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第122回(2006.11.14)
組織におけるプロジェクトの位置づけ |
◆組織におけるプロジェクト活動の位置づけ
第109回に
プロジェクトマネジメントの分担
という記事を書いた。その後、この記事についていろいろと反響があったので、それを踏まえて、再度、プロジェクトマネジメントのプレイヤーという点について考えてみたい。
まず、整理しておきたいのは権限委譲についてである。
プロジェクトマネジャーにプロジェクトに関する全権限を委譲しているという話はよく聞く。
しかし、ここで問題になるのは実はプロジェクトにどれだけ権限委譲しているかではない。問題は、そもそも、プロジェクト活動が組織の中でどのような位置づけになっているかだ。この議論は多くの組織で曖昧なままになっている。ここが曖昧になっている限り、権限委譲という言葉そのものが意味のない言葉になるし、「プロジェクトに全権限を渡している」といった言い草は「自衛隊が活動しているところが非戦闘地域である」といったレトリックに等しい(まあ、この2つは本質的に日本人の特性を象徴する本質的に同じ発言だろうなとは思う)。
◆PMI(R)の見解
権限、すなわち、プロジェクトの組織ガバナンスの中での位置づけに関する一般的な認識はPMI(R)(米国PM協会)がプログラムマネジメントの標準の際に示したそれだろう。
第108回 スーパーPMは必要か
に示しているので、ぜひ、確認してほしい。一般的な組織では戦略計画の実行にオペレーションのマネジメント(平たく言えば業務管理)とプロジェクトマネジメント(プロジェクトの管理)の二本立てで実行する。
◆オペレーションとプロジェクト
ここで、プロジェクトと称して行われているさまざまな活動がどちらに含まれているかが問題である。以前からあるマトリクス型組織でのプロジェクトマネジメントにおけるコンフリクトの発生もこの問題から派生する一つの問題であるが(リソースの問題)、もっとこの問題は根深い。
メーカを例にとって考えてみよう。生産活動の統制というのは、例外なく、オペレーションのマネジメントとして行われる。企画や設計はどうか?実は、このあたりは結構微妙である。企画はある時点まではオペレーションとして統制され、どこかのタイミング(例えば費用が発生するタイミング)からプロジェクトとして統制されるケースが多い。設計は少し大きな商品であればそれなりのマンパワーが必要になるし、プロジェクトとして位置づけられることが多いが、チーム自体は、マトリクス組織になることが多く、リソースの問題になる。
SIについて考えてみよう。コーディングというのは本来オペレーションとして管理した方が効率がよいにも関わらず、プロジェクトとして扱われることが少なくない。設計(基本設計、詳細設計)はプロジェクトとして管理される。問題は営業活動で、営業活動はほとんどオペレーションとして管理されている。それは組織のマネジメントとして妥当だと思われるが、プロジェクトが開始されてもずっと営業は営業としてオペレーションとして統制され続けるケースが多い。
◆プロジェクトに関する全権限とは?
このようにプロジェクトだといわれているものも、管理はオペレーションとして管理されている部分とプロジェクトとして管理されている部分が混在しているのが普通である。
この状況で、「プロジェクトに関する全権限」というのはいうまでもなく、PMI(R)の図でいう右半分の仕事についてはすべての権限を与えているという意味に過ぎない。これは狭義のプロジェクトである。広い意味でのプロジェクトについて全権限を与えているわけではない。ここに錯覚がある。よくプロジェクトマネジャーに人事権がないのは問題だといったことをいうプロジェクトマネジャーがいるが、人事権というのはオペレーションのマネジメント領域の話であるので、組織側からすれば、当然、そんなものはプロジェクトには与えないということになる。
ここで、注目すべき存在が、プロジェクトスポンサーなのだ。
(次回に続く)
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著者紹介
好川哲人、MBA、技術士 株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
20年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「コンセプチュアル・マネジメント(無料)」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。
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