第1回(2005.12.23) 「プロジェクト パフォーマンス マネジメント」 その1
プロジェクト パフォーマンス マネジメントとは何か
城戸 俊二
 kido@dem.co.jp
(有)デム研究所 http://www.dem.co.jp


今回より「プロジェクト パフォーマンス マネジメント(以下本稿ではPPMと言う)」と題して寄稿する城戸俊二と申します。本稿より約10稿のシリーズでプロジェクトマネジメントに於ける“パフォーマンス”について考察しますので宜しくお願いします。拙稿でおかしい点、疑問点などお気づきの際はご指摘ください。またご質問などありましたら遠慮なくkido@dem.co.jp宛にご連絡ください。
プロジェクトマネジメントの良し悪しは予定の目的達成如何で評価されることには各位にご異論はないと思いますが、遂行途上のマネジメントの評価については諸説あろうかと思います。目的達成の満足度は遂行途上の進め方或いは目標達成度合いに大きく左右されます。目的の中にはテークホールダーの満足も含まれます。仮に目的は達成したが遂行途上は苦行の連続だったならば、最終的にステークホールダー全員で喜べるでしょうか。そこでの満足は受益者のみの満足であって、プロジェクトドライバー(プロジェクト遂行当事者)には恨み辛みが残り、これを繰り返せば組織が疲弊すること間違い無しです。

本シリーズはプロジェクト遂行途上で如何にして無理なく、できればプロジェクトドライバーが満足しながら予定通りの目標達成度を維持メインテして行くかについて考察します。以下“である調”で述べます。

【いま何故プロジェクトパフォーマンスか!】
先般東京駅近くの有名書店でプロジェクトマネジメント(以下本稿ではPMと記す)の本をチェックした。市販本が間もなく100種を超える勢いで百花繚乱の様相を呈している。PMが流布し始めた初期は瞬く間にIT分野向けのPM基礎本などを中心に20〜30冊出版された。その後経験本が続き、最近は活用開拓域の広まりの時期に至っているようである。PMは事業経営に直結するから適用分野に際限はなしとは言っても、PMと言う一つのキーワードで発した本が短期間にこれほど多数出版されるのもめったにない人気商品?と、PM関係者としては喜ぶべきであろう。しかし筆者にはなんとなく寂しさを感じる。これらの多くは“PMはこんなもの”のレベルでPMを一通り舐めるに止まっている。残念ながら国内本では“PM手法の真髄は此処にあり”を紐解いたものを見かけない。今までの経緯を見る限り、“PM”も流行り本の一種として、何れ衰退の時を迎えるかもかもしれない。市販本全てをチェックしては居ないので言過ご容赦。

1996年版PMBOK(r)の和訳版が1997年に出版されて以来早や10年になる。もうそろそろPMの真髄本が出てきて良い頃である。そこで本稿では微力ながら“パフォーマンス”なるキーワードを御旗にしてPM手法真髄の一端模索を試みる。

【プロジェクトのパフォーマンス】
PMを身に付ける或いはPMを組織に導入するなど、PMの活用は各所でいろいろな手口で挑戦されているが、これらの活動の最終の狙いは事業のコストパフォーマンスの向上である。正確には目標通りに成果を出すこと、即ちアーンドバリュー(EV)法で言うCPI、SPIを1或いはそれ以上に維持メインテすることである。(図−1の中心点が正常値。成果を〆た時点の結果が1以上の域にあれば前倒し、それ以外の域にあれば何かが悪いことを示唆する。以下本稿ではCPI値、SPI値を総合してP値を言う)図ー1の意味するところはPM手法を一通り学んだ人なら誰でも知っていることであるが、念のため仮想シナリオ的に箇条書きで説明する。

・ プロジェクトのスタートは図ー1の原点。即ちCPI、SPI共に“1.0”
・ 1ヶ月目のパフォーマンスは時間的には前倒しだが少々金(資源?)を使い過ぎ。
・ 2ヶ月目は資源過剰消費の原因が(スケジュールにも?)現れて問題が拡大。
・ そこでPMは急遽対策(コスト回復の抜本策?)をして、3ヶ月目の〆は予算的には改善したが、作業遅延の余波は払拭できない。
・ PMは更に生産性向上の策を打つ。その結果4ヶ月末の〆ではスケジュール遅延も払拭できた。コスト回復策の効果も持続してコスト予算の余裕も増した。
・ 5ヶ月目も順調に推移。
・ 6ヶ月目もStill良好。しかしパフォーマンスは下がり気味。これが作為の結果であれば適切なマネージであろうが、無策の結果であれば油断大敵。

一概にコストパフォーマンス向上と言っても、それを良くするには如何にしたら良いか、すぐに解法は出てこない。上記の仮想シナリオのレベルで満足できるのは事業部のトップ位であろう。プロジェクトドライバーとしては、当のPMが常々どの様なところに気を配り、状態変化の兆候が出たときはどのようなカジ取りするかなどのノーハウを知りたいところである。

【プロジェクトパフォーマンスマネジメントの勘所】
プロジェクトの状態は刻々と変る。当然のこととしてそのP値も図−1の曲線の如く刻々と変化する。ある時点でのP値を聞いて我がプロジェクトは順調!と油断してはいけない。次のレポートでも順調と言う保証はない。プロジェクトが刻々変化することはパフォーマンスも同時に変化していることである。P値を確認した時点でのその変化傾向も把握すること、解析学的に言えばP値の微分値(トレンド)を認識することが重要で、その変化の度合いに応じた対策を打たねばならない。特にP値の異常、急変などは最重要情報である。これらの原因は徹底的に究明し必要な対策を施して置かねばならない。例えば潜在リスクが突如顕在化して因起する生産性急変への対処などである。

【本シリーズ編纂の本音】
本シリーズでEV法の解説をするつもりは更々ないが、図−1の時を追ってくねくね曲がった線にはPMのための貴重なメッセージが沢山埋もれている。またPMの諸策を施した結果もここに集約される。パフォーマンスマネジメントの要が此処にあることを踏まえて、次稿以降ではPMの要素技術がPPMにどのように絡んでくるか、プロジェクト遂行計画に際してどの様な配慮が必要か、遂行段階ではどの様に思考を巡らせば良いかなどについて考察する。


プロジェクト パフォーマンス マネジメント バックナンバー
第1回 プロジェクト パフォーマンス マネジメントとは何か
第2回 プロジェクト パフォーマンス マネジメントプロセスの全貌
第3回 プロジェクト パフォーマンス マネジメント ストラクチャー

第4回 PPMシステムの組み立て方と使い方
第5回 PPMの要はWBS/WP
第6回 パフォーマンス トレードオフの要 WE/WP
第7回 マネジメントフレーム間のパフォーマンス情報フロー


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