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第300回(2012.12.04)
プロジェクトリーダーとプロジェクトマネジャーのコラボレーション


◆はじめに

ついに戦略ノートも300回になった。

戦略ノートは、PM養成マガジンの配信を始めてしばらく、唯一のコンテンツとして配信していた。PM養成マガジンとしては本号が1104号なのだが、僕自身は、戦略ノートの300回の方が感慨深い。この機会にバックナンバーを読んで戴けると嬉しい。途中からメルマガからブログ記事に飛ばす形態にしたため、「プロジェクトの補助線」ブログにも収録されているものもあるが、プロジェクトマネジメントOS本舗のサイトに299話、すべて収録されている。

「戦略ノート」
http://pmstyle.jp/honpo/note/list.htm

ということで、300話目のテーマを何にしようかと1ヶ月くらいいろいろと考えていたのだが、これをテーマにすることにした。

「プロジェクトリーダーとプロジェクトマネジャーのコラボレーション」

このテーマは実は今までも何回か書いたことがあるのだが、プロジェクトマネジメントのもっとも基本的なテーマである。


◆リーダーとマネジャーの違い

一般に、リーダーは組織の方向を決め、マネジャーはその方向に組織を導くことが役割だと言われる。言い換えると、リーダーは達成したい目的や目標を決め、マネジャーがその達成方法を考え、行動に移していく。この役割分担は、1970年代にアブラハム・ザレズニックが示したものである。ジョン・コッターはリーダーシップとマネジメントの違いをこのように示している。

組織にはリーダーとマネジャーの両方が必要である。現在と未来の両方を考えた活動をしなくては、組織は持続可能でなくなるからだが、リーダーは未来を考え、ビジョンで組織を動かす。マネジャーは未来のために現在を考え、仕組みで組織を動かすという役割分担になる。ここで組織と言っているのは、企業、事業部、部などを指している。

最近の傾向として、組織の役職を従来の課長、係長から、マネジャー、リーダーと置き換えている組織が増えている。この呼び方は課の下にチームという「組織」があり、そのチームリーダーをリーダーと呼んでいるので、ここの議論からは外す。

ここでのイメージは、経営トップや事業部長がリーダー、ミドルがマネジャーというものだ。ただし、職位の場合、リーダーからマネジャーになっていくわけだが、リーダーとマネジャーというのはそのような連続的な存在ではなく、まったく異なるスキルが求められる、不連続な存在であることに注意しておいて欲しい。言い換えると、優秀なマネジャーがよいリーダーになれるかどうかは分からないということだ。


◆プロジェクトにおけるリーダーとマネジャー

さて、プロジェクトにおいても、リーダーとマネジャーが必要である。一般的なリーダーとマネジャーになぞらえると、プロジェクトリーダーはプロジェクトの目的や目標を決め、プロジェクトマネジャーはその方向にプロジェクトを導くことが役割である。PMBOK(R)のロールでいえば、リーダーはプロジェクトスポンサーで、マネジャーがプロジェクトマネジャーである。

ついでに、言葉を整理しておく。プロジェクトのロールとして、開発リーダーをプロジェクトリーダーと呼んでいるような企業がある。これは、プロジェクトマネジャーの下で、プロジェクトチームを業務/技術/チームワークなどの側面からリードする役割のことで、ここで言っているプロジェクトリーダーとは異なる。


◆プロジェクトリーダーが機能しない

ところが現実には、プロジェクトリーダーが機能していない、あるいは、明確になっていないプロジェクトが多い。すると、何が困るのか?

IT企業のように、直接業務のほとんどをプロジェクトで行っている企業の場合、プロジェクトが技術獲得の場であり、市場開発の場であり、人材育成の場である。つまり、経営活動のほとんどはプロジェクトの活動を通じて行われる。IT以外の企業においても、R&Dの活動を中心にして、プロジェクト制をとっている企業が増えている。この場合もIT企業と同じような事情になる。

つまり、顧客に約束したシステムを開発する、新商品を開発するといった活動だけでは、未来が拓けてこない。むしろ、それらは組織にとっては手段に過ぎない。目的は、未来に向けた準備をすることであり、それは戦略の実行や、ビジョンの実現などの中にある。

この絵を描くのがプロジェクトリーダーである。プロジェクトリーダーが部長であれば部の未来、事業部長であれば事業部の未来、経営トップであれば会社の未来ということになる。


◆「余計なこと」をしたくない

ここで一つ、問題になることがある。それは、ITプロジェクトは成果物が売上そのものだし、商品開発プロジェクトにしても新商品による売り上げを見込んで開発する。したがって、プロジェクトの目的がなんであるにせよ、システムや新商品ができなれば、元も子もないのだ。なので、開発を手段として実現したい目的を「余計なこと」だと考える傾向がある。このように考える人に共通の傾向として、しっかりと開発を行っていれば、技術、市場、人材などはついてくると考えることである。だから、プロジェクトは業務に集中すべきだとして、プロジェクトの目的をシステムの開発とか、商品の開発といった業務そのものの遂行に置く。

このような考えを全面的に否定するつもりはないが、そのように考えてやってきた結果として、収益率の低いシステム開発、販売ロット数の少ない製品開発があることは肝に銘じておくべきだろう。

今回はここまでにする。今回は言葉の定義、現状の整理を行った。

次回は現状を踏まえて、プロジェクトリーダーとプロジェクトマネジャーはそれぞれ、どのような役割を果たし、どのようなコラボレーションをすればよいかを考えてみたい。

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著者紹介
好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
20年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「PM養成マガジンプロフェッショナル(有料版)」や「プロジェクト&イノベーション(無料)」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。

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