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第200回(2009.01.06)
プロジェティスタのプロジェクトマネジメント(7):
プロジェクト要求マネジメントとは何か |
◆プロフィットセンター化とサスティナビリティ
今回で、戦略ノートは200回になる。もともと、PM養成マガジンは戦略ノートを配信するところから始まったので、感慨深いものがある。
200回を迎えて、今年は2つの大きな戦略について議論したいと思っている。一つはプロジェクトのプロフィットセンター化である。二つ目はサスティナビリティ(持続的発展)という戦略である。この2つは互いに強い関連をもっている。
一つ目のプロフィットセンター化は、プロジェクト改革だといってもよい。プロジェクトをコストセンターだというと言葉が過ぎるような気もしながら書いているが、今までプロジェクトマネジメントやPMOのコンサルティング、プロジェクトマネジャーの育成などでかかわったことのある企業を振り返ってみて、プロフィットセンターだと言えるプロジェクトは全体の一割程度ではないかと思うので、あえてこのような言い方をした。
◆プロフィットセンターとコストセンター
製造業以外の方はこの概念自体に馴染みのないものかもしれないので、簡単に説明しておく。プロフィットセンター、コストセンターという概念はドラッカーが事業のマネジメントの説明を説明するために作った概念で、企業の中で収益が集計される部門のことである。これに対して、コストセンターとはコストだけが集計され、収益は集計されない部門のことだ。
多くの組織では、プロジェクトの上位組織はプロフィットセンターになっているが、プロジェクトそのものはコストセンターになっている。こういうと、そんなことはない。当社はプロジェクトは損益を計算していると即座に反論されそうだ。コストセンターとプロフィットセンターの本質的な違いは、上の文章では分かりにくいが、コントロールの対象にある。集計という行為は可視化をさす場合と、コントロールをさす場合と両方ある。収益を可視化するだけではプロフィットセンターであるとはいえない。収益をコントロールしてプロフィットセンターだと言える。
◆利益をマネジメントするプロジェクトがプロフィットセンター
たとえば、コストが膨らんできたときに、コストを抑えようとするだけではコストセンターである。ここで収入を増やそうとするのがプロフィットセンターである。アーンドバリューの考え方をみれば明らかなようにプロジェクトマネジメントはコストセンターとしてのプロジェクトを前提にしたマネジメントになっている。たとえば、SI企業でこういうプロジェクトを運用をしているのは元請けのプロジェクトの一部で、他のプロジェクトはほとんどコストセンターとして運用している。一次請け、二次請けと連鎖がある中では、元請けがコストセンターになるとそれ以下がプロフィットセンターになるのは非常に難しいという事情はあるが。
実は、プロフィットセンター、コストセンターという概念には、非常な誤解がある。
プロフィットセンターが社内に存在しているように誤解をしている組織が多い。典型的なのは、間接部門と直接部門という区分でコストセンターとプロフィットセンターを分けているし、プロフィットセンターを収益とコストの両方を集計している部門だと定義しているような人もいる。実は、言葉を作ったドラッカーは、創造する経営者という本の中で、
「およそ企業の内部には、プロフィットセンターはない。内部にあるのはコストセンターである。技術、販売、生産、経理のいずれも、活動があってコストを発生させることは確実である。しかし成果に貢献するかはわからない」
と述べているのだ。
◆プロフィットセンター化はマーケットアウト化によって実現される
ドラッカーは晩年、この言葉を作ったことに後悔していたというエピソードもあるらしいが、この概念はそんなに筋の悪いものではないと思う。プロダクトアウトでもなく、マーケットインでもなく、マーケットアウトの中にのみ、プロフィットセンターがあるという風に読めるからだ。
そう考えると、プロジェクトというのはきわめてよくできた組織運営モデルである。
マーケットアウトを口でいうのは簡単だが、通常の組織でマーケットアウトなどなかなかできるわけではない。しかし、プロジェクトであれば容易にできる。
というよりもプロジェクトというのはそもそも、そういうモデルではないかと思うのだ。
さて、では、プロフィットセンターとしてのプロジェクトを実現するときに、どのような考え方をすればよいのだろうか?キーワードはいくつかあると思っているが、もっとも重要なキーワードがサスティナビリティである。
2〜3日前に、燕三条の磨き屋シンジケートの話題をテレビでやっていた。不況になると、それを乗り越えるために技術を磨き、それによってさらに発展していくタイプの企業というのは必ずある。不況だとものが売れなくなり、売れるものを作るためにはより良い商品が必要で、それを支えるのは中小企業というケースが多いのだ。
◆プロフィットを生み出すサスティナビリティ
サスティナビリティというのは、このように永続的に発展していく概念である。サスティナビリティは開発マネジメントの中で、環境とのバランスをとるために出てきた概念であるが、開発で自然を破壊するという前提だとそれをどれだけ抑えても、いつかは必ず、自然はなくなってしまう。したがって、開発のときに自然を破壊する部分もあるが、それ以上に自然を創造できなくてはならない。ビジネスでも同じだ。理由はともかく、コストをどんどん押さえてみてもいつかは追いつかなくなる。価値を上げることを考えなくてはならない。創造的な発想が必要である。自動車が売れないというのが問題になっているが、もし、価値が付加できなければその商品のライフサイクルは終わりである。この問題はそういう問題だと思う。
要はプロジェクトをサスティナブルにしていくことが、プロフィットセンターにするためのもっとも近道である。この話はブログに書いたので、読んでみてほしい。
サスティナブルなプロジェクトマネジメントを求めて
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著者紹介
好川哲人、MBA、技術士 株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
20年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「コンセプチュアル・マネジメント(無料)」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。
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