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第37回(2003.08.18)
プロアクティブプロジェクトマネジメント(1) |
◆計画が実行できない
今年に入ってから、さまざまな分野でこれが問題視されるようになってきた。その代表格は戦略経営である。ビジョンの重要性は分かった。戦略の必要性も分かったし、作り方も分かった。最初はコンサルタントに頼んでいたが、何とか自分たちでもできるようになった。
しかし、折角、計画を作ったのに、実行できない。最初のうちは、システム(しくみ)の問題だと考えた。確かに漠然と計画を作っただけでは実行できないだろう。その計画を実行に移すシステムが必要だ。これはその通りだ。そこで、プロセスを変えた。そのプロセスが実行しやすいように、組織を変え、人事も変えた。必要に応じて、各種のツールや、ITツールも導入した。
ところが、それでもうまく実行できない。後は人を変えるしかないのか?!
まあ、典型的には、こういう問題である。
◆さて、プロジェクトマネジメントでは
上に書いた実行できないパターンの説明の中でいえば、プロジェクトマネジメントはツールである。上のような流れの中で、戦略実行のツールであるプロジェクトマネジメントが機能しない、プロジェクトがうまくいかないという問題を抱えるケースがよく見受けられる。
つまり、PMBOK(R)という標準がある。PMBOK(R)に詳しいコンサルタントに依頼して、社内にPMBOK(R)準拠の標準マネジメントプロセスを設計した。PMP(R)の取得を推奨して、重要なプロジェクトにはPMP(R)をプロジェクトマネージャーに任命できるようになってきた。
その標準マネジメントプロセスに従って、スコープ定義を行い、要員計画とスケジュールを計画し、リスクについても、ばっちり計画をした。そして、実行の段では、EVMによる進捗報告を導入し、定量的な進捗報告をするようにしている。つまり、計画を実行するシステムだってきちんとあるわけだ。
でも、うまく行かない。これがPM先進国である米国の話である(ただし、彼らは、日本人が思っているほど、PMBOK(R)をバイブル視しているわけではない。先日、特別レポートで紹介したTOC−PMを推奨している人も多いし、グローバル企業ではIPMAの名前もよく聞く。
なぜか?プロジェクトマネジメントの失敗の理由の5〜6割は、ヒューマンソフトスキルだといわれている。計画を作成するのはPMである。進捗を管理するのもPMである。リスクをマネジメントするのもPMだ。なおかつ、不確実性が高い。プロジェクトの不確実性というのは、動的に変わる。つまり、何か予期せぬことが起こったときの対応で、次の予期せぬ事態が決まってしまう。つまり、計画の実施は人に依存する部分が極めて高い。つまり、標準手法だけでは、プロジェクトはうまく行かなくて当然なのだ。
そこで、ヒューマンスキルとしてのPMコンピテンシーに注目が行くようになってきた。PMIだと、ご存知のPMCDF(R)
(Project Management Competency Development Framework)である。IPMAにはICB(IPMA
Competence Baseline)というPMコンピテンシーがある。
ただ、これで問題が片付くかというとそう楽観はできない。人材アセスメントの問題は片付いても、そもそも、人材がいないのであれば、どうやって人材を作っていくかという問題が残る。自社でプロジェクトマネージャー人材を育て上げていこうと思えば、自社の組織文化の問題が重要になる。文化もない殺伐とした組織のよい人材など育たない。個々のプロジェクトマネージャーの価値観、プロジェクト参加者の価値観が共有できて初めて、組織としても個人としても有効な学習が可能になる。
ここで一つ、興味深い問題がある。プロジェクトマネジメントという切り口で見たときに、企業を超えて重要な価値観というのはないかという問題だ。例えば、「ビジネスでは顧客が自社の商品やサービスを選んでくれていくらだ」。現在では、これはかなり普遍的な価値観だろう。このくらい、普遍性のある価値観はないか?
◆プロジェクトマネージャー養成マガジン研究会準備会の結論
4月より、プロジェクトマネージャー養成マガジンでは、研究会の発足に向けて、メンバー公募の準備会を開き、議論をした。そして、その準備会で議論になったのがこの問題である。
結論として、研究会ではこのような普遍的な価値観を「思想」と呼び、「プロアクティブ」という思想について考えてみようということになった。
長くなってきたので、今回の戦略ノートはここまでにし、プロアクティブとは何かという議論は次回にする。
◆研究会について
研究会の詳細については、プロジェクトマネージャー養成塾に新たに研究会メニューを追加しています。こちらを参照してください。
いよいよ、プロジェクトマネージャー養成マガジンも、メルマガから、実践に移ることになります。今のプロジェクトマネジメントを変えたいという人が、一人でも多く参加して戴けることを願っています。
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著者紹介
好川哲人、MBA、技術士 株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
20年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「コンセプチュアル・マネジメント(無料)」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。
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