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第62回(2004.07.26)
リスクとの付き合い方(4) |
◆計画に対する前提
プロジェクトマネジメントの問題を考える際にもっとも気になるのが、計画へのコミットメントである。最近のコンサルティングの場面でよく聞く問題は、「計画の精度」を上げたいという問題である。計画は作るようになってきたが、なかなか、計画通りに行かない。この理由を(見積もり)精度だとか、あるいは、「リスクマネジメント」に求めている。
もちろん、これらは重要である。しかし、非常に大胆な前提に基づいた分析であり、対策であることも事実である。つまり、「従業員は一生懸命仕事をする」という前提だ。言い換えると、「計画通りに仕事をしようという意欲を持っている」という前提に立っている。
◆前提条件と制約条件
計画にはハードに依存する部分とソフトに依存する部分がある。ハード的な部分というのは物理的な制約で計画が決まってしまう部分である。たとえば、トンネルを掘ることを考えてみてほしい。トンネルの径とか、地盤の性格によって計画が決まってしまう。たくさんの要員を投入すればスケジュールを早くできるとか、多くの設備を投入すればスケジュールが短縮され、品質が向上するというものではないだろう。また、人的な部分でもスキルに依存するような部分はハード的な部分だと考えてよいし、また、スコープの規模により、ソフトからハードに変質することもある。PMBOK(R)的にいえば、制約条件に計画が影響される部分である。
これに対して、計画にはソフト的な部分がある。たとえば、要員を大量に投入すればスケジュールを変えることができるといった類のものだ。ソフト的な部分の一つに、要員のやる気で変わる部分がある。このような計画は、前提条件に影響されるのだが、前提条件というのは変えることが可能である。
◆計画はなぜ、実行できないのか
ハードに依存する計画か、ソフトに依存する計画かでそれが実行できない理由は異なる。リスクマネジメントや計画の精度で解決する問題のほとんどはハードに依存する計画に対する問題である。これは計画にコミットしているが、実行できないという状況である。
ソフトに依存する計画の場合、もう少し、本質的なことを考えてみる必要がある。つまり、前提条件が適切でない場合が多い。中でも、上に述べた「承認された計画は守られる」という前提条件の妥当性については常に疑問をもっておく必要がある。積極的な拒否はしないまでも、コミットメントしようとしないことが多い。
◆どうすれば計画が実行できるか
ハード的な問題は逆に言えば、予想外の展開というのは少ない。問題が起こるべくして起こる。問題が起こりだすと、見守るしかないという状況になるケースが多い。
逆にいえば、そこで是正をできるようなリスクマネジメント計画は確実に効果を発揮する状況だとも言える。
問題はコミットメントをしないケースだ。ここでリスクマネジメントを持ち出してもループに陥るだけだ。リスクマネジメントも計画の一種だからである。コミットメントを高めるための大原則は「自己決定」にある。つまり、計画策定のプロセスに参加することが不可欠である。参加のレベルはたとえばPMBOK(R)のように計画の最後にキックオフミーティングを持ってくるようなレベルもあれば、スコープ定義そのものにかかわる必要があるケースもあるだろう。
そして、自己決定した計画に対して、コミットメントを求めていくことは、メンバーにリーダーシップを求めることに他ならない。
(以下、次回)
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著者紹介
好川哲人、MBA、技術士 株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
20年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「コンセプチュアル・マネジメント(無料)」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。
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