第2回(2006.07.21)
プロジェクトのタイプ
 

◆はじめに

前回は、複数のプロジェクトを扱わなくてはならない場合の扱い方のタイプを示し、ジャグリングという考え方について述べた。日本語で「手玉に取る」というとあまりよい意味にはならないが、プロジェクトジャグリングとは複数のプロジェクトを手玉のようにスムーズに扱っていこうという話である。

具体的な方法は、プログラムマネジメントやポートフォリオマネジメントになるが、その議論に入る前に、前回の話の続きで、プロジェクトの種類について考えてみたい。


◆2種類のプロジェクト

プロジェクトのカテゴリー分類はいろいろな方法がある。プロジェクトレビューをする場合、標準化をする場合、プロジェクトマネジャーのアサインを決める場合など、分類の目的によっていくつもの見方ができるからだ。

ここでは、事業として行うプロジェクトと、事業手段として行うプロジェクトの2つに分けて考えてみたい。プロジェクトマネジメントのあり方を根本的に変えるのはこのわけ方ではないかと思うからだ。前者の代表はSIプロジェクトであり、後者の代表はいろいろな商品を開発するプロジェクトである。

SIプロジェクトはひとつひとつのプロジェクトが事業そのものである。そのプロジェクトでどれだけの利益が出せるかが事業収益になるし、どれだけの数のプロジェクトを受注できるかでその企業の事業規模が決まり、さらには雇用できる従業員に数も決まる。つまりは、企業の規模がプロジェクトで決まる。従って、SIプロジェクトはプロジェクトマネジメントが最重要課題になるし、プロジェクトマネジメントによって事業の成否が決まることになる。

ところが商品開発プロジェクトの位置づけはそう単純ではない。商品開発プロジェクトを行うことが事業のすべてではない。事業には戦略策定も必要だし、マーケティングも必要だし、技術開発も必要である。ブランド構築も必要だ。そして生産が必要だし、販路や販売方法の開発も必要である。このような事業活動の一部として、商品開発プロジェクトが行われている。


◆プロジェクトマネジメントの経営的位置づけ

この違いはプロジェクトマネジメントの枠組みからみれば一見なんでもない違いのように見える。プロジェクトマネジメントライフサイクルが変わるわけではないし、マネジメントプロセスが変わるわけでもない。

ところが事業の視点からみれば相当違う。SIでは、プロジェクトで顧客と約束したことを実現するしか、事業を成功させる方法はない。商品開発の場合も商品が事業の大半を担っているので重要であることに違いはないが、それだけでは成功しない。事業戦略や商品戦略は別の次元の話だとしても、マーケティングが適切に実施されていないと、いくら品質のよい商品を作っても売れない。いくら魅力的な商品を作っても顧客に届ける方法がなければ売れない。

開発プロジェクトから見たときに、これらの条件はビジネス上の前提条件になっている。つまり、前提条件が変わる可能性があるのが、商品開発プロジェクトである。これに対して、SIプロジェクトでビジネス上の前提条件が変わることは珍しい。この違いが本質的な違いである。

これをマネジメントとして体系的に扱おうとすれば、前提条件の変わる商品開発プロジェクトはプログラムとして扱う方が扱いやすい。これは事業手段として実施しているプロジェクトには全般的に言える。

これに対して、SIなど、事業としてプロジェクトを行っている場合はプロジェクトとして如何に目標を達成するかが一番の問題になる。ただし、そうではないケースがある。特定のクライアントに対して「戦略的受注」を行うケースである。この場合には、プロジェクト実行中にビジネス上の前提条件が変化する可能性があり、プログラムとして扱う方が適当であるケースが多い。

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