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第301回(2012.12.07)
プロジェクトリーダーとプロジェクトマネジャーの責任論


◆任務を全うすることによって責任を取る

プロジェクトリーダーとプロジェクトマネジャーの関係を明確にするために、まず、「責任」という観点から考えてみたい。日本の組織ではこんな会話がよくある。プロジェクトリーダー=部長、プロジェクトマネジャー=PMだとしよう。

(PM)責任は私が取りますので、この方法でやらせてください。
(部長)どうやって責任を取るの。責任はとれるの?
(PM)・・・

責任を取るという言葉も難しい。

企業のトップとか、政治家が責任を取るという場合の相場は、辞任することだ。大臣が何かしでかしたら、大臣を辞めて責任を取ることだった。一般的に考えても責任を取るというのは、「懲罰」を受けるという意味合いがある。

ところが、小泉政権の時だったと思うが、大臣が問題発言をした際に誰もが思わなかった対応をした。

「大臣を続け、大臣としての任務を全うすることによって責任をとります」

と言い出した。

こういう言い方をされると、反論するのが難しい。任務をまっとうすることが責任を取る方法だと言われると、受け入れざるを得ない。せいぜい、潔くないといったあまり役に立たない非難をするくらいしかできない。また、非難にさらされながらも、任務を行うことは懲罰といえなくもない。


◆プロジェクトを完遂することによって責任を取る

この論法をプロジェクトリーダーとプロジェクトのマネジャーの間に持ち込むとどうなるか?

(PM)責任は私が取りますので、この開発方法でやらせてください。
(部長)どうやって責任を取るの。責任はとれるの?
(PM)プロジェクトを最後まで完遂することによって責任を取ります

と答えたら、部長はなんというだろうか?このロジックは後で述べるように理に適っている。まあ、一応、上司なので、屁理屈をいうなくらいの反論はすると思うが、本質的な反論はできないだろう。

なぜ、こんなことが起こるのだろうか?戦略ノートの131回にも書いたが、責任の概念には、アカウンタビリティとレスポンシビリティの2つある。日本語でいえば、成果責任と実行責任である。


◆責任という言葉の意味が違う

部長が部下に責任を取れるのかと言う場合の責任とは、成果責任をイメージしている。
トップや政治家が責任を取れと言われるのと同じだ。不祥事を起こして、トップとしてあるいは、政治家として成果責任をとれなくなったら辞任するという発想なのだ。

ところが、件の

大臣を続け、大臣としての仕事を全うすることによって責任をとります

という宣言の中の責任は実行責任である。つまり、責任概念をすり替えているのだ。

もう一度、この例を見てみよう。

(PM)責任は私が取りますので、この開発方法でやらせてください。
(部長)どうやって責任を取るの。責任はとれるの?
(PM)プロジェクトを最後まで完了することによって責任を取ります

PMが言っているのは、自分の考える方法で最後までプロジェクトをやり遂げますという実行責任について言っているのだ。これに対して、部長は自分の言うとおりにしないのであれば、成果責任を取れといっている。責任という言葉を巡って、行き違いが起こっている。


◆リーダーの責任、マネジャーの責任

こんなことがよく起こっているわけだが、この話はプロジェクトマネジャーに分がある。

プロジェクトの成果責任はプロジェクトの目的が実現できれば果たすことができる。
これが前提である。プロジェクトの成果責任を果たすために、プロジェクトマネジャーが目標設定をし、プロジェクトリーダーは自分の決定した目的がその目標で実現できることを確認し、承認する。この時点で、プロジェクトマネジャーはプロジェクトの実行について権限委譲をされており、実行責任を果たせばよい立場にある。つまり、目標を達成するためのやり方については任されている。そして、成果責任は成果と目的を紐づけたプロジェクトリーダーが負うことになる。このように考えると目標達成のやり方が自分の考えと違うので、成果責任を負うべきだというロジックには無理がある。

プロジェクトの体制というのは、プロジェクトリーダーが成果責任を取り、プロジェクトスポンサーが実行責任を取る。これが基本である。

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著者紹介
好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
20年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「コンセプチュアル・マネジメント(無料)」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。

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