第112回(2006.08.15) 
プロジェクトマネジメントはどこに向かうのか(その6)〜プロジェクトからプログラムへ

◆はじめに

前回、前々回とプロジェクトマネジメントにおける「プロジェクトスポンサー」の役割について述べた。

スポンサーの仕事

続・スポンサーの仕事

お気づきの方も多いかと思うが、この中の多くの仕事は一般的にプロジェクトマネジメントの成功のポイントだといわれていると同時に、現状分析をした場合によく問題点になるポイントでもある。一つだけ例を上げてみよう。計画プロセスにおけるプロジェクトスポンサーの仕事の中に

 計画変更時の対応について、協力範囲を明確し、方法の策定について指導する

という仕事があるが、これを行っているプロジェクトスポンサーは多くない。しかし、一方で、変更計画はプロジェクトマネジメント成功のための最重要事項の一つであると認識されている。このようなギャップがプロジェクトマネジャーとのコラボレーションの部分でいたるところにあるのだ。


◆スポンサーの仕事はプロジェクトマネジメント成功のポイントになっている

もう一度、立ち上げから終結まですべての項目を見直してみてほしい。実は立ち上げから計画に関わること、および、組織マネジメントに関わることについては比較的きちんと実行しているプロジェクトスポンサーが多い。つまり、立ち上げで協力(指導)をして、その後は自身の所掌事項である組織マネジメントを除いて放置するというプロジェクトスポンサーが多いのだ(プロジェクトスポンサーがラインマネジャーの場合)。

No.109で述べたように、これからのプロジェクトマネジメントの枠組みのポイントの一つはプロジェクトスポンサーの活躍である。このときに考えなくてはならないことは、その組織で実施する他のプロジェクトとの関係である。他のプロジェクトとの関係は2つの側面で生じる。

一つは組織によるプロジェクトの優先順位付けである。優先順位の根拠は戦略課題におけるプロジェクトの評価であることが多い。例えば、向こう3年間にシェアを倍にすることを戦略課題と設定したとしよう。すると、既存商品の改良版の開発プロジェクト(シェアの維持)と新商品の開発プロジェクト(新規顧客の開拓)の優先順位は新商品の方が高い。しかし、戦略課題が収益性の増大であれば、既存商品の改良版プロジェクトの方が優先順位が高くなるだろう。

もう一つは優先順位に関係するが、リソースの配分である。当然、プロジェクトの優先順位の高いプロジェクトに優先的にリソースが割り振られるが、絶対的にリソース(特に人的資源)が足らないケースが多い。その中では、リソースの取り合いより、むしろ、如何に有効に活用するかが問題になる。そのような意味で、調整を行い、すべてのプロジェクトが満足できるようなリソース活用を図っていく必要がある。


◆プログラムマネジメントを取り入れ、広い視野でプロジェクトの対応する

このようなマネジメントの枠組みとして、プログラムマネジメントという枠組みがある。プログラムマネジメントは目的は組織としてのベネフィットの最大化であるが、PMIの標準などを見てみると、相当にテクニカルな手法である。これについては、金曜版で新しい連載を開始しているので、そちらで詳細に説明していく。

 マルチプロジェクト戦略ノート
  

ここでは、、イメージを掴んでもらうために、プログラムライフサイクルと呼ばれるものを紹介していく。

これは、プロジェクトに対するプロジェクトマネジメントサイクル(立ち上げ→計画→実行→コントロール→終結)に相当するものであり、プログラムマネジメントでは、

(1)プレプログラム設定
 プログラムの検討を行う
(2)プログラムの設定
 プログラムを計画する
(3)プログラムマネジメントのメソドロジーの確立
 プログラムマネジメントの方法を決める
(4)利益増大の実現
 プログラム全体での利益を増大する
(5)終結
 プログラムを終える

という5つのフェーズからなるが、プロジェクトマネジメントプロセスと異なる点は、各プロセスの後にはゲートが置かれており、次のフェーズに進むには、ゲートに設定された条件をクリアする必要がある点だ。これは、プログラムでは(中間)成果物が見えにくいための対処である。

また、プログラムガバナンスマネジメントと呼ばれるプログラムの推進者を状況によってコントロールしていくプロセスによりプログラム全体を見ていくようなプロセスになっている。

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   1.プログラムマネジメントとは
   2.戦略サイクルとプログラムデザイン
   3.ベネフィットのマネジメント
   4.ステークホルダーマネジメント
   5.プログラムにおけるプロジェクト間の調整
    ・プロジェクト間のコンフリクトの調整
    ・スケジュール管理とリソース管理
    ・リスク管理
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著者紹介
好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
20年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「コンセプチュアル・マネジメント(無料)」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。

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