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第184回(2008.06.03)
段取りの詳細度をどう決めるか? |
◆時間単位の計画と日単位の計画
前回まで、手戻りに注目して、段取りが必要かを説明した。今回は視点を変えて、どこまで段取りをすればよいかを考えてみよう。
日米のプロジェクトマネジメントの違いを揶揄するのに、計画を立てる時間単位に言及する人が多い。日本ではプロジェクト計画は週あるいは日単位であるが、米国では時間単位で作るとかいった類の話だ。
この議論そのものはナンセンスだと思う。プロジェクトマネジメントに関するプロジェクトマネジャーとメンバー(あるいはサブリーダー)との役割分担が異なれば、比較そのものが成り立たない。米国ではメンバーのひとりひとりの作業までをプロジェクトマネジャーが管理するので、そのために時間単位の計画になる。日本ではワークショップ方式でプロジェクトを運営するので、プロジェクトレベルでは月1回の上位組織への進捗報告を考えて、月単位の計画を作り、詳細な計画はワークショップごとにメンバーが作るとすれば、流儀の問題以上の何物でもない。
◆段取りは時間単位で作らなければ意味がない
ただし、ひとつだけこの議論に理があるとすれば、上に述べたようなガバナンスの話は別にして、最終的に仕事の段取りは時間単位で作らないと意味がないということだろう。
なぜ、時間単位なのかという疑問を持たれる方もいらっしゃるだろう。これは計画を作る目的にも関係してくるのだが、仕事の段取りは「誰でもすぐに作業に取り掛かれるレベル」で取らないとほとんど意味がないといってよい。
プロジェクトで計画を作る目的の(一定の専門スキルがあれば)ひとつは誰がやっても同じような作業ができることである。もちろん、ライン作業ではないので、一挙手一投足まで同じ作業をするということにはならない。実は、多くの人が計画を作る際に悩んでいる問題はここだ。
◆成果物だけ明確にすればよい?
これに対して、もっとも手抜き派の意見は、専門スキルがあれば、成果物(プロダクトスコープ)さえ明確に決めておけば、だいたい、誰がやっても同じような作業をすることになるという意見だ。これは極めて専門性が強い場合とか、法律がある場合以外には考えにくい。PMBOK(R)でもスコープにはプロダクトスコープだけではなく、プロジェクトスコープがあることを見てもそれは分かる。
次のレベルはWBSでワークパッケージまで決めれば、おおよそ、同じような作業をするだろうという意見だ。これはある意味で正しい。上に述べたように、プロジェクトのメンバー一人ひとりの仕事まで管理するのであればこれでよい。
◆継続的パフォーマンス改善のやり方の違い
ただし、ここには大きな前提があることを忘れてはならない。それは、組織として継続的な作業のパフォーマンス改善に取り組んでいるということだ。実際に欧米の企業は、業界・業種を問わず、定期的に組織として改善プログラムを作り、継続的な改善に取り組んでいる企業が多い。
日本のプロジェクト運営がワークショップになっている意味はここにある。改善を現場が主導的に行うのだ。現場が継続的改善を行うためには、現場が段取りをできるようにする必要がある。もちろん、成果管理はする必要があるので、成果要求の割り当ては行う必要があるので、WBSで行う。
このような目的をもって、メンバーの各人が自分の作業の段取りをするということは、自分も含めて「誰でもすぐに作業に取り掛かれるレベル」まで作業手順の詳細化をするということなのだ。
◆中途半端は競争力を無くす
ちなみに、一緒に仕事をしているアメリカ人に我々の会社に作業指示はあっても、段取りという概念はないといわれたことがある。印象的だったが、なるほどとも思う。
マネジメントスタイルの議論なのでどちらでもいいと思うが、米国流をやろうと思えばプロジェクトマネジメントチーム、あるいはプロジェクト内PMOというのが必要であることは間違いない。また、統制のために個人レベルがインプットした進捗をリアルタイムで統合するツールも必要である。
そのように考えると何かちぐはぐな感じがあるのは否めない。組織としてパフォーマンスを上げるというマネジメントの部分をほったらかしにしておいて、管理だけを細かくやろうとすると、上に述べた理由でやがては競争力をなくしてしまうだろう。
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著者紹介
好川哲人、MBA、技術士 株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
20年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「コンセプチュアル・マネジメント(無料)」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。
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