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第3回(2002.05.11)
PMBOK(R)は叡智か陰謀か |
PMBOK(R)というのが急にスポットライトを浴びるようになってきた.PMBOK(R)はクリックリファレンスにも書いてあるように,Project
Management Body Of Knowledgeの略称であり,プロジェクトマネジメントをスムーズに進めるための知識体系である.
具体的にPMBOKがどのようなものであるかは,「これだけ知っていれば困らない(手法編)」に解説を掲載したのでこちらを参考にして戴きたい.
さて,今回の主題は,このPMBOK(R)なるものは一体何の意味があるのだろうということである.余談になるが,PMBOK(R)を策定したPMI(R)が最初にできたのは1969年である.1969年というのは人類がアポロで月面に降り立った年である.それから約20年後の1987年に最初のPMBOK(R)が完成した.この間,PMIにはプロジェクトマネジメントに関心を持つ人たちが集まり,プロジェクトマネジメントの研究をした結果がPMBOK(R)として結実したわけで,まさに叡智といってもよいだろう.その後も,プロジェクトマネジメントは進化し,だんだん,マネジメント対象が単一のプロジェクトから,だんだん,マルチプロジェクトや企業経営そのものに移りつつある.PMBOK(R)もそれを反映し,2000年には新しいバージョンのPMBOK(R)が発表された.
PMBOK(R)は一種の標準フレームワークであるので,さまざまな企業の叡智をすべての企業が共有し,その上に則って,さらに高度な競争をするという重要な役割を持っている.一方で,多くの標準がそうであるように,競争のルールを決めており,そのルールを決める側に立つものが競争を優位に進めることになるという側面もある.特に日本の企業でよく聞くのが,このような状況に対する抵抗である.米国陰謀説である.実際に日本の企業の取材をしてみると,このジレンマに悩んでいるところが多いようだ.
問題はPMBOK(R)を使うかどうかではない.重要なことはまず,自社がプロジェクトマネジメントを競争優位源泉にするかどうかである.もし,するのだとすれば独自性が必要である.それはPMBOK(R)より優れた独自のマネジメントスキームを持つことで達成されるかもしれないし,IBMのようにより深くPMBOK(R)というフレームワークを使いこなすことで達成されるかもしれない.このような目的の中でPMBOK(R)を使う場合には,これまた他の標準と同じく標準化活動に深くコミットしていき,ルール作りに参加する必要があるだろう.
もうひとつの道はプロジェクトマネジメントでは勝負せず,技術やアイディアなどで高い成果物を得られるようにマネジメントしていくことであろう.その場合,PMBOK(R)は叡智としてありがたく利用すべきであるし,また,使って得られた知見はPMBOK(R)に還元すべきである.
いずれにしても,PMBOK(R)を使うということは,その策定プロセスにコミットしていかなくてはほとんど無意味であるということを認識すべきであろう.
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著者紹介
好川哲人、MBA、技術士 株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
20年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「コンセプチュアル・マネジメント(無料)」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。
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読者からのコメント |
PMBOK(R)を使って実際にプロジェクト管理を行った際気づいたことを挙げます。
一、こちらでも指摘されているように、必要とするスキルや手順がカテゴライズされていないので、使う側がまずこれを認識し、プロジェクトを実施する対象に合わせて詳細な内容に落とす必要があること。
二、各管理項目に対し、必要な別のスキル例えば、品質管理については「シックス・シグマ」を使うなどを導入する必要があること。
三、PMBOK(R)で定義している項目(品質、コミュニケーション等)で、基本的に使うドキュメントの雛形などがないので、初心者には使えない。実際に、初心者ばかりのグループ(ただし、MBAなどを持っている若者)でPMOを立ち上げる際、彼らだけでは話が進まないので、私に(ITや6シグマのプロジェクトを相当実施してきたためか)それらのドキュメントについて雛形の提出、内容の説明を求められ、1年くらい大変な思いをしたことがあります。 以上、PMBOK(は叡智なのか陰謀(出発点なの)か、に触発されて記述しました。 |
林 幸志(45歳) |
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