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第199回(2008.12.05)
プロジェティスタのプロジェクトマネジメント(7):
プロジェクト要求マネジメントとは何か |
◆要求と要件
プロジェティスタがもっとも重視すべきマネジメントは「要求のマネジメント」である。要求という言葉は要件、スコープなどとしばしば混乱して用いられるので、まずは基本事項を整理しておく。
最初に要求と要件という言葉は英語では、ともに「Requirement」であり、区別されるものではないことを覚えておいてほしい。その上で、日本では意図的に分けて使われることがある。その場合、
要求:漠然とした希望
要件:明確な希望
という意図があることが多い。プロジェクトマネジメント上、重要なことは、要件というのは主に、成果物に対する希望として使われるのに対して、要求はプロジェクトに対する希望として使われることだ。
◆プロジェクトに対する要求とプロダクトに対する要求
ここで思い出してほしいのは、プロジェクトのスコープには、プロジェクトスコープと呼ばれるものとプロダクトスコープ(製品スコープ)と呼ばれるものがあるように、プロジェクトを取り巻く要求にも、プロダクトに対する要求と、プロジェクトに対する要求がある。
上に述べたようにプロダクトに対する顧客の要求は成果物の要件と呼ばれる。そして、プロジェクトに対する要求は成果物生成のための諸条件であるが、言い換えれば顧客のビジネスに対する要求に他ならない。その中には、納期とか予算とかが含まれ、また、アカウンタビリティやコミュニケーションがプロジェクトに対する要求になることも少なくない。いずれにしてもプロジェクトに対する要求こそ、プロジェクトマネジメントが実現すべきものである。
◆プロジェクトに対する要求の源泉は上位組織
ただし、ここで注意しなくてはならないのは、プロダクトに対する要求もプロジェクトに対する要求の源泉は顧客であるが、プロジェクトに対する要求は最終的には組織がプロジェクトに対して求めるものであることだ。
たとえば、SIのプロジェクトであれば、顧客から希望納期や希望予算があるが、これが実質的に発注条件になるわけであるが、それがそのままプロジェクト要求になるわけではない。要求として組織でマネジメントされ、それがプロジェクトに対してプロジェクトの要求として渡される。たとえば、1千万円で受注した案件に対して、プロジェクトに対する要求としては800万円になることもあれば、1200万円になることもあるわけだ。
つまり、「プロジェクト要求」を通して、顧客の要求とベンダー(自社)の要求が調整されるわけだ。ここがマネジメントとしてのポイントになる。
次にスコープと要求の関係であるが、要求にも当然スコープがある。このことを理解しておく必要がある。要求のスコープとは、顧客のビジネス上の要求をどこまでプロジェクトに求めるかという意味での範囲である。言い換えると、顧客のビジネススコープである。要求をうまく抽出するためには、まず、要求のスコープを明確にしていく必要がある。要求のスコープの変動がプロジェクトのスコープの変動を引き起こしていることが多いからだ。
◆要求マネジメントとはシーズ要求を探すこと
さて、このように整理したときに、上に述べたようにプロジェティスタのマネジメントの中で重要な意味を持つのは要求のマネジメントである。プロジェクトスコープを考えた場合、そのベースになるのは要件(製品要求)であるが、それを包含する形でプロジェクト要求というものがある。要件というのはある意味で、顧客やエンドユーザが見えている範囲、言い換えると予期している範囲でのものである。これに対して、要求というのは漠然として見えていないケースが多い。そこをうまく抽出していくことがプロジェティスタの仕事である。これは違ういいかをすれば、「構想する」ことに他ならない。
「Requirements-Led project management」という本を書いたスザンヌ・ロバートソンはこれをDiscovering(発見)だといっている。顧客の要求というのは無から生み出すわけではなく、潜在的にはあるわけだ。その意味で、要求のマネジメントは、ニーズではなく、シーズになる要求を探し出してニーズに変え、さらには実現していくことに他ならない。
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著者紹介
好川哲人、MBA、技術士 株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
20年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「コンセプチュアル・マネジメント(無料)」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。
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