第9回(2005.09.14) 
これは使えるぞ!PMBOK3(9):品質
 

 前回に引き続き、知識エリアの観点からの変更点について、特に変更されたプロセスについて記述します。

ここでは、
△:立ち上げプロセス群
○:計画プロセス群
◎:実行プロセス群
●:監視コントロール・プロセス群
▲:終結プロセス群
でプロセス群を表現しています。

■プロジェクト品質マネジメント
品質知識エリアには、計画プロセス群に「品質計画」、実行プロセス群に「品質保証」、監視・コントロールプロセス群に「品質管理」とプロセスが一つずづあり、プロセスの数については2000からの変更はありません。

プロジェクト品質マネジメントはプロジェクトが取り組むべきニーズを満足するために、品質方針、品質目標、品質に対する責任を決定する母体組織のすべての活動からなっています。母体組織のすべての活動という部分が他の知識エリアとは異なっています。

○「品質計画」
「品質計画」は、どの品質規格がそのプロジェクトに関連するかを特定し、どのようにそれを満足するかを決定するプロセスです。インプット、ツールと技法、アウトプットが2000から少し変更されました。

2000では、品質方針、標準と規制と呼ばれていた母体組織の方針や標準などのインプットが、PMBOK3では、組織体の環境要因と組織のプロセス資産でまとめられています。この二つはすべての知識エリアのインプットになっています。

では、すべての知識エリアのインプットである組織体の環境要因と組織のプロセス資産は具体的に何をさしているのでしょうか?
以下にまとめてみました。

★        |組織体の環境要因
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
統合       |企業文化,プロジェクトマネジメント情報システム,
         |要員プール
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
スコープ     |組織の文化,インフラストラクチャー,ツール,人的資源,
         |人事方針,市場状況
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
タイム      |資源の可用性
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
コスト      |市場状況,商用データベース
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
品質       |政府の標準,規制,指針,商用データベース
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
人的資源     |組織の文化と構造
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
コミュニケーション|コミュニケーション技術
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
リスク      |商用データベース
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
調達       |市場状況,購入スキル
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

★        |組織のプロセス資産
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
統合       |方針・手順・標準・ガイドライン,定義されたプロセス,
         |過去の情報,教訓
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
スコープ     |方針書,手順書,指針
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
タイム      |組織の方針,過去の情報,プロジェクト・カレンダー
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
コスト      |過去の情報,知識の方針
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
品質       |品質方針,手順,指針,教訓,知識ベース
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
人的資源     |テンプレート,チェックリスト
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
コミュニケーション|教訓,知識ベース,過去の情報
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
リスク      |方針、手順,ガイドライン,教訓,知識ベース
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
調達       |方針、手順,ガイドライン,教訓,知識データベース
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

注)調達の知識データベースは原文も同様でしたので、誤訳ではないようです。


2000の「品質計画」では、他のプロセスからのアウトプットでしたが、PMBOK3では、プロジェクトマネジメント計画書となり、ここでもプロジェクトマネジメント計画書が強調されています。

「品質計画」のアウトプットには、プロセス改善計画書と品質ベースラインが追加されています。品質ベースラインとはプロジェクトの品質目標を記録したもので、品質のパフォーマンスを測定し、報告する際の基準になります。
例えば、品質評価図(テストケースの残件とバグの累積グラフ)などが品質ベースラインになります。

プロセス改善計画書は、不用で価値のないアクティビティを特定する分析プロセスの手順を記述したものです。

◎「品質保証」
「品質保証(QA)」は、プロジェクトが要求事項を満足させるために必要なプロセスを確実に用いるように計画的・体系的な品質活動を行うプロセスです。多くの場合、品質保証部などが品質保証活動を監視しています。

PMBOK3では、インプットにプロセス改善計画書、ツールと技法にプロセス分析が追加されました。

プロセス分析は、プロセス改善計画書に示された概要の手順に従って、問題・状況を分析し、その根本原因を確定するとともに、類似問題に対する予防処置を策定します。

●「品質管理」
「品質管理(QC)」は、プロジェクトの結果が適切な品質規格に適合しているかどうかを判断するために、結果を監視し、不満足な結果の原因を除去するための方法を特定するプロセスです。
また、PMBOK3では、ツールと技法に欠陥修正レビューが追加されています。

今回は品質知識エリアのプロセスについて記述しました。
次回はいよいよ人的資源知識エリアです。

◆プロジェクトの品質について
品質というと、まず頭に浮かぶのが成果物の品質ですが、PMBOKではプロジェクトの品質について記述しています。プロジェクトマネジメントOS本舗でも、プロジェクトの品質を取り上げています。

詳細はこちら

また、知覚品質という概念もあります。これは、顧客の感じる品質で、ブランドや企
業イメージが大きな影響を与える主観的な品質概念ですが、これもプロジェクトの品
質として重要な概念ですね。

詳細はこちら


◆お奨め図書
もちろん、PMBOK第3版の日本語版です
 Project Management Instytute
"A Guide To The Project Management Body Of Knowledge: Official Japanese Translation"(2005.2)
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