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第18回(2006.10.16、2006.11.19改訂)
戦略的PMOの標準化への取り組み(2)〜使われる標準を作る |
◆標準とは何か
前回、メソドロジーとは何かを説明した。標準とか、メソドロジーの適用の適切さの指標である。標準=プロセスだと考えている人も多いが、実はそうではない。標準の表現には、コンピテンシーによる表現もある。詳しい話は後でするが、要するに、ある部分はプロセスを設定し、それを遵守することを適正なメソドロジーの保障とするが、人間に依存している部分もある。つまり、「**ができる人が適用すれば正しいことにしよう」という保障の仕方もある。これがコンピテンシーである。
実際にマネジメント行動をすべてプロセスで表現するのは不可能だ。そこで、標準化に当たっては、プロセスとコンピテンシーのバランスが大切である。
◆せっかく、策定したのに使わない!
この議論、意外と難しい。まず、一つ、エピソードをご紹介しよう。
あるSI企業での話し。プロジェクトマネジメントの強化ということでプロジェクトマネジメント標準を作ろうということで、社内の業務推進を行っている部門が中心になり、プロジェクトマネジメントに熱心なプロジェクトマネジャーを集めた委員会を作り、標準化に取り組んだ。
実際にプロジェクトマネジャーがやっていることをまとめて標準化しようとしたのだが、思惑は当たって、予定通りのスケジュールで一通りにマネジメント標準はできた。もちろん、委員になっているプロジェクトマネジャーたちは合意をした。
ところが、運用を始めてみると、他のプロジェクトマネジャーはともかく、委員としてコミットしたプロジェクトマネジャーすら、できた標準を使わない。以前から自分がやっていた方法を使い続けた。
◆標準化にガバナンスは禁物!?
なぜか?いろいろな理由があると思うが、その当時、みんなで分析をした結果は以下のようなものだった。
・標準を使うことで、プロジェクトマネジャーの負担が増える
・どんなプロジェクトにも使える標準というのはない
・標準を使うことは手段であって、目的ではないので、プロジェクトの事情が優先
する
・理想を追い求めたため、現実感を持って標準を策定していない
・委員以外のプロジェクトマネジャーにおいては、標準の意味や理由が分からない
一言でいえば、
標準化にガバナンスの議論を持ち込むと失敗する
ということだ。組織のガバナンスがあって、使えといってもほとんど意味がないし、また、標準が成長することもない。そういう問題ではない。使いたくなるものが必要なのだ。
にも関わらず、多くの組織では、使い方(運用)は後で考えればよいと平然と言って標準化を進めている。ビジネスシステムの中にうまく位置づけたために標準の中ではもっととガバナンスが効いていると思われるISOにしてみても、十分に浸透するまでにはかなりの時間がかかる。ましてやビジネスシステムの中の位置づけから始めなくてはならないプロジェクトマネジメントの標準など作った後で改修して導入していくというのは根本的に間違いだと断言できる。
◆標準化の鉄則1:現実を踏まえた標準であること
このような経験を踏まえて、「使われる標準を作るポイント」というのをいくつか挙げてみたい。
【標準化の鉄則1】現実を踏まえた標準であること
まず、最初は、現実を踏まえた標準であることだ。現実的であるというのはいくつかの意味がある。まず、こうあるべきだというのばかりが先行してしまい、今のやり方を端から無視したようなやり方ではだめだという意味。言い換えると、容易にできるものではくては標準としては意味がない。
標準化するというのは、立法的な快感を感じる作業であるので力んでしまって自組織のプロジェクトマネジャーの力量では実行できないだろうといった標準を設定しているのをよく見かける。例えば、リスクマネジメントで、リスクと課題を区別して扱うという話がある。これはリスクマネジメントを行う上では非常に本質的な話であり、リスクマネジメントの本当の意味での効果が見られるのはこれができるようになってからだ(課題管理だけではたいした効果はでない)。ところが最初からこれをやろうとすると、まず、できない。マネジメントスキルとして考えてみても相当高度なスキルだからだ。その場合には、まずはごちゃ混ぜでいいので、取り組んでリスク(課題)に決められた方法で対処するというのを最初のステップに持ってきて、それができるようになったくらいから、リスクと課題を分けて、別々の扱いをするということをする方がよい。
(次回に続く)
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