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第46回(2004.01.01) 
ステークホルダサティスファクションを求めて
 

 プロジェクトでステークホルダという場合には、顧客やベンダー、自社のラインマネージャーなどはもちろんのこと、プロジェクトマネージャーや、プロジェクトのメンバーも含まれる。

 ステークホルダの満足の重要性の認識は年々高くなってきているが、重心が顧客満足にあることが多い。そして、これがステークホルダの「不幸」を引き起すケースが多いことを今一度認識しておきたい。

 不幸というと、真っ先にでてくるのが、メンバーであろう。この年末年始、プロジェクトの円滑な進捗ができず、対応に追われている人もいるだろう。

 プロジェクトがスムーズに進まないと、会社としての利益もなく、ラインマネージャーは不幸になる。プロジェクトを担当させるメンバーのやりくりにも苦労する。

 当然、その苦労はベンダーにも飛び火する。ファシリティの調達コストが限られてくる、人材の調達が低コスト、不規則で、先が見えにくくなる。

 仮に、これらが、顧客が「強く望んだ仕様」に端を発して起こった不幸だとしても、顧客にとって幸福をもたらすことはないだろう。間違いなく、顧客も不幸になる。瞬時には、幸せになったとしても、そのプロダクトやサービスのライフサイクルでみれば間違いなく不幸になるだろう。

 例えば、このシステムは間違いなく運用でトラブルが起こるだろうということを我々は経験的に知っている。トラブルに対する発注先の対応は決して満足できるものにはならないだろう。そして、そのトラブルは、顧客のビジネスにおける機会損失と、不要な追加投資をもたらす。

 ビジネスの中において、誰かが一方的に利益を得ているという図式は意外なくらい少ないものだ。一人勝ちといわれているところでも、そこに登場するプレイヤーの間で、必ず、利益はシェアされている。だからこそ「取引」なのだ。

 重要なことは、ステークホルダ全体が満足することである。

「ステークホルダ全員が満足するなど理想論である。プライオリティをつけて、プライオリティの高いステークホルダから順に高い満足度を得られるようにすることが現実的だ」

という意見もある。これも、そのプロジェクトだけを考えれば正しいと思う。

 しかし、プロジェクトというのはシステムである。システムである限り、各ステークホルダの満足の間には、相互関係がある。その関係には、顧客の対応に、プロジェクトマネージャーやメンバーが満足し、自分たちの知識や経験をフル活用し、よりよい品質の成果を上げることにコミットし、それを感じた顧客がさらに、メンバーが動きやすいように進めていくという関係もあるだろう。

 逆に、顧客はプロジェクトを使用人扱いし、勝手なことを言いまくる。プロジェクトメンバーは表面的には聞き入れるが、言われたことしかしない。それゆえ、顧客は思っているような成果物が提案されず、プロジェクトの無能さをののしり、それを聞いたプロジェクトはますます、顧客の言うことしかしなくなるという関係もあるだろう。

 ステークホルダの満足とは、要するに循環なのだ。ステークホルダサティスファクションを実現していくというのは、刹那的なギブ&テイクの関係を作ることではなく、好循環を作っていくということである。そのためには、顧客が満足するだけではなく、プロジェクトメンバー、ラインマネージャー、ベンダーなどすべてが、プロジェクトの進行とともに満足度を上げていくようなマネジメントが必要だ。

 これを今年のメインテーマとして考えてみたい。

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著者紹介
好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
20年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「PM養成マガジンプロフェッショナル(有料版)」や「プロジェクト&イノベーション(無料)」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。

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読者からのコメント
プロジェクト営業担当として興味深いテーマです。
受、発注者共に納得する成果に至るのを目標とするも大抵不満。
生き残りをかけて重大です。
西中村 和利(67歳・(株)建設企画コンサルタント)
複数チームの面倒をまかされたマネージャです。顧客と「仲間」になり、よりよいシステムを構\築するべく議論を繰り返すチームは活性化し品質が向上していますが、一方顧客に「使えない野郎ども」と比喩されたチームは、メンバも卑屈になり到底「仲間」意識のかけらもなく、会議のたびに浴びせられる無理難題(と思われること)に辟易し、品質も怪しくなりつつあります。下降気味のチームをどうたち直せるか?年明けから、腕を試される正念場に差し掛かっています。この連載に期待しています。 池田(40歳・プロジェクトマネージャ)
同じく複数のプロジェクトを管理しております。
顧客とプロジェクト・メンバーの間で、「満足」についての双方のバランスをどう取っていくか、に苦慮しております。あちらを立てればこちらが立たず、というコトの繰り返しです。「顧客第一主義」を取り違えてしまうと、大変なことになります。「循環」というキーワードで、何かひとつ光が見えたような気が・・・。
野口(37歳・PM)