第167回(2007.11.13)
続・定常業務とプロジェクト

◆定常業務にプロジェクトマネジメントを適用すると収益が下がる理由

第165回では、定常業務とプロジェクト業務の違いを述べ、定常業務をプロジェクト業務としてプロジェクトマネジメントを適用している限り、収益を上げることは難しいだろういう話をした。

第165回 定常業務とプロジェクト 

この記事を読んだ方から「なぜ、定常業務にプロジェクトマネジメントを適用していると収益が上がらないのか」という質問を受けた。

2つの理由があると思う。一つはプロジェクトマネジメントはマネジメントコストが高くなることだ。現に、プロジェクトマネジメントを自分の業務に適用しようと考えた人の多くは、こんなことをやっていたらいくら時間があっても足らないと思う人が多い。これが何よりの証拠だ。明確な根拠を以てそのように言っているわけではないと思うが、長年その仕事をやってきた人が、直感的に感じるのだから、かなりその信ぴょう性は高い。

論理的にいうとすれば、プロジェクトマネジメントは、プロダクトプロセス(開発プロセス、製品プロセス)が不完全である、あるいは、ないことを前提にしたマネジメント手法である。仮に、かなりしっかりとしたプロダクトプロセスがあれば、やらなくてもよいことが山ほどある。この部分がコストになってはねかえってくる。


◆プロジェクトマネジメントで原価低減ができるか

二つ目がより本質的理由であるが、プロジェクトとしてやっている限り、品質マネジメントとしてプロセスの改善が行われ、生産性が上がり、結果として原価が低減されることはあっても、原価低減活動のように、組織として原価を企画し、目標原価を達成するという取り組みは難しい。原価低減に対するアプローチは、生産性の改善といった間接的な指標の達成によって行われる。

ここにばっさりとメスを入れ、たとえば、PMOが標準原価の設定をし、プロジェクトごとに原価を企画し、原価低減目標を定めていくのであれば可能になるが、プロジェクトガバナンスの問題があり、これは現実には難しい。そう考えると、プロジェクト業務として行っているものは、できるだけ早く、定常業務として行い、収益向上に結びつく原価低減を組織としてやっていくべきである。


◆SI業界の事情

特に、SI業界においては、定常業務をベースにした事業運営を行い、その中で、たとえば、

 ・新規顧客案件
 ・新規要素技術が含まれる案件
 ・大規模案件

についてはプロジェクトとして実行するといった一定の新規性のメトリクスを定め、できるだけ多くのプロジェクトを定常業務として行うことが求められる。そして、プロジェクトとして実行する案件はできるだけ早い時期に定常業務として実施できるように組織が責任を持ってアプローチの定型化をすべきだ。これこそが、利益を上げる方法である。

ちょっと脱線する。この話をSI企業ですると、生産性の改善こそが改善であり、利益に直結するという反論をされることがある。これは生産性という言葉を単位時間当たりの付加価値の生産という意味で使っているのであれば正しい。その通りである。
一例をあげると、たとえば、アーンドバリューを導入して、コスト効率とスケジュール効率で生産性を図っているのであれば正しい。しかし、生産性というのを単に時間当たりの生産量という意味で使っているのであれば間違いである。要員調達を戦略的に行うことも含めて、考えなおすべきである。


◆プロジェクトガバナンスがプロジェクトの成功確率をあげる

さて、話を元に戻すが、今回述べたことは、プロジェクトのカテゴリを明確にし、プロジェクトガバナンスを明確にすることを意味する。違う見方をすれば、今はプロジェクトガバナンスがいい加減であるので、このようなオペレーションができない組織が多い。その意味で、プロジェクトガバナンスを強化することが急務である。

このようなアプローチをすることのメリットは、定常業務の収益性を上げることだけではない。もう一つのメリットとして、たとえば多くの企業が頭を抱えているいわゆる「プロジェクトらしいプロジェクト」の成功確率を上げることができるというメリットがある。

これこそが、第163回、164回で述べたマネジメントとリーダーシップの議論の本質である。

リーダーシップとマネジメントの違い


これについては次回述べたい。

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著者紹介
好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
20年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「PM養成マガジンプロフェッショナル(有料版)」や「プロジェクト&イノベーション(無料)」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。

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