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第314回(2014.12.19)
コンセプチュアルプロジェクトマネジメント


◆考え抜くプロジェクトマネジメント

PM養成マガジンを立ち上げて、プロジェクトマネジメントの普及活動をする中で、PM養成マガジンで提供するサービスコンセプトとして「プロジェクトマネジメントOS」というコンセプトを提唱した。

そして、プロジェクトマネジメントOSを身につけ「考え抜く」プロジェクトマネジメントをしようと働きかけてきた。

しかし、考えるというのは当たり前のようで意外と難しいことが分かった。まず、全般的な印象として考えることよりは、知っていることが重要だと思う人が多いことが挙げられる。簡単にいえば、思考より、知識(情報)が重視される。


◆経験の位置づけの違い

この背景にあるのは、経験重視の風潮である。これまで何度か米国の人と一緒にプロジェクトをやったことがあるが、経験が重視されることは含めて変わらないように思う。しかし、日本と米国の違いは、日本は経験によって知っていることを重視するのに対して、米国は「経験に基づいて考える」ことを重視するように思える。

極端なことをいえば、米国流は、経験は次に何か新しいことを生み出す源泉であり、何も生まないとコピーキャットと揶揄される。日本では、経験に基づいて考えて何か新しいことをやるよりは、経験の範囲で確実にできるようにやろうとする。

この違いは大きくて、日本人がPMBOK(R)を作れないのも、イノベーションを起こせないのもこの違いによるところが大きいように考えている。

ついでにいえば、リスクマネジメントの態度にもこの問題は大きく関わっている。以前戦略ノートに書いたが、リスク分析が経験依存である。経験的にこんなことが起こっているという分析はするが、計画を見てリスクを分析するということをあまりしない。

【戦略ノート305】リスクマネジメントは具体的か
http://mat.lekumo.biz/ppf/2013/07/305-baeb.html


◆内省しないプロマネ

話を元に戻す。経験を知識としてしか使わないのは非常にもったいないと思うのだが、なぜだろうとずっと考えていた。そのうちに一つ、気づいたことがある。それは経験の意味が自分の中で消化できていないことだ。言い換えると経験から学ぶことができていない。

その原因はいろいろあるが、プロジェクトマネジャーの場合についていえば、プロジェクトやチームの振返りをしても、プロジェクトマネジメントの内省をしていないことにあるように思える。内省の一つの方法は経験を振返り、自分の視点で整理し、持論としてまとめていくことである。

PM養成マガジンの10周年記念イベントとして、持論を作るイベントを実施したのはそのような想いがあったからだ。


◆コンセプチュアルスキルの弱いプロマネ

その活動の中で、新たな問題を発見した。それは、経験を一般化することができない人が多いということだ。抽象的なロジックを作ることはできる。具体的な展開や分析もできる。しかし、抽象的な考えと具体的な考えを結び付けることができない。

これは、自分がやっている(、おそらく経験から学んだ)具体的な方法を一般化し、新しい状況に適用することができない人が多い。これでは、経験をベースにして新しいやり方を考えることができないし、経験を体系的な知識にすることもできない。

実はこの問題は、コンセプチュアルスキルの問題である。言い換えると知識を使って考え抜き、ひとつ上のプロジェクトマネジメントをするには、コンセプチュアルスキルが必要だ。

ただし、闇雲に考えればよいというものではない。だからコンセプチュアルスキルだともいえる。

言うまでもなくプロジェクトに求められるのはスピードであり、余計なことを考えるのは時間の無駄だというものだ。本当に考えるべきところはいくつかに絞ることができる。著者は5つあると考えている。


◆コンセプチュアルなプロジェクトマネジメントの5つの視点

一つ目はどうずればプロジェクトで得られる成果を大きくできるかを熟考する。言い換えるとプロジェクトの本質はどこにあるのかということ。これは目的や目標の設定の際に考えるべきことだ。

二つ目は、目標を達成するために顧客なり、市場の要求の本質がどこにあるかということを熟考する。これはスコープ定義の際に考えるべきことだ。

三つめは、本質的な要求、あるいは本質的な目標を実現するためにはどうすればよいかを熟考する。これは計画の問題である。

四つ目は、プロジェクトマネジメント計画で何を押さえておけばよいかを熟考する。これはちょっと難しいのだが、プロジェクトでは計画は常に変わる。その中で方向がぶれないように進んでいくには、プロジェクトをマネジメントする計画で何を決めておけばよいかを熟考する。

五つ目は、計画から終結までのすべてにおいて、発生した問題に対する答えを熟考する。プロジェクトではどうしても目先の問題を重視せざるを得ないため、起こっている現象に囚われ、見当違いの方向に答えを求めることが多い。このような落とし穴に落ちずに、柔軟な発想で答えを考えることが不可欠である。

これらにポイントを中心にして、コンセプチュアルスキルを活用するプロジェクトマネジメントをコンセプチュアルプロジェクトマネジメントと呼ぶことにした。詳しくは、PM養成マガジンで10回の連載をしたので、読んでみてほしい。

コンセプチュアル・プロジェクトマネジメント講座

◆関連セミナー

PMstyleでは、コンセプチュアルプロジェクトマネジメントのセミナーを実施しています。これは、

1.成果を最大化する目的と目標の決定
2.要求の本質を見抜いたスコープ定義
3.本質的な目標を優先する計画
4.プロジェクトマネジメント計画を活用した柔軟なプロジェクト運営
5.創造的な問題解決
6.経験を活かしてプロジェクトを成功させる

のポイントについて解説するセミナーです。プロジェクトマネジメントをコンセプチュアルにしたい人の参加をお待ちしています!

◆関連するセミナーを開催します
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  ◆コンセプチュアルなプロジェクトマネジメントのポイント   ◆7PDU's 
   日時・場所:【Zoom】2024年 11月 05日(火)9:30-17:30(9:20入室可)
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   3.コンセプトを実現する目的と目標の決定
   4.本質的な目標を優先する計画
   5.プロジェクトマネジメント計画を活用した柔軟なプロジェクト運営
   6.トラブルの本質を見極め、対応する
   7.経験を活かしてプロジェクトを成功させる
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著者紹介
好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
20年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「コンセプチュアル・マネジメント(無料)」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。

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