第4回(2006.05.12)
コンフリクト・マネジメント
プロジェクトマネジメントオフィス 鈴木道代 
 

今回は、「PMBOKのツールと技法を極める」シリーズの4回目として、人的資源知識エリアの「プロジェクト・チームのマネジメント」プロセスのツールと技法であるコンフリクト・マネジメントを取り上げることにします。

◆コンフリクト・マネジメント
人的資源知識エリアの監視コントロール・プロセス群の唯一のプロセスである「プロジェクト・チームのマネジメント」では、プロジェクトのパフォーマンスを向上させるために、チームメンバーのパフォーマンスを追跡し、フィードバックを行い、課題を解決し、変更を調整します。そのためのツールと技法として、

・観察と対話
・プロジェクトのパフォーマンス評価
・コンフリクト・マネジメント
・課題ログ

がありますが、それでは、コンフリクト・マネジメントを行うことで、どのようにパフォーマンスが向上するのでしょうか?

コンフリクトとは、葛藤とか対立・摩擦という意味であり、プロジェクトでは、資源不足・スケジュールの優先順位・個人の作業スタイルなどから発生することが多いようです。コンフリクトは誰かが解決しようと思わない限り、大きくなっていき、収集がつかない状態になっていきます。また、チームの行動規範、グループの規範によって、コンフリクトが減少するとも言われていますが、コンフリクトは全くの悪者でもありません。

コンフリクトを適切にマネジメントすることで、多様な意見の存在を認め、それらを忌憚なく言うことができるからです(コンフリクトの発生)。そして、コンフリクトを話し合いで解決する(コンフリクトの解消)ことで、相互理解を深め、協調的な関係を築き、互いの信頼感を高めることができるからです。

コンフリクトを解消するためには、コンフリクトの中で共有化できることを探し、相互理解を深め、そして互いに協調関係を結べるような解決策を探します。そのためには、コンフリクト・マネジメントの基本的な考え方とミーティングにおける実践的なテクニックが必要です。実践的なテクニックとは、ミーティングをスムーズに進めるために、論点の欠けている点に気づかせるような発言をするなどのファシリテーションと呼ばれている行為のことです。このことにより、互いの論点のずれをなくすことができます。

コンフリクトを解消するためには、互いに妥協して我慢するか、問題を棚上げするなどの方法がありますが、最も望ましいのは、互いに協力して問題解決を行うウィン・ウィン・アプローチであり、その手順は次の通りです。

1.一致点と相違点を区分けする
  互いの許容範囲の重なる部分を見つけて共有する。
  互いの理解が重要であり、これがスタートラインになります。

2.対立の原因を明らかにする
  論点を明らかにし、論点がずれていないか、目的に合致しているかどうかを明確にします。
  そして、それでも対立している原因を見つけます。

3.3Pを考える
  対立の原因を次の観点から話し合う。
   より高い目的から見る(Purpose)
   より広い視点から見る(Perspective)
   第三者の立場から見る(Position)

4.ウィン・ウィン・アプローチ
  対立の原因を3つの方法で解消できるかどうかを話し合う。
   互いの真の目的は何かを突き止め、創造によって解消できないか
   互いの目的を満たすために、交換によって解消できないか
   互いが歩み寄り、分配によって解消できないか

この流れで、コンフリクトを解消していきますが、プロジェクトマネージャーは、当然のことながら、この話し合いでファシリテーションを行い、それぞれのステップで欠けている論点を補ってあげる必要があります。

また、その話し合いの際に有効なツールとして、
・トレードオフマトリクス
 コンフリクトを洗い出し、トレードオフに対して優先順位をつけていく表
Tチャート
 T型の線を引き、最上段に二つの標題を書くスペースを取り、アイデアを二つの欄に
分けて整理していく表

などがあります。

次回は、人的資源知識エリアの「人的資源計画」プロセスのツールと技法であるOBSです。

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PMBOKは、米国PMIの商標(R)です。

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