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第23回(2006.10.20)
システム工学(3)
プロジェクトマネジメントオフィス 鈴木道代 |
前回も続けて、スコープ知識エリアの「スコープ定義」のツールと技法であるプロダクト分析の中のシステム工学を取り上げました。
今回は、システム工学の最後です。
◆システム工学
システム工学とはまず、解決すべき現象があって、その問題を解決するシステムを作るという目的からスタートします。
ここで言うシステムは必ずしも、コンピュータで作るアプリケーションシステムを指しているわけではありません。現象を解決する方策を実現するためには手段としてコンピュータを使うことが多いため、システムというとコンピュータシステムと思われがちですが、あくまでも手段にすぎません。
例えば、システム化の計画は次の手順で進めます。
1.目的の記述
2.評価システムの作成:評価尺度を決めて、評価の手順を決めておく
3.理想システムを組む:目的を達成するためのシステムを考える
4.制約条件の記述:理想システムと予算、期日などの制約条件を調整します
5.具体案の作成:これから作成するシステムの案を複数作成します
6.利害得失表の作成:複数の具体案の優劣の比較表を作成します
7.推奨案の細目:結論として推奨する案を決めて細目を記述する
8.実施のスケジュール:順序に考慮してスケジュールを決める
9.実施の効果の予想
10.実施に伴い準備すべき事項
このようにして見ていくと、プロジェクトマネジメントの立上げ、スコープの計画と重なる部分が多いです。
アメリカがロケットを打ち上げたのは、システム工学によるところが大きいと、大学時代に習ったものです。
が、プロジェクト関連の書籍を見ると、アメリカでは、アポロが月に到達した1969年にはすでにPMIが設立されていたわけで、ロケット打ち上げはプロジェクトとしてマネジメントしていたそうです。
つまり、システム工学はスコープを実現するための手法(特にOR技法が中心)であり、スコープを定義する際には、その手法の知識が有用だということが言えます。
ですが、システム工学というと次のような技法があり、これらはPMBOKのどこかに出てきています。つまり、プロジェクトで作成する成果物をすべてシステムと捕らえることによって、システム工学はすっぽり、プロジェクトマネジメントに含まれると言えます。
・線形計画法:制約条件の中で最適化を求める
・ゲームの理論:ゲームにおいて、どんな手段を使うと競争相手に勝てるのか
・決定理論:投資をして、最も少ない損害するためや最も利益を大きくするための手段を決める
・デシジョンツリー:多段階の意思決定に期待値を使う
・在庫管理:在庫に関する費用を最小にするには発注量をどの程度にするのか
・待ち行列:窓口に並ぶ行列をなくすためには、窓口がいくつ必要か
・グラフ理論:多数の要素間の結合関係をグラフでモデル化し最適化する
・多変量解析:アンケート調査のように,多くの項目に回答のあるデータを解析
・時系列解析:時刻と共に変化するデータを解析
・信頼性工学:システムの信頼性を分析
これらの技法は、また、いつか取り上げたいと思います。
次回は、「スコープ定義」のツールと手法であるプロダクト分析の他の技法です。
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PMBOKは、米国PMIの商標(R)です。
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