第163回(2007.10.09)
リーダーシップとマネジメントの違い

◆リーダーシップとマネジメントは似て非なるもの

管理とマネジメントの違いというのはメルマガの初期でかなり議論をしたテーマであるが、先日、「リーダーシップの道具箱」というセミナーの後で、マネジメントとリーダーシップはどう違うのですか?という質問を受けた。

今回の戦略ノートはこの問題を議論してみたい。まず、

 マネジメントとリーダーシップはまったく別物

である。経営学で一般的に言われているマネジメントとリーダーシップの役割の違いは、

 マネジメントの役割=「複雑な環境にうまく対処すること」
 リーダーシップの役割=「変革を成し遂げること」

である。

リーダーシップ論のグルの一人であるジョン・コッターが1990年に書いた論文「What Leaders Really Do」の中に以下のような例えをしている。軍隊では経験により、平時には階層の上から下までマネジメントが行き届き、上官の目が光っていれば、雑な課題に対しても適切に解決していくことができる。経験からいろいろな手法を身につけており、その手法を使うことにより計画的に物事を進めることができるからだ。しかし、戦時になれば効果的なマネジメントの仕方など誰も分からない。ゆえに、新しい方法を探し、切り開いていくリーダーシップが求められる。


◆マネジメントとリーダーシップの仕事

ここでややこしいのは、このように役割は違うにもかかわらず、マネジメントとリーダーシップは「同じ仕事」をすることである。似て非なるものといってもよい。セミナーのときに質問をされた方が混乱されていた理由はここにあると思われる。

同じ仕事とは以下の3つである。

(1)課題を抽出すること
(2)課題達成を可能にする人的ネットワークを構築すること
(3)実際に課題を達成させること

軍隊の例で作戦を考えてみよう。イラク戦争の米軍(連合軍)は圧倒的な戦力を背景に、空中戦はほぼ作戦通りに占領を進めていった。この場合は、指令軍が状況を応じて作戦を作り(課題抽出)、配置を行い(ネットワーク構築)、実際に作戦を実行する(課題達成)のは、上官のマネジメントでできる。誤爆などは精度の問題である。

ところが、地上戦になると、フセイン軍の抵抗とか、いろいろと予期せざることが出てきて多少苦戦をした。ここでも仕事は同じだ。課題抽出と実施体制の構築、そして、課題の達成をさせることである。しかし、あらかじめ作戦として決められたことをするだけでは局面が打開できない。現場でのリーダーシップが重要になる。もちろん、シビリアンコントロールの中でのリーダーシップであるが。


◆マネジメントかリーダーシップか

何が違うかというとやり方が違うのだ。マネジメントは計画とコントロールによって上の3つの仕事を行っていく。ところが、リーダーシップはチーム育成と動機付けによって3つの仕事を行う。これがマネジメントとリーダーシップの違いである。この議論は、次回、改めて詳しくしたい。

軍隊の戦時と平時という話は説明としては納得しやすいのだが、では、実際にビジネスの中ではどのようにマネジメントとリーダーシップの役割が使い分けられるのだろうか?プロジェクトにおけるリーダーシップが分かりにくい理由はこれだと思う。

平時と戦時を分けるのであれば、プロジェクトの目標の高さであろう。異なる言い方をすれば、新規性の大きさである。新規性の大きいプロジェクト、たとえば、イノベーティブな商品開発、無理な納期の仕事などにおいては、プロジェクトマネジャーにはマネジメントよりリーダーシップが求められる。逆にSIプロジェクトのように規模が大きく複雑性の高い仕事ではリーダーシップよりもマネジメントが求められる。

もうお気づきの方も多いと思うが、PMBOK(R)が規定しているのはこのレベルである。したがって、PMBOK(R)に基づくマネジメントシステムはマネジメントを主体にして実現してもよいし、リーダーシップを主体にしてもよいようになっている。ここがPMBOK(R)の奥の深いところでもある。

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    1-1 「コンセプト力」とは
     1-2 コンセプチュアル思考によるコンセプト作成
   2.コンセプト力でプロジェクトを動かす
    2-1 コンセプト・目的・目標の設定
    2-2 要求の洞察
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著者紹介
好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
20年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「PM養成マガジンプロフェッショナル(有料版)」や「プロジェクト&イノベーション(無料)」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。

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