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第35回(2003.04.06) 
プロジェクトの成果はメンバーのマネジメントスキルで決まる(1)
 

 いよいよ企業がITSSに本格的に取り組むようになってきた。ITSS対応のスキル体系を構築するプロジェクトを立ち上げている企業も少なからずある。ITSSの内容については、AllAboutJapanの記事でかなり詳しく追いかけているのでそちらを参考にしてほしい。(※現在、記事は閉鎖されています)

 ITSSは従来の取り組みとは異なる点が多いが、中でも注目すべき点は、プロジェクトマネージャーだけではなく、ITプロフェッショナル、ITアーキテクト、ディベロップメントといった技術職に明確な形でマネジメントスキルを求めている点である。これは大変理にかなっている。

 本来、プロジェクトにおけるメンバーの管理というのは、ラインのようにこと細かに管理することができない。端的にいえば、プロジェクトマネジメントというのは計画を作ることによってその範囲はエンパワーメントを行うことである。成果をきちんとだしている限り、メンバーの行動は制約されることはない。これが原則論であるし、それができて初めてプロジェクトという業務形態に意味があるともいえる。

 ところが実際には、かなり細かい管理をしているプロジェクトマネージャーも珍しくないが、これは、本来のプロジェクトマネジメントのうちの何か(例えば、顧客との調整や、よりすばやいトラブルシューティングなど)を犠牲にして、そのような管理をしているわけだ(決して、そのようなプロジェクトマネージャーのやり方を否定しているわけではない。例えば、メンバーのマネジメントスキルが未熟であるとかいった理由で、トレードオフとしてそのような意思決定をしているのが妥当なケースがほとんどだ)。その場合、当然、プロジェクトマネジメントの品質は落ちてくる。このような事態に陥らないためには、本来論どおり、メンバーが自律的に計画を遂行していくしかない。

 実際のところ、メンバーのプロジェクトマネジメントセンスというのは、プロジェクトに大きな影響を与えることがしばしばである。例えば、進捗管理を考えてみると良く分かる。プロジェクトマネジメントが、コミュニケーション計画として、QCDが計画と10%の差異が出てきた場合には、異常事態とみなし、その原因を分析し、対策を報告すると決めたとする。このルール、理屈の上では非常に良く分かるのであるが、この判断はいくつか難しい点がある。一つは10%の差異という判断をちゃんとできるか、言い換えると、進捗率を如何に正しく捉えることができるかに依存している。EVMのような仕組みを導入しても、結局、この部分は変わらないだろう。センスが重要になってくる。よく進捗遅れに気がついたときには遅かったというトラブルが起こるが、このトラブルはまさにこのセンスのなさに依存しているといえる。

 また、進捗差異の判断ができたとしても、今度は、その原因を分析し、対策を講じなくてはならない。この部分では、実務的な判断要素が相当多くなる。つまり、実務を良く知らないPMでは適切な対応ができないことが多い。したがって、メンバーの対応に任せなくてはならないのだが、逆に、実務的な判断だけでは判断できない部分もある。例えば、コストと品質にトレードオフが発生する場合などはその典型である。このときに、PMとメンバーが協力してチームとして判断するという方法もあるだろう。しかし、現実にはそううまくいくものではないのは、ご承知のとおりだ。やはり、どちらかがイニシャティブを持った方がよい。

 この議論の中で出てくる「要請」が「プロジェクトマネージャーは実務(技術)を熟知していることが望ましい」というものだ。しかし、上で述べたように考えてみると「メンバーがマネジメントスキルを持つ」という解決策もあるわけだ。著者はこちらの方が望ましいと思う。

 今回はここまでにする。続きは次回の戦略ノートで。

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著者紹介
好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
20年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「コンセプチュアル・マネジメント(無料)」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。

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