第1回(2006.06.30)
プロジェクト・プログラム・ポートフォリオ
 

いきなりであるが、「ジャグリング」をご存知だろうか?マジシャンがつかみでよくやる、いくつかのボールを順に投げたり受けたりしていくあの技である。日本古来の遊びでいえば、お手玉だ。

手玉にとるのは、ボールはもちろんだが、クラブ、シガーボックス、リング、ナイフ、トーチ、デビル・スティック、プレート、カップなど、多種多様である。なかには、ディアボロのように、道具(スティック)を使って行うジャグリングもある。

複数のプロジェクトをうまくコントロールするというのもこのジャグリングに似ている。すべてのプロジェクトをずっとつかんでいることはできない。掴んだり、放したりを繰り返しながらすべてのプロジェクトをうまくまわしていく。このようなプロジェクトマネジメントはマルチプロジェクトマネジメントと呼ばれることがある。ここで複数のプロジェクトの関係には、いくつかのパターンに分かれる。

パターン1:一つの目的を達成するために必要な複数のプロジェクト
パターン2:緩やかな関係のある複数のプロジェクト
パターン3:技術的な関連のある複数のプロジェクト

の3つだと思われる。

パターン1は分かりやすく、今、もっとも多いパターンだと思う。一つの目的(目標)に対して、その目的が一つのプロジェクトだけでは実現できない場合に、複数のプロジェクトを並列に実行することによって目的を達成するケースだ。このようなタイプの複数のプロジェクトのマネジメントはプログラムマネジメントと呼ばれる。

一つ例を考えてみよう。この商品カテゴリーで業界シェア1位になるという目標のプロジェクトを実施する。このときに、一つの商品の投入で達成できそうであればよいのだが、できないとなるといろいろな手を打つ必要がある。

例えば、複数の商品を開発・投入し、トータルでシェア1位を狙うという手を考える。このために、複数の商品開発プロジェクトを走らせ、相互の関係を考えながら各プロジェクトのスコープ、スケジュール、リソースなどを調整をしていくことになる。

もう一つの例として、いくつかの商品投入と同時に販路の強化と、ブランドイメージの構築を行う。このようなケースでは、同じ目的を設定した異なるタイプのプロジェクトの間で調整を行い、全体として目的の達成しなくてはならない。相当、難しいジャグリングが要求される。

パターン2はもう少し上位レベルの目的を設定する場合である。例えば、事業を成功させるとかいった目的である。シェアで1位を取るという目標と、事業を成功させるという目標を較べてみると、事業を構成させる方がはるかに自由度が高い。経営資源が無制限にあるような企業はないので、自由度が大きいということは、逆にいうと、捨てるものを考える必要があるということだ。いわゆる戦略的な発想が必要になる。このパターンの複数のプロジェクトをマネジメントする代表的な手法はポートフォリオマネジメントである。

パターン3はちょっと特殊な関係である。事業レベルでの関係がない複数のプロジェクトを調整しなくてはならないケースは珍しく、そのような必要性が生じるのは、複数のプロジェクトに技術的な関係がでてくるケースである。

例として挙げられるのは自動車メーカの開発プロジェクトである。原価低減のために、プラットホームの共通化、部品の共通化を図る。すると、事業としては異なる事業部の所掌する新車開発プロジェクトの間で、技術的連携を取りながら進めていく必要が出てくる。プラットホームをベースにして展開するようなビジネスにおけるプロジェクトでは、このようなケースもある。

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