第113回(2006.08.22) 
プロジェクトマネジメントチームを活かすマネジメント計画

◆はじめに
前回まで、プロジェクトマネジメントの今後の動向について考察した。その中で、結局、これからは、プロジェクトマネジメントからプログラムマネジメントに行くだろうという見解を述べた。

プロジェクトからプログラムへ


◆プロジェクトマネジメントガバナンスはPMOの役割

これまで述べてきた組織が全面的に支援するプロジェクトマネジメントを行うためには、プロジェクトマネジメントガバナンス、つまり、プロジェクトマネジメント上の責任のコントロールを行うことのできる第三者的な立場でプロジェクトマネジメントに関わる人が不可欠である。

一般的に、ラインマネジャーがプロジェクトを起こして、プロジェクトスポンサーの役割を果たし、そこに部下のプロジェクトマネジャーを配置する場合には、ラインマネジャーとしてガバナンスのマネジメントに当たるケースが多いが、これは必ずしも望ましくない。ラインマネジャーはプロジェクトマネジャーに対して権限委譲をしている。しかし、ラインマネジャーがガバナンスのコントロールをするようになると、委譲した権限の範囲が便宜的になり、プロジェクトマネジャーが動けなくなるからだ。

もう一つの可能性として、プロジェクトスポンサーがガバナンスのマネジメントをするというやり方も考えられる。スポンサーがラインマネジメントと別の際にはこの形態でよいと思われるが、同じ場合には、やはり、立場の使い分けということになり、本人もプロジェクトマネジャーもステークホルダもやりにくくなることは否めない。

そのように考えていくと、やはり、第三者がガバナンスをマネジメントすることが望ましい。とすれば、それができるのはプロジェクトマネジメントオフィス以外にはない。

そこで、プロジェクトマネジメントがこれからどうなるかの話題の最後はプロジェクトマネジメントオフィス(PMO)の役割について考えてみたい。


◆プロジェクトマネジメントチーム

その前に、ちょっと整理しておきたいことがある。それは、プロジェクトマネジメントチームという存在である。これは一体何をする存在なのか?

PMBOKでは、

プロジェクトチームのメンバーのうち、プロジェクトマネジメント活動に直接関与している要員

をプロジェクトマネジメントチームと定義されている。加えて、小さなプロジェクトだと、プロジェクトマネジメントチームは実質的にプロジェクトチームになるとも説明されている。


◆プロジェクト内PMO

ご承知の通り、SI業界においては、数十億といった規模のSIプロジェクトに取り組む際には、PMOという名称のプロジェクトマネジメントチームを設置するというのが一般的になっている。イメージ的には、プロジェクトオフィスとしてマネジメント事務をやっているようなケースもあれば、要員調達や品質管理などのプロジェクトマネジメントワークの一部を担当しているようなケースもある。さらに、客先に常駐のプロジェクトの場合、顧客との常設窓口として顧客との調整を一手に引き受けているようなケースもある。要するに、プロジェクトの事情によって機能はさまざまだが、一つだけ確実にいえることは、プロジェクトマネジャーに仕事の一部を肩代わりしていることである。

また、PMOにプロジェクトマネジャーの代行的な人を複数おいて、プロジェクトマネジメントそのものを分担しているケースもあるようだ。このようなケースをどう見るかは微妙だが、実態的にはプログラムマネジャーが一人いて、その下のプロジェクトのプロジェクトマネジャーが数名おり、その人たちを中心にプロジェクトマネジメントチームが構成されていると見るのが自然だろう。


◆マネジメントアクティビティの明確化がポイント

いずれにしても、このようなプロジェクト内PMOをきちんと機能させようと思えば、大切なことはプロジェクトマネジメントのアクティビティを明確にすることにある。

日本では、比較的SI企業がプロジェクトマネジメントが進んでいるといわれているが、そのSI企業の中でもWBSの中にプロジェクトマネジメントのアクティビティを明確に入れることを決めている企業というのはないのではないかと思う。

この話をすると、プロジェクトマネジャーの仕事はアクティビティを定義できるような計画的なものではないという反論にあう。これは本当に正しいのか?

組織によって多少の差はあるが、少なくとも、だから、プロジェクトマネジメントは無計画でよいというは間違いだ。

プロジェクトマネジメントは、まず、WBSも含めてスコープマネジメント計画書、コストマネジメント計画書、などのプロジェクトマネジメント計画書を書くところから始まる。ここでしっかりとプロジェクトマネジメントの戦略を練り、アクティビティを考えるべきである。

実はここがないところに、プロジェクトマネジャーに丸投げしなくてはならない原因があり、また、組織一体のプロジェクトマネジメントができない理由がある。

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著者紹介
好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
20年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「コンセプチュアル・マネジメント(無料)」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。

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