プロジェクトコントロールではQDC(品質、デリバリー≒タイム、コスト)さらにS(セーフティーand/orセキュリティー)
、場合によってはO(組織≒担当者)のトレードオフを上手く行うことが大切であるが、このためにはこれに必要な情報がどこかに纏まっている
と好都合である。その場所とはWE(Work Element)およびWPWork Package)である。前稿まででPPM(Project
Performance Management) の中核となるWBSについて、その種類、用途、その構造を、またその中に蓄えられる情報は凡そこんなものと言うところまで説明した。
本稿でここに蓄えられるデータが如何にして連携し、マネジメントに有効な情報となるか、そのロジックを解説する。
【WBS/WPの役割】
図−1は本シリーズ「PPMその3」で紹介したプロジェクトのパフォーマンスマネジメントシステム(PPMS)である。
「PPMその3」では本シリーズのストーリ組立の都合で図の概要を紹介するに止めたが、ここで詳細を説明する。
WBS/WPはプロジェクトマネジメントの要で、プロジェクト全体を統率するために2つの大きな役割がある。これで決まったことは当然のことながら図(≒プロジェクト)の各処にその影響が及ぶ。
WBS/WPはどのような時点でどのような形で現れてくるか! まずは図中でWBSとWPが有る場所を確認するところから始める。
@でプロジェクトの作業を分解してWBSの構造を決める。“構造を決める”とはWEを決めることで、プロジェクトで為す仕事をマネージするのに自分(≒管理担当者)に都合が良い塊に分解しパッケージ(小包)にすることである。当然のことながらそれぞれの包みには“処そこの仕事”と、その使い道が判るように名札が付いている。即ち1つ目の役割はそれぞれの小包に宛名と所番地をつけることである。担当する現場監督(≒管理担当者)名を付記しておくのも重要なことである。
これらの包みにはどれにも仕事が入っている。その仕事が済んだら完成物ができることになっているが、付けられている名札だけでは何ができてくるか厳密には判らない。その仕事をするためには資源なども必要な筈である。
そこでWBS/WPの2つ目の役割はその中味を明確にすることである。中味とはその仕事の内容、仕事に要する資機人材、仕事を実施する上での入力条件、制約条件、仕事をした結果の成果物などである。これがワークパッケージ(WP)である。WPは予め中身がはっきりしているのが基本であるが、中にはまだ曖昧模糊としたものやどうも危なさそうなこと(リスク)を含んだものもある。
【WE/WPを介したマネジメント要素の協働】
ではWBS/WPと他のマネジメント要素がどのように絡み合ってパフォーマンスマネジメントのための情報となるか、絡み合った仕組みからどのような情報が得られるかを考えて見よう。まず図をじっくり見て頂きたい。図の上部にはパフォーマンス管理のコア要素としてWBS(作業スコープ)とOBS(組織)、CBS(コスト・資源)などのマネジメント要素が出てくる。下半分にはスケジュール、出来測定(アーンドバリュー)との関係も示している。
これらの要素は個々に使っても統合管理の目的を果たすことができない。図のように組み合わせて使えば、プロジェクトの進捗状態を統合的に正確に捉えることが出来る。その協働のし方を以下に説明する。併せて関連する管理コードも【】で付記する。下記の@〜Dは図の番号に対応する。
@ |
前術の繰り返しになるが、プロジェクトWBSの上位階層を決める。下位階層は管理単位の重要度を勘案しながら、一通りの管理階層を整える。
これで仮のWPが決まる。【WBSコード、WPコード】 |
A |
WPに対し遂行資源とコスト予算を割り当てる。【CBSコード】 |
B |
同時に、WPの管理担当者を任命する。【WPコード、OBSコード】 |
ここまでが管理コードの相互関係である。この統合化された仕組みの基でスケジュールや成果測定が関連付けられ、且つ管理担当者の能力なども絡みながら、最終的に統合的パフォーマンスマネジメントに繋がって行く。
C |
WPに含まれる作業を細項目(アクティビティー)に展開してスケジュールを作る。或いは別途作成したスケジュールとWPを関連付ける。
【WPコード、アクティビティー番号】
この際、WPは1つ以上のアクティビティーを含むこと、及びアクティビティーは複数のWPに跨らないことが必須条件である。
【WPコード、アクティビティー番号】 |
D |
上記@〜Cでプロジェクトコントロールベースラインが出来上がる。これを使って出来高を測定し、各WE/WP毎にCPI,SPIを求め、プロジェクトの進捗状況、即ちパフォーマンスの良し悪し、変動状況(改善/悪化の傾向把握)を判断する。
注:本シリーズの解説はここで第1稿「PPMその1」の“くねくね線”に繋がる。 |
E |
上記BとCを設定するに当ってWPのサイズが小さすぎる、或いは過大である時は、パフォーマンスマネジメントの難易の妥当性を考慮(即ちWPの管理担当者の能力を勘案)してWPのサイズを調整する。 |
F |
確定したWP或いは個々のアクティビティーに対し作業進捗勘定の算定方式を割り付ける(この要領は別の機会に解説)。これで得られる情報がパフォーマンスの評価及び対策検討に活用される。 |
WPの中で上記の関係が出来上がっていればWP毎にQDCSのトレードオフができる。即ちここが統合マネジメントのための一次コントロールセンターである。更にこれらの進捗データをWBSの階層に従って足し上げればそれぞれのWEでQDCSのトレードオフができる。WBSの各階層でのるこの権限はそのパッケージの管理担当者に与えられている(≒冒頭に述べた小包の名札に書かれた現場監督)が、これを有効に活用できるか否かは一義的には管理担当者の知恵と能力に拠る。
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