第8回(2006.05.08)
PMO機能のキーワードは「自己組織化」
 

◆PMOはどの段階で作るのか?

前回、プロジェクトマネジメントの組織成熟度に5つのレベルがあり、それぞれ、「場当たり的レベル」、「標準化されたレベル」、「計測化されたレベル」、「管理されたレベル」、「継続的改善レベル」と呼ぶことにした。それぞれについては繰り返さないので、忘れた人はバックナンバーを読み直していただきたい。今回はまず、プロジェクトマネジメントオフィスはどのようなタイミングで作るのが望ましいかという議論からはじめる。

PMOの議論を抜きにして、プロジェクトマネジメントを導入しようとした組織のとる方法は4月10日号のコラムで述べたようにいくつか考えられる。一つは、プロジェクトマネジャーのスキルを高めることである。もう一つが標準プロセスやツールを設定することである。

そのように考えると、PMOはこれらの作業に着手するために必要だということになる。


◆組織によってPMOの形態は異なる。

しかし、話はそう単純ではない。これらの作業をすることと、PMOという組織を作ることには隔たりがあるケースが多いからだ。

たとえば、IT系の企業のように事業としてプロジェクトを行っており、プロジェクトの数が多く、事業的な重要性の高い組織の場合には標準プロセスを構築するために、いきなりPMO組織を作るということになるケースが多い。

これに対して、たとえば、(製造業)メーカのようにプロジェクトはあくまでも戦略実現の一つの方法に過ぎず、プロジェクトマネジメントもプロダクトマネジメントの一部に位置づけられるような組織では委員会を作って推進を議論したり、極端な場合には一部の有志が頑張ってやるというケースもなくはない。このような場合は、PMOに相当する役割を果たす人はいるが、組織はないという形になることが多い。

組織形態でもう少し、突っ込んで考えると、既存組織との兼ね合いがある。たとえば、品質マネジメントはプロジェクトマネジメントの導入以前に、品質管理部門として行っており、プロジェクトマネジメントの導入後もその部分は同じように品質管理部門が担当する、調達も資材部門が担当するといった形で、既存部門の集合体でPMO機能を構成するようなケースも少なくない。


◆PMOのキーワードは「自己組織化」

このような中で、PMOの機能を考えたときに、極めて重要な機能として、自身の組織構築という機能が必要になる。あまり指摘されていないことだが、PMOという機能は本質的に「自己組織化」が求められる機能である。自己組織化とは、生物のように他からの制御なしに自分自身で組織や構造をつくり出す事をいう。

組織の一部であるので純粋な意味で自己組織化というのはありえないが、少なくても、自身の組織設計図や構造を設計し、それに対して上位組織の決済をとって自身の形を変えていくことができなくては成り立たない組織である(日本の組織というのは自己組織化が上手な組織が多い)。

これは、前回議論した成熟度の議論を考えても重要性が分かる。プロジェクトマネジメント支援に対するニーズはレベルとともに変わっていく。では、そのときに、自分たちがどのように変わればよいかを考え、実際に変わっていくのは、いずれもPMO自身である。上位組織が適切な指示をしてくれるなどと考えない方がよい。


◆PMOは場当たり的レベル(レベル1)で作る

そのように考えると、上に述べた話は比較的に簡単に整理ができる。自身の組織の設計と実現がPMOの一つの機能だとすれば、「場当たり的レベル(レベル1)」の間にPMOは作る必要がある。

ただし、それは上で指摘したように必ずしも「プロジェクト管理部」といったPMO組織である必要はなく、どのような形でもかまわない。まずは、この機能をインプリメントし、ニーズ調査を行い、自身の行うべき仕事を決めていく。このような組織を作る必要がある

自己組織化の一例。品質管理の中でリスクへの対応が問題になり、プロジェクトマネジメント導入のニーズが出てきた。そこで、品質管理部の1〜2名がこの問題を担当し、PMO的機能を立ち上げ、リスクマネジメントプロセスの標準化に取り組んだ。

これは立派なPMO活動である。その上で、その活動の結果をみながら、更なるニーズを分析した。結果、計画の精度向上が必要だということになった。そこで、計画支援機能を自分たちの活動のスコープに入れることにした。そして、そのようなリクルーティングを行い、それを実現した。このような流れが必要である。

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