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第316回(2015.01.23)
「働きやすいプロジェクトについて考える」プロジェクト


◆はじめに

アベノミクスで女性活用施策が打ち出され、働き方についての議論が盛んにおこなわれるようになっている。その議論を聞いていると、プロジェクトで仕事をすれば解決する問題ばかりだと思う一方で、現実のプロジェクトでは大きな問題の一つとして指摘される長時間労働、深夜残業が起こっているプロジェクトは珍しくないという現実もある。

プロジェクトマネジメントをメンバーが自発的に成果を出すための支援手段だと考える人はもちろんだが、ゴール達成のための管理手段だと考える人もプロジェクトの生産性やメンバーの創造性の問題などを考えた場合、プロジェクトを働きやすいものにすることは、プロジェクトマネジメントの大きな目的である。

そこで、戦略ノートは「働きやすいプロジェクト」とはどのようなものかという議論をしてみたい。今回はスタートして、その視点とメトリクスを検討する。

なお、この内容に基づいて、後日、久しぶりのメルマガアンケートをしたいと思っていますので、ご協力戴けると幸いです。


◆働きやすさを考える5つの視点とメトリクス

さて、働きやすさのその視点として以下のようなものを考えてみる。

(1)時間に関する問題
・労働時間の適切さ
・勤務時間の適切さ
・時間のコントロールの自由さ

この視点は時間に関する要素である。

「労働時間の適切さ」は働いている時間、「勤務時間の適切さ」は働いている時間帯が自分にとって適切なものかどうかを意味している。

また、「時間のコントロール」は、時間帯も含めて、労働時間の使い方をどの程度自由に決定できるかを意味している。


(2)モチベーションに関する問題
・プロジェクト課題の魅力
・適切な権限委譲
・適切な成果の評価
・特許の取得の可能性
・インセンティブ(成功報酬)の量

この視点は、どれだけ高いモチベーションを持つことができているかどうかである。

「プロジェクト課題の魅力」は、プロジェクトの目的やさらにはその上位にある戦略やビジョン、あるいは目的のために定められた目標などがメンバーにとってどれだけ魅力的かを意味している。

「適切な権限委譲」は、自分の担当作業における意思決定が、どの程度任されているかを意味している。

「成果の評価」はプロジェクトで達成した成果が組織や顧客に、あるいはチームとして達成した成果がプロジェクトにどのように評価されているかを意味している。


(3)キャリアに関する問題
・スキルの活用
・スキルの獲得
・経験としての質
・実績の人事評価への反映

この視点はキャリアに関する満足度である。

「スキルの活用」と「スキルの獲得」は、そのプロジェクトで自分の持つスキルをどのように活用でき、また、どれだけの新しいスキルを獲得できたかを意味している。

「経験としての質」はスキルの獲得も含めて、そのプロジェクトに参加したことがどれだけ自身のキャリア経験になるかを意味している。

「実績の人事評価への反映」はプロジェクトでの実績が個人の給与や昇進に十分に反映されているかどうかである。


(4)コミュニケーションに関する問題
・効果的なホウレンソウ
・プロジェクト情報の共有がされているか
・良好な人間関係(プロジェクトマネジャー、メンバー、ステークホルダー)
・コミュニケーションの仕組みの適切さ

この視点はプロジェクトにおけるコミュニケーションの質を評価するものである。

「効果的なホウレンソウ」はメンバーからプロジェクトマネジャーやチームリーダーに対するホウレンソウが機能し、効果を上げているかどうかを意味している。

「プロジェクト情報の共有」は、プロジェクトの目的、目標、計画、リスク、ステークホルダー情報などが十分にいきわたっているかどうかである。

「良好な人間関係」は良好な人間関係が築けるためのコミュニケーションが行われているかどうかを意味している。

「コミュニケーションの仕組みの適切さ」は物理的なコミュニケーション環境、会議体などのコミュニケーションの仕組み、コミュニケーションプランなどの適切さを意味している。


(5)プロジェクト環境
・作業環境
・プロジェクトへの参加形態の適切さ
・労働上の制約の適切さ
・生活環境との関係の良さ
・プロジェクトマネジメントの適切さ

この視点は、広い意味でのプロジェクト環境である。

「良好な作業環境」はプロジェクトルームや開発環境などの物理的環境の良好さを意味している。


「プロジェクトの参加形態の適切さ」は、専従か、他のプロジェクトや仕事とのパートタイムかといった参加の形態が適切さを意味している。

「労働上の制約」とは、コアタイム、勤務場所、通勤時間などが適切かどうかを意味している。

「生活環境との関係の良さ」は、たとえば、通勤の途中で日常品の買い物ができるとか、保育施設があるとかいったこと。

プロジェクトマネジメントの適切さは、文字通り、プロジェクトマネジメントが適切であるかだ。

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著者紹介
好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
20年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「コンセプチュアル・マネジメント(無料)」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。

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