチュアル・マネジメント(無料)」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。

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