第12回(2003.11.30) 
Tチャート
 

 プロジェクトでトラブルに遭遇したときに、傍から見ていると意外なくらいに周りが見えなくなることが多い。つまり、目の前に起こっている問題しか、問題と映らず、解決策もひたすらその問題を解決することに集中する。第三者的にそのような状況はよくないというのは簡単だが、当事者でなくてはわからない部分があるのも事実だ。

 このような状況に陥ることを避けようとすれば、普段から、問題発見と問題解決の思考回路を作り上げておく必要がある。その際のポイントは3つある。ひとつは考える深さをコントロールする回路を作ることである。二つ目は、考える幅を広げることである。これらは、主に論理的思考の領域である。

ロジックツリーで原因を分析し,対策を立案する

 三つ目は複眼的に問題や解決策を評価することである。複眼的な思考の代表的なものはシステム思考である。

システム思考で複雑な問題に対処する


ただし、システム思考は本質的にモデリングの手法であり、かなりの経験をつまないと適切に使うことは難しい。そこで、もう少し、簡単に複眼思考を行うツールとして紹介したいのが、今回のTチャートである。

 Tチャートはそんなに複雑なものではない。T型の線を引き、最上段に二つの標題を書くスペースを取り、アイデアを二つの欄に分けて整理する。たとえば、顧客から、仕様追加の要求があったとしよう。すると、

          仕様追加する       仕様追加しない
顧客の満足
スケジュール
品質
コスト
リスク

というようなフレームを作る。縦の項目は、この状況で議論すべきポイントである。そして、このフレームにどんどん、アイディアを入れていく。すると、
仕様追加しない  仕様追加する
顧客の満足 満足しない 当面、満足する
再度、変心する可能性も 再度、変心する可能性も
スケジュール 予定通り 現在の納期では不可能
遅れる可能性もある 顧客は遅れてもよいといっている
Aさんは次にプロジェクトがある
品質 問題ない 機能品質は向上する
機能品質で顧客の満足水準 潜在バグが増加する可能性がある
機能品質は向上する
コスト 問題なし コストは計画をオーバーする
増額は期待できない
リスク 開発が中止になる可能性 スケジュール、コストとも顧客の
予想より大幅にオーバーする可能性


といったようなテーブルを作ることができる。これを見ながら、バランス感のある意思決定をしようというのがTチャートである。


◆参考文献

フラン・リース「ファリテーター型リーダーの時代」、プレジデント社(2002)
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