第32回(2007.02.13)
リスク区分はなぜ必要か
プロジェクトマネジメントオフィス 鈴木道代 
 

前回は、リスク知識エリアの計画プロセス群のリスク・マネジメント計画プロセスを取り上げました。

◆リスク区分
今回は、リスク・マネジメント計画書の内容に含まれているリスク区分を取り上げます。

リスク区分とは、体系的にリスクを識別するために効果的な構造を定義したもので、リスク・ブレークダウン・ストラクチャー(RBS)という手法があります。

これは、WBSのように、リスク事象についての分類をブレークダウンしていく手法です。
例えば、リスクは技術要因と外部要因と組織要因とプロジェクトマネジメント要因に分類され、プロジェクトマネジメントは見積り、計画、コントロール、コミュニケーションに関する要因に分類されるという分類をトップダウンで作成していくものです。

リスクをもれなくダブりなく洗い出していくためには、このリスク区分をWBSのように100%ルールでブレークダウンしていく必要があります。
100%ルールというのは、あるレベルの要素をブレークダウンすると下のレベルの要素から構成され、ブレークダウンした下のレベルの要素をすべて集めると上のレベルの要素ができるということです。

少しの漏れもなく、同じ要素が複数回出現することもなく、ダブりがないということを意味しています。

プロジェクトで発生する恐れのある典型的なリスクは、通常、スケジュール、コスト、スコープ・品質、外的要因の4つに分類されることが多く、この4つのリスク分類からRBSを作成し、適度なレベルの要素をリスク区分として採用します。

何故、リスク区分がリスク・マネジメント計画書に必要かと言いますと、この後のマネジメントプロセスで常に考慮する必要がある項目だからです

・リスク識別
 文書(計画書)をレビューしてリスクを洗い出す際、リスク区分でリスクの有無を探します。
 ブレーンストーミングやデルファイ法などの項目としてリスク区分を使用します。
 リスクのチェックリストとして、RBSの最下位項目を使用することができます。
 リスクをリスク区分で分類することで、根本原因の識別が容易になります。

・定性的リスク分析・定量的リスク分析
 プロジェクトに大きな影響を与えるリスクをリスク区分で分類することで、リスクトラッキングの対象や緊急度を設定することができます。

・リスク対応計画
 対応すべきリスクをリスク区分で分類することで、有効な対応策を立案できます。

・リスクの監視コントロール
 リスク区分に即したトラッキング計画を実現することができます。

このようにリスク・マネジメント計画書に記載されているリスク区分は、リスク知識エリアのすべてのマネジメントプロセスにおいて必要かつ有効なばかりではなく、リスク事象や対応策の組織としての蓄積に大いに役立つものであり、リスク・マネジメントプロセスのアウトプットであるリスク登録簿には欠かせないものです。

しかし、1度決めたリスク区分は変更不可ではなく、リスクに関する知見が蓄積されるにつれて、随時見直していくことによって、より良いリスク区分が完成されていくと思われます。

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