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第72回(2004.12.10) 
PMstye流プロジェクト思考(3)〜目的をマネジメントする(2)

◆顧客依存症

前回は「目的をマネジメントする」ことについて述べた。おおよそ、目的がマネジメントできれば、そのプロジェクトは成功の必要条件を満たしていると考えてもよいだろう。今回は、その目的を達成するレベルの問題、あるいはクオリティの問題について考えてみたい。

IT業界では、顧客依存症とでもいうべき症状が多く発生している。顧客の意思決定がないと先にプロジェクトが先に進まない。お客が決めてくれなくては・・・といった症状のことである。非常に皮肉なことだが、このような症状がひどくなってきたのは、プロジェクトマネジメントへの取り組みが盛んになってからだと思う。

プロジェクトマネジメントが悪いといっているわけではない。プロジェクトマネジメントの目的や、方法が間違っているのではないかと言っているだけだ。

このノートでも何度となくお話しているように、プロジェクトマネジメントの目的を失敗しないことにおいている企業が多い。そんなひとつの企業で、品質部門からの脱皮を図っているPMOに、以下のような話をして激論になったことがある。


◆責任を転嫁するという麻薬

失敗しない唯一の方法はやらないことではない。責任を他人に転嫁することだ。

例えば、「かなりしつこくフォローした」のだが、「ユーザが仕様を決めてくれない」から、「納期が遅れた」。これはうちの問題ではない。うちとしては全力を尽くした。失敗したとは思っていない。こんなロジックを使っていないだろうか。

プロジェクトマネジメントを導入し、管理を始めるとこういうことになりやすい。特に、意思決定を厳密に行おうとするとこのような事態に陥りやすい。今までは柔軟性を持って動いてきたものが、タスク間順序などである意味で制約させる。いったん、決まったものは守るべきだと考える。

これは大きな間違いである。商取引(契約)の問題はそばにおくが、プロジェクトとしては失敗である。

このような場合に考えなくてはならないことは、どうすれば目的を達成できるかである。問題の原因は、内部的な原因と外部的な原因に分けることができるが、外部的な原因はさらにはコントロールできる(自分が影響を与えることができる)原因と、できない原因に分かれる。


◆コントロールできることとできないこと

上のケースは契約的にみればコントロールできるはずの外部原因であることが多いと思うが、実態は違う。コントロールできないことの方が多い。この見極めが重要である。コントロールできない外部的原因に対してどのように立ち向かうかは難しいが、基本的な戦略は内部原因を取り除いていく、つまり、自らが変わるしかないだろう。

上のケースであれば、例えば、自らが仕様を作っていくというリスクを取るといった方法などが考えられるだろう。もちろん、ここにはプロジェクトマネジメントの標準や、ISOの標準のハードルが待っているので、これらを乗り越える必要がある。つまり、これらの標準の運用を便宜的に変えるが、これらが求めているプロセスの品質やプロダクトの品質を達成する必要がある。

しかし、忘れてはならないことは、プロジェクトの目的は、プロジェクトマネジメントの正しい手順を実現することや、ISOを遵守することではないことだ。

今回はここまで。

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著者紹介
好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
20年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「コンセプチュアル・マネジメント(無料)」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。

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