第4回(2006.12.15)
プログラムの構成は不変か?〜不確実性の観点から
 

◆前回の復習

前回説明したように、プログラムは複数のプロジェクトから構成される所定の目的を持った活動である。この際に問題になるのは、プログラムの構成の確からしさである。

前回述べた例のように、「顧客満足の向上」という目的を設定したとしよう。このときに、


 ・顧客満足度測定プロセスの導入
 ・顧客トレードオフ調停プロセスの導入
 ・顧客満足度の継続的改善委員会の設置

という3つのプロジェクトを実施することにした。問題はこの3つのプロジェクトで、どれだけプログラムの目標が達成できるかである。

PMIでは、プログラムとポートフォリオの違いを

 プログラム=正しく仕事をすること
 ポートフォリオ=正しい仕事をすること

だとしている。この定義でいけば、プログラムにどのようなプロジェクトを含めるかはポートフォリオの問題になる。


◆プログラムにも不確実性がある。

ただし、不確実性がなければである。プログラムには2種類あると考えることができる。一つは目標の達成手段が明確であるが、時間の問題やリソースの問題で、プログラムとして扱っているケースである。例えば、企業統合に伴う情報システムの移行はプログラムとして行うケースが多い。つまり、数十から数百のシステムを移行するのに、一つ一つやっていては間に合わないので、各システムの移行をプロジェクトとするプログラムを構成し、プログラムマネジメントを行いながら同時並行的に進めていくのだ。このようなケースではすべてのプログラムを粛々と実施すればプログラムの目標は間違いなく達成できる。

しかし、上に述べたような場合には、計画段階では、それだけのプロジェクトを実施できればプログラムの目的は達成できると考えていたとしても、実際にやってみないともくろみどおりの成果が生まれるかどうかわからない部分がある。このようなゴールへの到着の見えにくい不確実な課題に対して、プログラムとして進めていくいくことによって何とか目的達成をするのもプログラムマネジメントの適用である。

これはプロジェクトマネジメントでいえば、ローリングウェーブ計画に近い考え方である。プログラムの計画をローリングさせていきながら、目標を達成していくという考え方になる。


◆正しく仕事をするというのはどういうことか

現実的な問題を考えてみるとプログラムというのは後者のような適用方法の方が重要である。PMIによると、プログラムの達成目標(スコープ)は「複数の成果物を含む広範なスコープ。組織の期待する利益をもたらすために変わることがある」と定義されている。この定義を見る限り、PMIもプログラムを後者のようなものとして捉えていることが分かる。

その中で、正しく仕事をするというのはどういう意味か。結構、難解な問題であるが、少なくとも、決められたプロジェクトをきちんとやり遂げるという「だけ」の意味ではないだろう。プログラムの目標をきっちりと実現することだ。このためには、プログラムに含まれているプロジェクトのスコープ変更、差し替え、中止、新規追加などを行うことが必要になる。

違う言い方をすると、「正しく仕事をする」というのは、プログラムという「戦略実行計画」をローリングしていきながら目標を達成することに他ならない。ただし、ローリングは戦略上の変更ではない。プログラムの目的(目標)は戦略目標から設定される。それ自体は変わらない。ポートフォリオとは戦略目標から正しいプログラムの目標を導き出すことである。これについては、まだ、議論をしてみたい。

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