第41回(2007.08.20)
プロジェクトマネジャーの成熟度モデル
 

今回から、何回か、プロジェクトマネジャーのトレーニングについて議論してみた。実はトレーニングの話を正面から取り上げるのはこれが初めてだ。

我々が考えているトレーニングの体系は、まず、プロジェクトマネジャーの成熟度モデルがあって、それに基づき、成熟度を上げていくためには何が必要かを定義したものだ。

プロジェクトマネジャーの成熟度モデルとしては

レベル1:場当たり的
レベル2:基本知識がある
レベル3:考えたことが確実に実行できる
レベル4:自分のパフォーマンスを知り、スキルアップできる
レベル5:プロフェッショナルPMを目指し自己成長できる

というレベルを採用している。注意して欲しいのは、このレベルと、例えば、ITスキル標準のようなレベルは別ものだということだ。成熟度モデルはキャリアモデルをイメージしており、スキルは継続的に成長していくことを前提にしている。したがって、プロジェクトマネジメント(体系)のごく一部しか実行していなくても、それを意図して実行しているのであればレベル3である。


◆レベル4は「業務を行うのに必要」なスキルを身に付ける習慣があること

そして、そこからは、自分がプロジェクトマネジャーとして必要だと思われるスキルを補強していくことが前提になっているが、ここで、さらに2つのレベルがある。一つはレベル4であり、プロジェクトマネジャーとしての「業務を行うのに必要」だと考えるスキルを補強していくというレベルである。これはどちらかといえば、外発的な理由でスキルアップをしていることになる。これがレベル4だ。プロジェクトマネジメントは、スキルだと考えるのであれば、このレベルが最上位レベルだと考えてよいだろう。


◆レベル5はプロフェッショナルプロジェクトマネジメント像を持つこと

しかし、プロジェクトマネジメントを職業として選ぶ、つまり、プロジェクトマネジメントのプロフェッショナルを目指すのであればさらに上がある。これがレベル5である。レベル5では、プロジェクトマネジャーは自らのプロフェッショナル像を明確に持ち、目先の業務に必要であろうが、なかろうが、そのようなプロジェクトマネジャーになるためのスキルアップを心がけていくというレベルだ。

ただし、現実にはスキルアップには業務経験が不可欠であり、業務とまったく無関係にはできない。したがって、最終的なプロフェッショナルプロジェクトマネジャーとしての人材像を描きながらも、当面の担当業務でそれを身につけていくことを考えることになる。

そして、その中で、組織に対して、自分のキャリアのために必要な業務を提案していくことになる。

では、これらのレベル設定をして、どのようにトレーニングや能力開発を進めていくかだが、これについては次回述べる。ここでは、ちょっと脱線して、一人前のプロジェクトマネジャーとはどんなものだということをこのモデルを使って示しておく。


◆一人前のプロジェクトマネジャーとは

このような成熟度モデルを考えると、まず、問題になるのが、「一人前」ってどこだという話である。我々は、一人前の定義は、

 プロジェクトをコントロールしている
   ↑
 (一人前かどうかの境)
   ↓
 プロジェクトに振り回されている

においている。コントロールできるという定義も必要かもしれないが、ここは単純に考えていて、計画を作って計画通りに進めていればコントロールしているとみなしている。つまり、当初計画通りに進めることができれば最良だが、当初計画どおりに進まなくても、計画をきちんと変更し、計画上で今の状況がどうなっているかを把握し、そして今後どう進んでいくかを見通している状態をコントロールしているとみなしている。

このように一人前を定義した場合、マネジメントとしては、こうしなくてはならないと思ったことを確実に実行できるかどうかというのが評価基準になると考えている。

もちろん、その前段に、状況に応じてやるべきことをきちんと考えることができるというのがあるが、これは知識レベルの話である。

ここにハードルをおいている理由は、「やってみて考え、そしてまたやってみる」というサイクルが実行できない限り、本当の意味で何をやってよいかは見えないので、プロジェクトをコントロールすることもできないと考えているからだ。

つまり、レベル3が一人前のレベルである。上に述べたように、これはたくさんの経験があるとか、ノウハウがあるといったことでは必ずしもないことに注意しておいて欲しい。小さなプロジェクトでもコントロールするためにやらなくてはならないと考えたことをきちんとできれば、一人前である。

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