第19回(2006.10.23)
戦略的PMOの標準化への取り組み(3)〜続・使われる標準を作る
 

◆鉄則(続き)

前回からの続きで、使われる標準を作るための鉄則である。

【標準化の鉄則2】標準の意味が明確であること

2番目の鉄則は

標準を決定する際に、その意味を明確に記述しておく

ことだ。標準の設定をする場合に、適当に(というか、経験的に)決めた値、プロセスを使う傾向がある。これは3つの理由で感心しない。最初の理由は、やらされ感が生じること。前回、ガバナンスの議論をしたが、まさに、ガバナンスだけで標準を運用する典型的パターンになる。

2つ目の理由は、プロジェクトマネジャーの塩梅が効かなくなること。標準というのはいうまでもなく、プロジェクトマネジメントをうまく行うための道具の一つに過ぎない。それを守ることが目的ではない。従って、緊急避難的に、あるいは、確信犯的に標準を無視したい局面はある。そのこと自体に問題はないが、それはあくまでもプロジェクトマネジャーの適正な判断による。その判断に大きな影響を与えるのが、標準の根拠であり、判断を誤る可能性が高くなる。

3つ目の理由は、このような標準の設定をしているとプロジェクトマネジメントが成熟しない。標準の設定に明確なロジックがあって初めて、その標準がうまく機能しなかったときに、どのように変更すればよいかが議論できる。もし、ロジックがなければ、常に後おいで標準を変更していくしかなくなってしまう。


【鉄則3:プロジェクトマネジャーの負担を増やさない】

現実的にもっとも重要なのはこれかもしれない。標準化を行うことによって、プロジェクトマネジャーの負担を増やさないことだ。

前回の現実性のところでも述べたが、標準化をする際には、ついつい、理想の追求になってしまうことが多い。しかし、標準化とは本質的にはプラクティスのまとめであり、そこに、若干の理想追求は入るとしても、多くのプロジェクトマネジャーが、初めて行うことの羅列になってしまうのでは意味がない。最低限、社内にある現実のベストプラクティスにとどめるべきである。

できれば、多少、質を落としてでも、最低限必要なものを、実行可能な標準として策定し、組織成熟度の向上とともに、ベストプラクティスまで持ち込んでいくという進め方の方が望ましい。ベストプラクティスを標準にしてみたところで、全てのプロジェクトマネジャーがいっぺんにできるわけではない。仮の社内ベストプラクティスだとすると、おそらく、実行できるプロジェクトマネジャーは10人に1人いればよいほうだろう。

であれば、いっそのこと、最低限必要なことを明確にし、10人のうちの9人ができる標準を模索していく方が10人中10人がベストプラクティスを実行できるようになるまでの近道である。

この際、重要なことは、標準化のロードマップを明確にすることである。どのようなスケジュールでどの部分に手をつけていくのかをロードマップとして明確にする必要がある。


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