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第123回(2006.11.21)
プロジェクトマネジメントはバイクの2人乗り |
◆2人乗りモデル
前回、プロジェクトマネジャーの権限の話をした。そして、権限を考える場合に、注目すべき存在がプロジェクトスポンサーであることをのべた。プロジェクトスポンサーがプロジェクトマネジメントにおいてどのような役割を果たすかは、第110回〜111回にかけて述べている。
第110回 プロジェクトスポンサーの仕事
第111回続・プロジェクトスポンサーの仕事
プロジェクトマネジメントのメインプレイヤーがプロジェクトマネジャーであることは間違いないが、ビジネスプロジェクトにおいては、プロジェクトの成否の鍵を握るのはシニアスポンサーであることが少なくない。
PMstyleではプロジェクトマネジャーの人材モデルに自転車モデルを使っている。
後輪:ハードスキル
前輪:ソフトスキル
運転者:コンピテンシー
というモデルだが、プロジェクトマネジメントのモデルというのもあって、それは、ロジェクトマネジャーとプロジェクトスポンサーの「バイク2人乗りモデル」である。いくら性能の良いバイクでも、2人で乗っているときに、後部座席に座っている人が運転している人と逆の方向に身体を倒していたのでは、曲がりくねった道を早く安全に走ることはできない。
◆始めたときに失敗が見えているプロジェクトの責任
よくプロジェクトを任されたときには、もう、失敗が見えているという状況がある。典型的なのはSIプロジェクトで、受注金額に無理がある場合だ。
プロジェクトマネジメントがいくらチャレンジ目標を達成するためにあるといっても当然限界がある。
そう考えると、すでに、入札金額を決める段階でプロジェクトマネジメントは始まっていると考えるべきである。では、誰がそのプロジェクトマネジメントをすべきかというと、受注した暁にはシニアスポンサーになる立場の人である。
ところが現実的にはそのような意識では取り組まない。110回に書いたことだが、シニアスポンサーは組織の中では組織マネジャーであることが多い。すると、プロジェクトスポンサーより組織マネジャーの立場が優先するのはある意味で仕方がない部分である。
そのような立場をとり、組織マネジメントの一環としてプロジェクトマネジメントの導入・確立をすると、当然、プロジェクトマネジャーがすべてであり、何とかしてプロジェクトマネジャーを育てなくてはならないといいたくなるわけだ。
もちろん、これはある意味で正しい。上に述べたようにプロジェクトマネジメントのメインプレイヤーはプロジェクトマネジャーであるので、プロジェクトマネジャーがスキルフルであるというのはプロジェクトの成功のために必要条件である。しかし、プロジェクトマネジャーをいくら鍛えたところで、「無理難題」を解決することはできない。少なくとも、プロジェクトマネジャーの育成とともに、プロジェクトスポンサーの育成に取り組んでいく必要があるのだ。
◆プロジェクトスポンサーとプロジェクトマネジャーの役割は補完的
当たり前の話だが、プロジェクトスポンサーが変われば、プロジェクトマネジャーも変わってくる。理想を言えば、プロジェクトマネジャーは余計なことを一切考えずに、ひたすら、プロジェクトに与えられた課題の解決に没頭できることが望ましい。例えば、プロジェクトに要求される成果(課題)の明確化まで目配りしなくてならないプロジェクトマネジメントというのは、それができるプロジェクトマネジャーの能力は素晴らしいが、プロジェクトマネジメントとして決して望ましいものではない。望ましい姿は、シニアスポンサーが課題を明確にして渡し、プロジェクトマネジャーはその課題をプロジェクトで解決すれば、それが組織の成果になっていくというものだ。
前回から述べているように、現在は権限はシニアスポンサーにより明確化された課題を解決するために必要がものが与えられ、要求(義務)は明確とはいえない課題、あるいはプロジェクトの中だけでは解決の可能性の低い課題を解決することだと考えられているケースが多い。このような権限と義務のアンバランスは、立場の使い分けから起こっている。例えば、ラインマネジャーとスポンサーの立場を使い分ける。例えば、課題を与えるときにはラインマネジャーとして思いっきり難しい課題を与え、レビューのときにはプロジェクトスポンサーとしてプロジェクトマネジメントに影響を与えるような発言をする。こんなことをやっていたのでは、プロジェクトの成功はおぼつかない。
プロジェクトスポンサーはプロジェクトスポンサーの立場を全うすることが肝要である。
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著者紹介
好川哲人、MBA、技術士 株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
20年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「コンセプチュアル・マネジメント(無料)」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。
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