第142回(2007.05.05) 
ダイバーシティにはどのようなものがあるか

戦略ノート141回で、ダイバーシティマネジメントを話題にした。

戦略ノート141回
プロジェクトにおけるダイバーシティマネジメント

ダイバーシティというのはどのようなものがあるのだろうか?今回はこれについて思うところをの述べてみたい。


◆ダイバーシティを整理する軸

多様性を整理するための軸としては本人の意思や努力では変えることが難しいものと、そうではないものがある。マネジメントの視点としてはこれが重要である

前者に該当するものとしては性別、年齢(世代)、国籍、人種、障害などをあげることができる。これらは、いわゆる差別の対象になりうるもので、ビジネスの中では少なくとも就労の機会については法律的に保証されているものが多い。ただし、それ以外の部分では多様性が受け入れられているとはいえない部分があり、はやり、マネジメントの対象になる。

これに対して、後者としては、地位、学歴、外見・容姿、収入、宗教、未婚・既婚、経験などをあげることができる。これらは、マネジメントの対象として捉える必要がある。

これらのさまざまな要素の集合体が個性である。男/女、〜国人、太っている/やせている、障害がある/ないなど、すべて、個性の構成要素である。


◆差別とは

そして、ある人を差別するというのは、ある人に対して、「この中の特定の要素ひとつだけで判断すること」、あるいは、「ひとつだけを個性として強調すること」であ
る。

例えば、この記事を読んでいるあなたが女性だったとしよう。女性というのは、あなたの個性のひとつに過ぎない。あなたには、その他にも、人種や容姿、学歴、結婚しているかどうか、子供がいるかどうかなどのさまざな個性の構成要素がある。にも関わらず、「女性という構成によってのみ」判断されたり、評価されたりしたとすれば、トータルの人間として見られていないことになる。このようなときにあなたは差別されたと感じるだろう。

逆のケースもある。本人は差別されたと感じているが、実はそうではないケースだ。上の図式でいえば、すべての構成要素を評価した結果の判断を、しばしば、特定の要素だけ見ていると感じてしまうことがある。


◆抵抗の起りやすい状況

前回述べたように、多様性に対する反応には、「抵抗」「同化」「分離」「統合」の4つがあるが、抵抗(や同化)が起りやすい状況として、ひとつの構成要素に対してステレオタイプのイメージを作り上げ、そのレッテルを貼ってしまうことがあげられる。例えば、最近、少なくなってきたが、女性に「仕事を覚えた頃には結婚して壽退社する」というステレオタイプのイメージを作り、例えば

「彼女は学業成績も高く、性格も協調的で、わが社の社風に合うのだが、女性だから〜にしよう(例:お客さん対応の仕事を任せるのはやめよう)」

というパターンだ。抵抗の多くの原因はこのようなパターンで生じていることが多い。

女性という構成要素が分かりやすいので例にあげているが、このような状況は他でも珍しくない。例えば、世代。45歳くらいのあるプロジェクトマネジャーが、プロジェクトの状況に関係なく、定時退社を繰り返す若手メンバーに対してこんなことを言
っていた。

「残業したがらないのは、最近の若いものの風潮だ。小言を言って時間を費やすより、彼は定時間内だけの工数を見て、足らない分を探してきたほうが合理的だ」

これもやっぱり、上の女性の話と本質的に同じだ。また、このような現象は、パワーの大きいものが小さいものに起こすかというとそうでもない。こんなつぶやきをよく聞く。

「プロマネのAさんに自分の意見を説明したってどうせまともに聞いてくれない。言われたとおりにやって、あとの責任はAさんに押し付けちゃえ」

これも同じパターンである。抵抗(同化)レベルのダイバーシティをマネジメントするというのは、まずはこういう問題を排除することから始めなくてはならない。


◆参考文献

上の意見をまとめるに当たって以下の図書を参考にしました。

森田ゆり「多様性トレーニングガイド」、解放出版社(2000)

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著者紹介
好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
20年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「コンセプチュアル・マネジメント(無料)」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。

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