第16回(2006.08.21)
続・戦略的PMOの条件
 

◆はじめに
読者の方から、戦略的PMOというのは、経営戦略、あるいは事業戦略をプロジェクトに落とし込む役割を果たすPMOのことではないのかというご意見を戴いた。

これまでの記事を読み直してみると、少し、ここがはっきりしていないことに気がついたので、補足しておきたい。この読者の方の指摘はそのとおりである。というよりも、プロジェクトマネジメントそのものが、企業戦略、あるいは事業戦略の実行手段であり、そのプロジェクトの定義を支援するのがPMOである。

問題は支援手段であるが、これはケースバイケースだろう。組織によってはプロジェクトの立ち上げ(デザイン)に直接絡んで行き、プロジェクトと一緒にそれを戦略との整合性の取れたプロジェクトデザインをしていくPMOもある。また、直接的には行わず、経営戦略の実行をプロジェクトマネジメントの方法に落とし込み、それをガイドラインとして提供することにより、経営戦略の実現を図っているPMOもある。

ただ、いずれの場合も、PMOが戦略そのものにコミットすることは稀である。あくまでも戦略実行のプロセスの支援にとどまることが多い。その意味で、PMOが戦略実行のために果たす役割は、プロジェクトマネジメントの方針や方法を決めることであり、また、もう少し上位のレベルでは、プログラムマネジメントのプロセスの支援をすることである。
プログラムマネジメントの支援といった場合、また、そのうち議論するが、ポートフォリオの作成維持のような事業マネジメント寄りのものも含まれてくるが、それはあくまでも、プロセス支援としての位置づけである。

ということで、前回、戦略的PMOの条件を2つ述べたが、今回はその続きである。

戦略的PMOの条件

◆条件3:戦略的計画を達成するための組織的適応性を持つ
三番目の条件は、組織の運用に関わるものである。この条件は結構重要な条件である

第8回で述べたが、PMOの組織というのはもともと、多くの支援型組織と同じく、自己組織化されるものである。

PMO機能のキーワードは「自己組織化」

つまり、必要に応じて、自身で必要な機能を定義し、それを立ち上げ、運用していく必要がある。もちろん、その中心軸に経営の戦略があり、それを逸脱することはありえないが、かといって、経営から機能体系までを指示されることは少ない。平たくいえば、自分で何が必要かを見極め、自分の仕事を決めていくということになる。

PMOが戦略的であるためには、この自己組織化において、組織を戦略に適応させていくことが必要になる。例えば、「顧客の満足する商品を生み出す」という戦略ビジョンを持つのであれば、ビジネスアライメントを強化し、顧客関係管理の機能をPMO自身が持つ必要がある。もちろん、それは顧客がどのような商品やサービスを望んでいるかを探ることが目的ではなく、それを探るためのプロセスを確立していくためである。

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