第11回(2006.07.14)
コスト・ベースライン
プロジェクトマネジメントオフィス 鈴木道代 
 
今回は、「PMBOKのツールと技法を極める」シリーズの11回目として、コスト知識エリアの「コストの予算化」プロセスのツールと技法を取り上げることにします。

◆コスト・ベースライン
「コストの予算化」プロセスは、「コストの見積り」プロセスで見積もられた各スケジュール・アクティビティでの見積りコストを集計して、パフォーマンスを測定するコスト・ベースラインを設定します。

コスト・ベースラインとは、簡単に言いますと、時間軸に展開した予算のことで、プロジェクトのコスト・パフォーマンス全体の測定、監視、コントロールの基準として使用されます。

それでは、コスト・ベースラインをどのように作成するかと言いますと、見積もったコストを期間ごとに集計して作成します。その期間はそれぞれのスケジュール・アクティビティがいつ実行されていつ終了するのかというスケジュール予定に依存してきます。

そして次に、各スケジュール・アクティビティの見積りコストをどの期間で集計するのか、つまりスケジュール・アクティビティが完了した時にその見積りコスト100%を集計するのかということが問題になってきます。

そのスケジュール・アクティビティが例えば、2週間の期間で完了する作業であれば、作業に着手してから2週間全くコストを集計せずに、2週間後に集計するのかということです。

PMBOKでは、「コストの見積り」プロセスの前にコストに関連する実行すべき計画作業があり、それは個別のプロセスとして示していないと記載しています。それはどんな計画作業かと言いますと、プロジェクト・コストの計画、組織化、見積り、予算化、コントロールのための基準を設定する作業のこと、コスト・マネジメント計画書として記載されます。

つまり、以下の項目などを設定していきます。

・有効桁数:スコープや規模に応じた精度(丸める桁数、例えば100万円など)
・測定単位:労働時間数、労働日数などの測定に使用する単位
・報告書式:各種コスト報告書の書式を定義
・プロセス記述:3つのコスト・マネジメントのプロセスをどのように行うか

・アーンド・バリュー適用規則:つまり、コストを計上するタイミングのこと
アーンド・バリューの評価基準である0-100(完了時に100%)、50-100(着手で50%、完了時に100%)、0-50-100(中間で50%、完了時に100%)などの計上基準を決める

・組織の手続きとのリンク:
プロジェクトのコスト計上のタイミングとして使用するWBSの構成要素(ワークパッケージもしくはその上位レベルの構成要素)をコントロール・アカウント(CA)と呼び、組織の会計システムとリンクする必要がある場合には、その会計システムで使用しているコードやアカウント番号を割り当てます。

リンクする必要がない場合には、コストマネジメントの観点から集計し、マネジメントしやすいポイントをコントロール・アカウントとして設定し、コストベースラインを作成していきます。コントロール・アカウント内の計上のタイミングは上記のアーンド・バリュー適用規則(つまり、コストを計上するタイミング)により行います。

◆「コストの予算化」プロセスのツールと技法

「コストの予算化」プロセスのツールと技法には以下のものがあります。

・コスト集約:
スケジュール・アクティビティ毎に見積もったコストをワークパッケージ単位に集約し、その上位レベルであるコントロール・アカウントごとに集約し、プロジェクトの総コストを集計すること

・予備設定分析:コンティンジェンシー予備の設定
・係数見積り:プロジェクトの特性値で総予算を見積もる方法
・限度額による資金調整:組織のプロジェクトに対する資金の支出の調整による制限
など

この「コストの予算化」で作成されたコスト・ベースラインがプロジェクトのパフォーマンスを測定する基準になります。

次回は、WBS辞書です。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
PMBOKは、米国PMIの商標(R)です。


前の記事 |次の記事 | 記事一覧
スポンサードリンク
読者からのコメント

■本稿に対するご意見,ご感想をお聞かせください.■

は必須入力です
コメント
自由にご記入ください

■氏名またはハンドル名
■会社名または職業
■年齢

  
このコンテンツは「プロジェクトマネージャー養成マガジン」としてメルマガで配信されています.メルマガの登録はこちらからできます.