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第9回(2006.06.23)
契約タイプ
プロジェクトマネジメントオフィス 鈴木道代 |
今回は、「PMBOKのツールと技法を極める」シリーズの9回目として、調達知識エリアの「購入・取得計画」プロセスのツールと技法である契約タイプを取り上げることにします。
◆契約タイプ
調達知識エリアの最初のプロセスである「購入・取得計画」プロセスでは、いつ、何を、どのように取得するのかということを決めていきます。
まず、内外製分析でWBSのワークパッケージごとに内製・外製の利点・欠点を判断し、全体を調整し、外製するものを決めていきます。
その際には、プロジェクト・スコープ記述書、WBS、WBS辞書(ワークパッケージなどの要素成果物を作成するための作業範囲を記述した資料)とプロジェクト・マネジメント計画書がインプットとなります。
プロジェクト・マネジメント計画書は、プロジェクトをマネジメントするための計画書であり、スコープ・マネジメント計画書、品質マネジメント計画書などや他の補助の計画書からなっています。
「購入・取得計画」プロセスで必要なインプットは、リスク登録簿、プロジェクト・スケジュール、コスト見積り、コスト・ベースラインです。
そして、「購入・取得計画」プロセスのアウトプットは、調達マネジメント計画書(調達プロセスをどのようにマネジメントするか)、契約作業範囲記述書(プロジェクト・スコープの中の調達を決めたものに関して、契約をする範囲を定義したもの)、内外製決定です。
これらのアウトプットを作成するためのツールと技法として、内外製分析(7回目に取り上げました)、専門家の判断、契約タイプがあります。
契約タイプによって、購入者と納入者が負担するリスクの度合いが決まりますが、大きく次の3つの区分に分かれます。
○定額契約および一括請負契約
明確に定義された成果物に対して一括固定価格を定める契約であり、購入者は求める成果物を決まった金額で受け取ることができるため、リスクの低い契約タイプです。
納入者は、成果物を作成するために必要な作業や資源を見積り、その金額で契約するわけですが、最初に見積もった金額で成果物を完成させる必要がありますので、納入者にとってはリスクの高い契約タイプです。
○実費償還契約
購入者は、実コストに納入者の利益相当分を加えた金額を納入者に支払う契約であり、納入者は利益相当分を確実に受け取ることができるため、納入者にとってリスクが低く、購入者は成果物完成まで際限なく費用(実コスト分)が必要になり、リスクが高い契約タイプです。
実費償還契約は一般的に次の3つのタイプがあります。
・コスト・プラス・フィー(CPF)契約,コスト・プラス・パーセンテージ(CPPC)契約
納入者は、利益相当分を実コストに対してあらかじめ合意した比率でフィーを受け取ります。
・コスト・プラス固定フィー(CPFF)契約
納入者は、利益相当分をあらかじめ見積もったコストの一定比率のフィーを受け取ります。
・コスト・プラス・インセンティブ・フィー(CPIF)契約
納入者は、利益相当分を実コストのあらかじめ合意した比率のフィーとあらかじめ合意した目標レベルへの達成度に応じたインセンティブを受け取ります。
○タイム・アンド・マテリアル(T&M)契約
購入者は、契約の総額と納入品の正確な量を定めず、資源についての単価を取り決める契約です。
総額がわからないという意味で実費償還契約の性格を持ち、購入者側のリスクが高く、単価が決まっているという意味で定額契約の性格を持ち、購入者側のリスクが低い契約タイプです。
「購入・取得計画」プロセスでは、このようにリスクの度合いや成果物の特徴(スコープの実現性や作業内容の明確さなど)によって、契約タイプを選択し、調達マネジメント計画書を作成します。
そして、次の「契約計画」プロセスで調達文書(RFP)を作成し、「納入者回答依頼」プロセスで入札を行い、プロポーザルを取得し、「納入者選定」プロセスで納入者を選定し、契約を行います。この間、「購入・取得計画」プロセスで決めた契約タイプにしたがって、プロセスを進めていきますが、やはり、一括請負という契約が日本では一般的なようです。
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PMBOKは、米国PMIの商標(R)です。
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