第42回(2007.08.27)
知識とコンピテンシーの開発
 

前回はプロジェクトマネジャーの成熟度モデルとして5段階のモデルを示した。今回は、このレベルを向上させていくために、何をすればよいかを考えてみたい。

◆場当たり的 → 基本知識があるへのレベルアップ

このレベルの推移のためには、基本的には、「知識学習」が必要である。ただ、ここで考えておきたいことは知識とは何かという話だ。

「知識」と「行動」というと、知識があって、その知識に基づいて行動すると考え勝ちである。これは学校教育の弊害ではないかと思うのだが、この構図は基本的には逆である。つまり、行動の結果として知識が生まれる。

しかし、こんなことを言っていると、必ず

万人の万人による戦い

をしなくてはならないことになってしまう。そこで、社会的に共有する知識という概念を作っている。ビジネスでいえば、理論や標準、ベストプラクティスなどがそうだ。

これは社会全体としてもあるし、組織内でもある。また、日常生活でいえば、「しきたり」という形でそのような知識を蓄積している。

「知識学習」というのは、このように先人たちが経験により創造した知識を学ぶ機会である。いわゆるセミナーであるが、これは上に述べたように本来であれば自分が経験して身につけていく知識を便宜的に付与しているのだという位置づけであることに注意しておく必要がある。したがって、可能であれば、セミナーの中で、知識を得る過程を疑似体験して、知識の習得ができるようにすることによって自分が行動して得た知識に少しでも近づけていくことがこのようなセミナーの設計のポイントである。

その意味で、セミナーにこだわらず、メンタリングなどの指導方法を採用して、実際に実践しながら基本知識を身につけていくことができれば言うことなしである。


◆基本知識がある → 考えたことが確実に実行できる

ということで、この次のレベルアップには、基本知識の身に付け方が大きく影響する。もっともこのレベルアップが難しいのが、PMBOKなどの座学によって知識を身につけた場合、如何にしてその知識に基づいて行動できるようにするかだ。

この部分の能力開発は一般に言われるコンピテンシーの開発である。もっとも有力な方法は習慣化をすることだ。PMstyleでは以下のような基本プロセスを採用している。

ステップ1:コンピテンシーの理解
その知識に基づく行動(コンピテンシー)の役立つ状況と問題解決を明確にする。また、コンピテンシーを構成するモジュールを理解する。

ステップ2:実経験での認識
自らの経験に基づき、プロジェクトで直面するそのコンピテンシーが必要な場面の想像してみる

ステップ3:ソリューションの構築
その場面で、実際にどのような問題解決の方法をとるかを考え、それをパターン化してみる。このパターンがその人にとってのコンピテンシーを発揮した行動になる

ステップ4:ケーススタディ
そのパターンの活用による問題解決の事例によるソリューション適用のシミュレーションを行う。

ステップ5:実践
直面している問題に対して繰り返し、ソリューションを適用しながらコンピテンシーを強化していく

特に、習慣化という観点から、継続が難しいと思う場合には、ステップ3でソリューションを思考ツールとしてツール化し、そのツールを使ってケーススタディを行うとともに、実践を繰り返すのがよいだろう。

レベル3からレベル5については次回説明する。


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