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第96回(2006.04.25) 
プロジェクトマネジャーの意思決定(その2)

前回はさらに、脱線してしまい、プロジェクトの意思決定の話のつもりが、ガバナンスの話になってしまった。もう一度、戦略ノート(94)の問題提起である、意思決定は誰がするのかという問題に戻りたい。この問題に対して少し視点を変えて考えてみたい。


◆プロジェクトマネジャーの責任

プロジェクトマネジャーにはどのような責任があるのか?という視点から考えてみる。実はこの問題が意外と考えられていない問題である。考えられていない理由は、プロジェクトの結果に対しては、すべてプロジェクトマネジャーに責任があるという風潮が蔓延っているためである。多少オーバーだとしても、プロジェクトの収益に対する責任はプロジェクトマネジャーにあると考えられている。前者はもちろん、後者でも前回の議論からも分かるようにナンセンスである。もう少し、プロジェクトマネジャーの責任は限定的に考えるべきである。

pmstyleで考えているプロジェクトマネジャーの責任は

 ・計画への落とし込みと共有する責任
 ・計画実行を動機付ける責任
 ・計画実行状況を管理する責任
 ・予想外の状況で判断・行動をする責任
 ・状況を説明する責任

の5つである。


◆プロジェクトマネジャーの意思決定活動

このような責任を果たすために必要なことがプロジェクトマネジャーの仕事であり、これには以下のようなものがある。

 ・計画の決定
 ・動機付けに伴うメンバーの扱い方の決定
 ・計画実行状況の判断とその判断に基づく行動の決定
 ・予想外の状況であるという判断とそれに対する対処の検討と行動決定
 ・各ステークホルダに対して説明する範囲の決定

いずれに対しても、プロジェクトとしての意志決定(判断と行動の決定)が伴うことが分かる。

では、プロジェクトマネジャーが意思決定の仕事をさらに誰かに委譲することがあるのだろうか?原則的にはない。チームリーダーなどに検討を依頼することはあっても、最終決定するのはプロジェクトマネジャーであるべきである。つまり、プロジェクトにおいて、上の責任に纏わる意思決定はすべてプロジェクトマネジャーが行うべきであろう。


◆もうひとつの仕事はチームビルディング

もうひとつ、プロジェクトマネジャーの仕事を考える上で欠かすことができないのが、(プロジェクト)組織マネジャーとしての側面である。つまり、チームを作り上げていく仕事である。要員調達については必ずしもプロジェクトマネジャー自身が行う必要はないが、集められた人をチームとして束ねていく仕事は必ずプロジェクトマネジャーが行うべきであるし、逆にプロジェクトマネジャーしか行うことのできない仕事である。上の責任を果たすという観点からもこの仕事は欠かすことができない。

 ・計画の共有化
 ・チームの動機付け
 ・チームの進捗の管理
 ・リスクマインドの作りこみ
 ・チームに対するビジョン、状況、見通しの説明

といった仕事をする必要がある。

PMBOK(R)が普及したり、あるいは開発プロセス、ISO9000プロセスなどの普及により、プロジェクトマネジメントの仕事はかなり複雑になっている。しかし、その中で、プロジェクトマネジャーが行うべき仕事は、意思決定とチームビルディングである。それ以外は、プロジェクトマネジメントチームなり、プロジェクト外部のPMO、あるいは、シニアマネジャーが分担することによってプロジェクトマネジメントの品質が向上していく。

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著者紹介
好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
20年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「コンセプチュアル・マネジメント(無料)」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。

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