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第31回(2002.02.03) 
プロジェクトマネジメントはなぜ変われないのか(1)
 

◆プロジェクトとは
 突然だが、みなさん、プロジェクトって何と聞かれたらどのように説明するだろうか?例えば、エンジニアリング・プロジェクト・マネジメント辞典では、

在来組織を横断して,一時的に組織化された人的資源と非人的経営資源の統合による活動であり,一定の時間的制限の中で,日程,費用,技術上の明確に定められた目標の達成を目指した計画

という定義がされている。ほかにもあるが、そんなに違いはない。一般的な認識としてプロジェクトとは
 顧客(スポンサー)がある
 始まりと終わりがあり,ライフサイクルがある
 特殊な目的(ミッション)がある
 組織を横断する
 先例がない(不確実性に満ちている)
 マネジメントが必要である
 目的が達成された時点で終了する
といった性質の業務、あるいは活動を指している。

◆プロジェクトの例
 さて、プロジェクト論と展開するつもりはないのだが、身近なところで、いくつかのプロジェクトを思い出してみよう。例えば、新製品の開発。
 まず、役員会がその製品開発をするかどうかを決定する。彼らがスポンサーになる。そして、日ごろはあまりしない「新製品Xを世に出す」というミッションが設定される。また、それをいつ着手し、いつまでに完了するのかを明確に決める。同時に、研究開発、設計、生産、マーケティングなどの部門から必要な人(専門家)が集められる。そして、プロジェクトを作り、製品開発に取り組んでいく。その製品を開発するためには、新しい技術が必要だ、また、新しいコンセプトなので市場も受けれいてくれるかどうか分からない。したがって、ほっとくとどこにいく分からないので、マネジメントをしようということになる。そのようにして、進めていき、無事に目的が達成できればそこでプロジェクトは終わる。確かに上の性質を持っていることが分かる。

◆もうひとつプロジェクトの例
 ビルを建てる場合はどうか。まず、注文がある。これがスポンサー。当然、いつ着手し、いつから供用するかを決める。ビルを建てるにあたっては、「都心再開発として、オフィス空間と居住空間、さらにはホテル、商用空間と併設し、最新のITを応用した環境を持つ高層ビルを作る」といった目的が明確にされる。そこで、空間設計、建物の設計、土木、オフィス企画、ITなどの専門家を集ってプロジェクトを形成する。ビルを建てようとしている場所の地形はたいへん、複雑であり、今までと同じ発想で設計できるかどうかは分からない。場合によっては、実際に建築を始めて、工法を変えたりする必要が生じないとも限らない。コストをめぐってスポンサーとの紆余曲折があるが、プロジェクトマネージャーを中心に一丸となって乗り越え、何とかビルは完成し、プロジェクトは解散する。これもやはり、プロジェクトの性質があることが分かる。

◆システム開発のプロジェクト
 さて、ここでシステム開発のプロジェクトを考えてみよう。顧客から注文が来て、システム開発プロジェクトをはじめる。目的は、顧客企業の営業活動の効率化である。着手とカットオーバーも決まる。そこで人を集める。このシステムはJavaとOracleで開発するので、それらに詳しい人をアサインする。。。はずであるが、実際にはそうは行かない。当社には両方をよく知っているのはAさんとBさんがいるが、ほかのプロジェクトに入っていて、そちらでいっぱいである。そこで、SQLserverに詳しいCさんとDさんを担当させようということになる。これが現実であれば、まだ、ましだが、現実にはEさんに勉強させればいいといったことを平気で考える。つまり、組織横断的に専門家をアサインするという性質が満たされていないのだ。

◆「日常活動」としてのプロジェクト
 なぜ、こうなるのか?根本的な議論はこの企業の経営戦略の問題に帰着するが、とりあえず、この会社がすべての受託業務をプロジェクトでやっているから発生する問題である。つまり、プロジェクトのミッションが特殊ではないのだ。ミッションとしては日常的であるので、すべてのプロジェクトにその企業で最高の専門性のある人間を充てるということにはならない。現実的な対応として、今、対応可能な人材が対応するしかないという状況になる。すると、プロジェクトの性格でいうところの組織横断的という部分が実質的な意味で失われる。

 このような状態にあるプロジェクトを、典型的な性質を持ったプロジェクトに対するマネジメントと同じ要領でマネジメントしようとしてもうまくいくはずはない。では、どうすればよいのか?

◆ニューウェーブプロジェクトマネジメントが求められる
 新たな考え方が必要になるだろう。われわれがニューウェーブプロジェクトマネジメントと呼んでいるものは、そのための新しい枠組みである。長くなるので、今回は、ここまでにする。続きは次回以降にしたい。

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著者紹介
好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
20年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「コンセプチュアル・マネジメント(無料)」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。

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